65歳で夫を亡くし“月額5万円程度”の「遺族年金」を受け取れそうです。家は残してくれたため、自分の年金とパート収入の“月10万円”を合わせればなんとかやっていけるでしょうか?
貯金は目減りし、専業主婦(主夫)だった場合、年金とパート以外に老後資金のあてがないことは十分あり得る話です。そのような場合、果たして「持ち家があるからなんとかなる」と考えてよいのでしょうか。
本記事では公的機関のデータを基に、表題のご遺族が単身で生計を維持できそうかどうか考察します。
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遺族厚生年金の平均受給額は「月額8万2569円」
日本年金機構によれば、遺族厚生年金の年金額は、死亡した人の老齢厚生年金の「報酬比例部分の4分の3」と定められています。
厚生労働省が発表している「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」において、令和5年度末時点における遺族厚生年金の受給者平均年金月額は8万2569円とされています。照らし合わせてみても、表題の「月額5万円程度」はそこまで高い水準とはいえないようです。
遺族年金約5万円と、自身の年金+パート収入10万円ではギリギリの可能性も
次に、遺族年金5万円に、自身の年金とパート収入10万円を合わせた「月15万円」で生活できそうかどうかを考えてみましょう。
総務省統計局の「家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、65歳以上の単身無職世帯における消費支出の平均は「月額14万9286円」となっています。
うち家賃などが含まれる「住居」への支出は「月額1万2693円」となっているため、持ち家があることを差し引いても「約13万7000円」ほどかかる計算です。老後は医療費や介護費などがかさむことも考えると、かなりギリギリの収支バランスとなるかもしれません。
進む遺族厚生年金制度の見直し、対象にはなる?
遺族厚生年金の給付には男女格差があり、例えば女性が年齢に関わらず受給できる一方で、子どものいない55歳未満の男性は原則給付対象とならない、といった点が指摘されていました。令和7年6月13日に成立した改正案では、女性の社会進出の広がりを踏まえ、こうした男女格差の解消が図られています。
厚生労働省によると、具体的な変更点としては、子どものいない男女ともに60歳未満で死別した場合は原則5年間の有期給付に改められ、配慮が必要な場合については5年目以降も給付を継続する形となりました。
また、有期給付に該当する場合にも「有期給付加算」や「死亡分割」が上乗せされ、遺族の生計の維持に影響が出にくいよう配慮されています。
ただし、60歳以上で死別した場合は現行通りの無期給付が適用される見込みであり、表題の65歳で死別された方のケースでは、見直しの影響を受ける可能性は低いでしょう。
まとめ
あくまで平均値からの類推にはなりますが、月額5万円の遺族年金と、自身の年金+パート収入10万円のみで生計を維持する場合、ギリギリの収支バランスになる可能性があります。
もし持ち家に十分な資産価値があるなら、この先働けなくなった場合のことを考慮し、リバースモーゲージなどを活用して手元の余裕資金を確保しておくのも一考かもしれません。
出典
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
厚生労働省年金局 令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況 II. 厚生年金保険 (2)給付状況 表6 厚生年金保険(第1号) 受給者平均年金月額の推移(8ページ)
厚生労働省 遺族厚生年金の見直しについて
総務省統計局 家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要 II 総世帯及び単身世帯の家計収支<参考4>65歳以上の無職世帯の家計収支(二人以上の世帯・単身世帯)表2 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)及び65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の家計収支 -2024年-(19ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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