43歳・自営業の妻、夫が亡くなりました。22歳の子どもがいますが、“遺族年金”はもらえないって本当ですか?
しかし、「遺族基礎年金」は18歳未満の子がいないと支給されません。その代わりに国民年金には独自給付があります。本記事では、2つの独自給付について解説します。
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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遺族基礎年金
国民年金の加入中の人や老齢基礎年金の受給資格(25年以上)などの要件を満たしている方が亡くなった場合、生計を維持されていた遺族は、「遺族基礎年金」を受給できます。
対象となる遺族は、亡くなった方に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」です。ここでいう「子」とは、18歳になった年度の3月31日までの子(20歳未満の障害等級1・2級)をいい、末子が18歳になるまで支給されます。
年金額は加入期間に関係なく定額で、子の人数に応じた加算がつきます。遺族基礎年金の年金額(2025年度)は年83万1700円で、子が2人目までは23万9300円、3人目以降は各7万9800円が加算されます。例えば、妻と子1人の場合、遺族基礎年金の年金額は、年107万1000円(=83万1700円+23万9300円)です。
子どもが成長して「子」の条件を満たさなくなり遺族基礎年金をもらえない場合には、保険料掛け捨て防止として、「子」のない妻に「寡婦年金」、3年以上保険料を納めた人に「死亡一時金」という国民年金独自の給付があります。これは、厚生年金保険にはない仕組みです。
寡婦年金
寡婦年金は、国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間(保険料免除期間を含む)が10年以上ある夫が亡くなったときに、10年以上継続して婚姻関係(事実上の婚姻関係を含む)にあり、死亡当時生計維持されていた妻が60歳から65歳になるまでの5年間支給されます。例えば、夫の死亡時に63歳であれば2年間の受給です。
ただし、亡くなった夫が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けたことがあるときや、妻が繰上げ支給の老齢基礎年金を受けている場合は支給されません。寡婦年金の趣旨は、夫の保険料の掛け捨て防止にあるからです。
年金額は、夫の第1号被保険者期間のみで計算した老齢基礎年金額の4分の3となります。
死亡一時金
死亡一時金は、国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた月数が3年(36ヶ月)以上ある人が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けることなく亡くなったときに、生計維持関係にある遺族が受け取ることができます。ただし、遺族基礎年金の支給を受けられるときは支給されません。
遺族の範囲は、優先順位の高い順に、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹となっています。死亡一時金の金額は、保険料納付済み期間に応じて以下のように12~32万円なります。付加保険料を納めた月数が36月以上ある場合は、8500円が加算されます。
36月以上180月未満は12万円
180月以上240月未満は14万5000円
240月以上300月未満は17万円
300月以上360月未満は22万円
360月以上420月未満は27万円
420月以上は32万円
死亡一時金は、死亡日の翌日から2年で時効になりますので注意しましょう。
まとめ
遺族基礎年金は18歳未満の子がいないと支給されません。保険料の掛け捨てを防止するため、国民年金の保険料を3年以上納めて亡くなった場合は「死亡一時金」、夫が10年以上保険料を納めて亡くなった場合は「寡婦年金」を受給できます。
寡婦年金と死亡一時金の両方を受け取ることができる場合は、どちらか一方を選択しなければなりませんが、一般的に「子」のない妻には死亡一時金よりも寡婦年金のほうが有利となるでしょう。
出典
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 寡婦年金
日本年金機構 死亡一時金
日本年金機構 遺族年金ガイド 令和7年度版
執筆者 : 新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。
