現在62歳で、年金の繰上げ受給を考えています。「受給額が減るから」と妻からは反対されているのですが、どのタイミングが一番損しないのでしょうか?

配信日: 2025.08.26 更新日: 2025.10.21
この記事は約 4 分で読めます。
現在62歳で、年金の繰上げ受給を考えています。「受給額が減るから」と妻からは反対されているのですが、どのタイミングが一番損しないのでしょうか?
「少しでも早く年金を受け取って安心したい」と思う一方で、「年金受給開始時期を繰上げると一生減額される」と聞いて迷っていませんか?特に62歳というタイミングは、判断の分かれ目になる年齢です。
 
そこで本記事では、繰上げ受給の仕組みや損益分岐点、どんな人に向いているかなどを解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

年金の繰上げ受給とは? 減額の仕組みを確認

公的年金の繰上げ受給とは、老齢基礎年金や老齢厚生年金を本来の65歳より前から受け取りを開始する制度です。早く受け取ることができるというメリットがある一方で、月々の受給額は一生にわたって減額されます。
 
繰上げた場合の減額率は、1ヶ月あたり0.4%です(昭和37年4月1日以前生まれの方は0.5%)。例えば、62歳で繰上げる場合は36ヶ月(3年)早いため、0.4% × 36ヶ月 = 14.4%の減額となります。
 
仮に、65歳から月額10万円(年額120万円)の年金をもらえる人が62歳で繰上げた場合、受給月額は10万円×(1−14.4%)=8万5600円になります。年額(12ヶ月)にすると102万7200円となり、17万2800円の差が生まれる計算です。
 
一度繰上げ受給を選択すると、原則として取り消しはできません。また、60〜64歳の間で繰上げた期間中は、老齢基礎年金や老齢厚生年金の本体部分しか支給されず、配偶者加給年金や振替加算は支給されないため注意が必要です。
 

何歳で受け取ると損しない? 損益分岐点の目安

繰上げ受給で多くの人が気になるのが、「最終的に得か損か?」という点でしょう。年金をいつから受け取り始めるかは、生涯の総受取額に大きく影響します。
 
そこで参考になるのが、「損益分岐点」という考え方です。これを知っておくと、自分にとって有利な開始時期を判断しやすくなります。本章では、その目安について紹介します。
 
損益分岐点とは、繰上げた場合と65歳から普通に受け取った場合で、年金の総受取額が逆転する年齢のことです。現在の制度では、一般的に「受給開始から約20年10ヶ月後」が損益分岐点です。例えば60歳なら80歳10ヶ月、62歳なら82歳10ヶ月が目安となります。
 
例えば、62歳から受給を始めた場合、65歳時点までにすでに年金を受け取っているため、当初は繰上げ受給が有利に見えます。しかし、その後は受給額が少ない状態が続くため、約82歳を超えて長生きすればするほど、受給総額では通常受給のほうが有利になります。
 
実際の損得は主に寿命(受取期間)に影響されますが、加えて「年金額」「他の収入(退職金や企業年金など)」「生活費」「健康状態や余命の見通し」などによっても大きく異なります。繰上げを検討する際は、「自分が何歳まで生きる可能性があるか?」という難しい問いと向き合う必要があるでしょう。
 

繰上げ受給を選ぶべき人・避けるべき人の特徴とは?

年金の繰上げ受給には、メリットもデメリットもあるため、誰にでも当てはまる正解はありません。
 
ただし、自身の経済状況や健康状態、家族構成などを総合的に考えることで、「繰上げたほうが安心できる人」と「65歳以降に受け取ったほうが将来の備えとして有利な人」の傾向は見えてきます。
 
年金の繰上げ受給が向いている人、避けたほうがよい人の特徴は大きく分けて次の通りです。
 

【繰上げ受給が向いている人】

・今すぐ生活資金が必要で、他に収入源がない
・健康に不安があり、長生きする見込みが低いと考えている
・単身世帯や老後の支援が得にくい状況にある

 
こうした方は、繰上げ受給をすることによって老後の経済的不安を軽減できる可能性があります。特に、持病があり長寿に自信がない場合は、受給を早めて生活を安定させることが先決かもしれません。
 

【繰上げ受給を避けたほうがよい人】

・健康でまだ働く予定がある
・十分な貯蓄や他の収入があり、急いで受け取る必要がない
・長生きする家系で、自分も健康に不安がない

 
このような場合は、将来の医療費や介護費に備えて、受給額を最大限にしておくことが賢明です。特に配偶者がいる場合、年金額が減ると家計に与える影響も大きくなります。
 

年金の繰上げ受給は自分と家族にとって納得できる選択を

年金の繰上げ受給は、早くもらえる安心感がある一方で、生涯にわたって受給額が減額される制度です。また、「有利か不利かの判断材料」は一つではなく、ご自身の健康状態や資産状況、働き方、家族構成などといったさまざまな要素によって異なります。
 
特に、繰上げ受給の開始可能年齢である60~65歳の間は、年金の受給開始の選択肢として現実的に視野に入りやすい時期です。そのため、ご自身だけでなく配偶者や家族とも十分に話し合い、「どの選択が家計全体にとって最も安心か」を慎重に考えることが大切です。
 
判断に迷う場合は、年金事務所やファイナンシャルプランナー(FP)に相談するのも一つの手です。制度を正しく理解し、後悔のない選択を心掛けましょう。
 

出典

日本年金機構 年金の繰上げ受給
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

  • line
  • hatebu
【PR】 SP_LAND_02
FF_お金にまつわる悩み・疑問