友人が「学生時代の年金を追納したから満額もらえる!」と言っていましたが、私はすっかり忘れていました…… 追納していない人って少数派でしょうか?
「みんな、学生時代の年金を追納していますよね……?」と言いますが、実際にはどのくらいの人が追納しているのでしょうか。また、満額にするためにはどうしたらいいのか、本記事でFPである筆者が解説します。
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士
大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルマザーとあらゆる立場を経験した後、FPと社会保険労務士の資格を取得し、個人事業主から社会保険労務士法人エニシアFPを共同設立。
社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)という二刀流で活動することで、会社側と社員(個人)側、お互いの立場・主張を理解し、一方通行的なアドバイスにならないよう、会社の顧問、個別相談などを行う。
また年金・労務を強みに、セミナー講師、執筆・監修など首都圏を中心に活動中(本名は三角桂子)。
学生納付特例は猶予
日本に住所を有する人は、原則20歳になると国民年金に加入します。文部科学省の「令和6年度学校基本調査(確定値)」によると、大学進学率は59.1%と過去最高になっています。高校を卒業して進学する人であっても、20歳になると国民年金に加入しなければなりません。
学生の人は一般的に収入がない(少ない)ため、申請することで在学中は保険料の支払いを猶予することができ、これを「学生納付特例制度」といいます。学生納付特例を受けようとする人の前年の所得が一定以下の学生が対象です。
学生納付特例は猶予であるため、将来の年金額には反映されません。あくまでも「猶予」なので、追納しないとその分年金は減ってしまいます。年金額に反映するには、10年以内に追納(さかのぼって納めること)をしなければ、満額(40年)の老齢基礎年金を受け取ることができなくなります。
猶予された期間を追納している割合
ご相談者のAさんは大学に在学中、学生納付特例制度を利用していました。卒業後に就職し、30歳で結婚。結婚後すぐに子どもができたため、退職しました。現在45歳です。子どもは中学生になり、受験に備えて塾に通っています。将来的に教育費がさらにかかることに備えて、パートでも始めようかと考えています。
先日、学生時代の友人とランチに行ったときのことです。子どもの教育費の話から、話題は老後の年金に…… 友人は学生時代の年金猶予を過去に追納したから、このまま60歳まで配偶者の扶養に入っていれば、65歳の年金(老齢基礎年金)は満額分がもらえると喜んでいました。
Aさんは結婚・出産と慌ただしくしていたので、友人から追納の話が出るまですっかり忘れていました。学生納付特例制度を利用した人はみんな追納しているのか不安になったので、相談に来られたとのことです。
厚生労働省「国民年金保険料の納付猶予制度について」の資料では、学生納付特例の追納による納付率の状況は8.9%(2024年時点)となっています。
補足として2024年時点で、10年前(2014年中)に納付猶予等が承認された月数において、その後どの程度追納されたかにつき集計したものであり、2014年時点で猶予の対象年齢ではない30~50歳の者は含まれていません。
納付率の状況からすると、追納する人の割合は低いことが分かります。Aさんはほっとひと安心しますが、将来受け取る年金額は満額にならないので、老後の不安につながってきます。
追納できなかったときは60歳以降で穴埋め
Aさんが、追納しなかった期間の穴埋めは、60歳以降に手続きすることで国民年金の任意加入ができます。任意加入は、65歳までの間に満額(480月)になるまで、保険料を納付することでき、満額(480月)もしくは65歳になるまで年金額を増やすことができます。
Aさんは大学時代の約2年間の猶予期間が対象なので、60歳になってから早めに手続きすることで、満額(480月)にできます。
Aさんは、今後、家計(教育費)のため、パートで働くことを検討しているので、パートでも社会保険に加入する働き方をして60歳以降も続けた場合、厚生年金保険に加入すれば国民年金側で反映されない部分を厚生年金保険の「経過的加算(差額加算)」で補うことができます。つまり。老齢基礎年金相当額(定額部分)が加算されるのです。
まとめ
Aさんのように、学生納付特例制度を利用し猶予したのにもかかわらず忘れてしまった人は、何もしないでいると、将来の年金額は減額してしまいます。追納できなかった人は、60歳以降で猶予期間分、国民年金の任意加入もしくは厚生年金保険で猶予相当額を補うことができます。
Aさんは、45歳なので、60歳までには期間があります。年金制度を理解し、60歳以降に忘れずに手続きする、もしくは厚生年金保険に加入する働き方をすると、将来の年金額を増やすことができ、満額相当にすることができます。
出典
日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
文部科学省 令和6年度学校基本調査(確定値)について公表します。
厚生労働省 国民年金保険料の納付猶予制度について
日本年金機構 任意加入制度
日本年金機構 か行 経過的加算
執筆者 : 三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士
