毎月引かれる「厚生年金7.5万円」がツライ! 40年間「会社・自己負担分」を貯められたら、将来“年金を受け取る”よりお得なの?「年収500万円」会社員のケースで試算

配信日: 2025.08.26 更新日: 2025.10.21
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毎月引かれる「厚生年金7.5万円」がツライ! 40年間「会社・自己負担分」を貯められたら、将来“年金を受け取る”よりお得なの?「年収500万円」会社員のケースで試算
給与の手取りが少ないと感じて給与明細を眺めてみると、所得税などの税金に加え、健康保険料や雇用保険料など多くの社会保険料が控除されています。
 
その中でも会社と折半で支払う厚生年金の保険料は、金額も比較的大きく「もったいない」と感じる人もいるかもしれません。中には、将来年金をもらうより、会社と自分が払う保険料を貯めておいたほうが得だと考える人もいるのではないでしょうか。
 
本記事では、年収500万円の人が厚生年金保険料の全額を貯蓄したら、年金と比較して、どちらが得なのかシミュレーションします。さらに、公的年金制度の老齢年金以外のメリットも紹介しますので、参考にしてください。
松尾知真

FP2級

年収500万円の人が生涯支払う厚生年金保険料は?

まず、厚生年金の保険料は生涯でどれくらい払うものなのか、年収500万円の会社員が20歳から60歳までの40年間働いた場合で計算してみます。年収が500万円であれば、報酬の月額は500万円÷12ヶ月=約41万6000円です。
 
厚生年金保険料の計算に用いる「平均標準報酬額」については、報酬月額が39万5000円から42万5000円の範囲にある場合、41万円になります。また、厚生年金保険料は、会社負担と自己負担分を合わせ、平均標準報酬額の18.3%と定められています。
 
そのため、年収500万円の人の厚生年金保険料は41万円×18.3%=月7万5030円です。つまり、60歳までの40年間で7万5030円×12ヶ月×40年=約3600万円におよぶ保険料を納めていることになります。
 

年収500万円でもらえる年金は?

次に、年金として受給可能な金額はどれくらいになるでしょう。ここでは年金を受給する期間を、65歳から男性の平均寿命である81歳までの16年間と仮定して計算してみます。
 
まず、老齢基礎年金に関しては、厚生年金保険料に国民年金保険料が含まれていることから、40年間の加入で、満額の83万1696円(令和7年度)を受給可能です。
 
また、厚生年金の報酬比例部分の計算は、時期によって違いがありますが、2003年4月以降の「平均標準報酬額×5.481÷1000×加入月数」の計算式を用いて計算してみます。
 
平均標準報酬額は41万円、加入月数は40年×12ヶ月=480ヶ月となるため、報酬比例部分の受給額は「41万円×5.481÷1000×480月=約107万8000円」です。そのため、年金受給額は年間83万1696円+約107万8000円=約191万円になります。
 
つまり、年金受給が始まる65歳から男性平均寿命の81歳まで16年間で、191万円×16年=3056万円ほどにしかならず、保険料を貯めた3600万円におよびません。
 

厚生年金保険料は納めないほうが得なのか?

男性の平均寿命で考えた場合の年金受給額と、支払った厚生年金保険料の比較だけを見れば、保険料をそのまま貯めていたほうが、得だと言えないこともありません。しかし、保険料は会社と折半しているため、自己負担額は保険料全体の半分で約1800万円です。
 
また、実際に何歳まで生きるのかは誰にも分かりません。長生きすればするほど、一生涯受給できる年金受給額のほうが有利になります。
 
さらに、年金保険料を納めるメリットとして身落としがちなのが、老齢給付以外の保障です。公的な年金制度は「老齢」「障害」「遺族」という3つの保障が柱になっています。
 
つまり、年金保険料を支払っていれば、家計を支えていた人が亡くなった際、遺族に給付される「遺族年金」や、重い障害を負った際などに「障害年金」を受給可能です。そのため、保険料を拠出しあって相互に支え合う、国が用意した保険制度とも言えます。
 
もちろん、自分で別途保険料を支払い、民間の保険に加入することもできますが、その分の負担は増えてしまうでしょう。年金制度への加入が義務付けられていることも踏まえた上で、制度全体を俯瞰(ふかん)して、メリットを理解しておくことが大切です。
 

まとめ

年収500万円の男性会社員が平均寿命まで生きる場合、自己負担と会社折半の厚生年金保険料すべてを貯められれば、計算上、貯めた総額は年金受給額を上回るでしょう。しかし、実際の自己負担額はその半分である上、数年長生きするだけで、年金受給額が逆転することになります。
 
また、公的年金制度への加入は国民の義務であり、現実的に会社負担分を含めた厚生年金保険料を貯め込むことはできません。
 
さらに、公的年金制度には老齢給付以外にも、亡くなった際の遺族への給付や、重い障害を負った際の給付など、保険的な機能が充実しています。目先の計算だけではなく、公的年金制度の全体を見て、保険料を支払う意義を考えてみてはいかがでしょうか。
 

出典

厚生労働省 令和6(2024)年簡易生命表の概況
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和7年度版)
日本年金機構 令和7年4月分からの年金額等について
 
執筆者 : 松尾知真
FP2級

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