遺族厚生年金の支給期間が「5年」に⁉ 夫が亡くなった専業主婦は、どうやって暮らしていけばいいの?
本制度はどのように改正したのか、夫の死後、専業主婦は生活費をどのように捻出したらよいか、FPがアドバイスします。
田久保誠行政書士事務所代表
CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、特定行政書士、認定経営革新等支援機関、宅地建物取引士、2級知的財産管理技能士、著作権相談員
行政書士生活相談センター等の相談員として、相続などの相談業務や会社設立、許認可・補助金申請業務を中心に活動している。「クライアントと同じ目線で一歩先を行く提案」をモットーにしている。
遺族厚生年金とは?
遺族厚生年金とは、厚生年金の加入者または加入期間がある方が亡くなった場合に、その加入者に生計を維持されていた遺族に支給される年金です。以下5つの要件のいずれかを満たしていれば、遺族に支給されます(以下、厚生労働省の資料より一部引用)。
1.厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
2.厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に死亡したとき
3.1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている方が死亡したとき
4.老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき
5.老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき
(日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」より)
遺族厚生年金は、死亡した方に生計を維持されていた遺族に受給権があります。
どのように法改正されたの?
今回の遺族年金年金の見直しは、女性の就業率の向上などに合わせて、遺族厚生年金の男女の差を解消する目的のもので、男性は2028年4月から、女性は2028年4月から20年かけて段階的に実施されます。現在の仕組みと見直し後の仕組みの主な変更点は、以下のとおりです。
見直し後は、支給期間が5年に短縮されることに対する措置として、新たに「有期給付加算」という仕組みが設けられ、これにより遺族厚生年金の給付額が増えることになります。その給付額は、現在の遺族厚生年金の約1.3倍となります。
配偶者が死亡したケースでは、婚姻していた期間に、死亡した方の厚生年金の記録をそのまま遺族の年金記録にでき、それを分割することができる制度が適用されます。これを「死亡時分割」といい、配偶者を亡くした遺族が利用できます。
また、遺族厚生年金の受給においては、以下のように要件が改正になります。
●同一生計要件
●収入要件
●同一生計要件
(「収入要件」が撤廃される)
もうひとつの変更点
もうひとつ、変更される制度があります。それは、「中高齢寡婦加算」という制度です。
中高齢寡婦加算とは、「夫と死別時に40歳以上65歳未満であって18歳年度末までの子のない妻」「夫と死別時に18歳年度末までの子がある妻で、遺族基礎年金の支給終了時に40歳以上65歳未満であるもの」に対する遺族厚生年金に、65歳になるまで加算されるものです。
これが、2028年4月以降に新規に発生する加算の額は2053年度まで25年かけて段階的に縮小されます。
これまでと変更のないものは?
今回の改正で変更がない点は、以下のとおりです。
●60歳以上で死別された方
●子どもを養育する間にある方の給付内容
●改正前から遺族厚生年金を受けていた方
●2028年度に40歳以上となる女性
よって、冒頭のご相談者さまが上記の要件に当てはまっていれば、特に変更がないことが分かります。
今のところ問題がない方も……
今回の改正は、実際には2028年度に40歳、すなわち今年37歳以下の女性への影響が考えられます。遺族厚生年金はいつ・何時、万が一のことが起こるかは分かりません。
比較的若い方が対象となるので、ご自身に働く意欲がある場合は働き、生活に不安がある期間の生命保険を契約あるいは見直しをすることによって、少しでも安心が得られるようにすることをお勧めします。
出典
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
厚生労働省 遺族厚生年金の見直しに対して寄せられている指摘への考え方
厚生労働省 遺族厚生年金の見直しについて
執筆者 : 田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表

