亡くなった親の「未支給年金」を申請忘れ…数十万円が“消える”こともあるって本当? 手続きを忘れると「受け取れないお金」とは
しかし、「未支給年金」がどういったものなのかピンとこない人もいるかもしれません。本記事では、遺族年金とも比較しながら、未支給年金の給付内容や受給対象者、受給手続きなどを紹介し、共通点や違いを解説しますので参考にしてください。
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遺族年金の概要
まず、遺族年金とは、年金制度に加入していた人が亡くなった際、一定の要件を満たせば、故人によって生計を維持されていた遺族が受け取れる年金です。配偶者や子どもが対象となる「遺族基礎年金」と、会社員など厚生年金に加入している人が亡くなった際に、遺族へ支給される「遺族厚生年金」の2つがあります。
遺族基礎年金は83万1700円(令和7年度)に子どもの数による加算があり、遺族厚生年金は故人の厚生年金報酬比例部分の4分の3を受給可能です。いずれも、遺族の生活の経済的基盤を支えるものですが、特に遺族厚生年金は、現行では遺族が一生涯受け取れる場合も多くなります。
未支給年金の概要
一方の未支給年金は、故人が受け取れるはずだった年金のうち、まだ支給されていない年金です。受け取れるのは、故人と生計を同じくしていた3親等以内の親族で、配偶者、子ども、父母、孫、祖父母などの順で優先順位があります。
つまり、故人が受け取れなかった年金を、3親等以内の遺族が代わりに受け取るものです。なぜ、そのような年金があるのか不思議に感じるかもしれませんが、生じる原因は年金が2ヶ月分まとめて後払いされることにあります。
年金の支給日は原則として偶数月の15日です。例えば6月分と7月分は、8月15日にまとめて支給されます。そのため、もし年金を受給していた人が7月前半に亡くなると、6月と7月の2ヶ月分の年金が支払われず、そのまま残ってしまいます。
さらに、年金は亡くなった月も日割りではなく、月額で支給されるため、亡くなった日が8月前半で、6月分と7月分の受取前であれば、8月分も加わった3ヶ月分です。また、8月後半に亡くなっていても、8月分だけは支払われていないことになります。
つまり、年金受給中の人が亡くなると、必ず未支給年金が発生し、受け取れる額はその年金の1ヶ月分から3ヶ月分のいずれかです。
遺族年金と未支給年金は、いずれもその遺族に給付される共通点があります。しかし、遺族年金は受給要件を満たしていれば、一定期間継続して受け取れるのに対し、未支給年金は一度きりの支給で、額は最大でも故人の年金3ヶ月分です。
また、遺族年金は、故人の年金の受給開始前でも受け取れますが、未支給年金は故人の年金受給が始まっていないと存在しないことになります。このように同じ遺族が受け取る年金であっても、内容には大きな違いがあるのです。
未支給年金の受給手続きは?
一般的にはあまりなじみのない「未支給年金」は、受給手続きはどうすればいいのでしょう。まず、年金を受給していた人が亡くなった際は、受給権者死亡届を提出しなければなりません(日本年金機構にマイナンバーを収録している場合は不要)。
また、請求に際して「未支給年金・未支払給付金請求書」の提出も必要です。添付書類としては、「故人の年金証書」や「故人との続柄が確認できる書類」「生計を同じくしていたことが分かる書類」などがあります。
請求しないと5年で時効を迎え、それ以降は請求できませんので、早めの提出を心掛けましょう。また、受け取った際は一時所得となるため、確定申告の必要がないか注意が必要です。
まとめ
未支給年金は遺族年金と同じく、遺族が受け取れる年金です。ただ、聞いたことがある人はあまり多くないため、手続きを忘れてしまう可能性もあります。しかし、一度きりの支給とはいえ、故人が残してくれた「最後の年金」です。感謝の気持ちを忘れず、確実に受け取りましょう。
出典
日本年金機構 遺族年金
日本年金機構 年金を受けている方が亡くなったとき
執筆者 : 松尾知真
FP2級
