60歳で定年退職した父。「再雇用で働きながら年金を受け取ると減額される」と聞きましたが、実際“月いくら”減るのでしょうか?
本記事では、現行制度のルールを整理し、月いくら減るのか具体例を用いてわかりやすく解説します。
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在職老齢年金制度とは? 仕組みを簡単に解説
定年退職後も再雇用やアルバイトで働く人は増えています。そんなときに関係するのが在職老齢年金制度です。この制度では、賃金(総報酬月額相当額)と厚生年金(基本月額)の合計がある基準額を超えると、その分に応じて年金の一部がカットされます。
2025年度の基準額は51万円で、合計が51万円を超えた場合、超えた分の半分が年金から支給停止されます。つまり、収入が51万円を下回っていれば減額はありません。51万円を超えた場合も、超過分の半分だけ調整される仕組みです。
なお、2026年4月からこの基準額が62万円に引き上げられる予定です。
実際に“月いくら”減る? 計算例で確認してみよう
制度のイメージをつかむために、具体例で試算してみましょう。
【例1:給与20万円+年金20万円の場合】
・合計:40万円 → 51万円以下 → 減額なし
・そのまま年金20万円を受け取れます。
【例2:給与30万円+年金25万円の場合】
・合計:55万円 → 基準額51万円を4万円超過
・支給停止額:4万円 ÷ 2 = 2万円
・年金:25万円 - 2万円 = 23万円
・総収入:給与30万円+年金23万円=53万円
【例3:給与40万円+年金20万円の場合】
・合計:60万円 → 基準額を9万円超過
・支給停止額:9万円 ÷ 2 = 4万5000円
・年金:20万円 - 4万5000円 = 15万5000円
・総収入:給与40万円+年金15万5000円=55万5000円
このように、給与が高くなるほど年金は減りますが、総収入自体は必ず増えることがわかります。
給与や働き方で減額を避けられるケースもある
在職老齢年金は「超過分の半分を調整する」仕組みなので、働き方次第で減額を回避できるケースもあります。
・給与を抑える働き方を選ぶ
例えば月収25万円程度なら、年金と合わせても51万円を超えず、減額されません。
・賞与(ボーナス)の受け取り方に注意
賞与も過去1年分の支給総額を12分割して月額の賃金に加算されるため、合計額が増えて減額されることがあります。そのため、給与や賞与の設定を会社と相談するのも一つの方法です。
また、年金の支給開始を65歳以降に繰り下げるという選択肢もあります。繰り下げ受給をすると将来の年金額が増えるため、在職老齢年金の調整を気にせず働けるメリットもあります。
まとめ
在職老齢年金は「賃金と厚生年金の合計が基準額を超えると、超過分の半分が年金から差し引かれる」という仕組みです。働くと確かに年金は減りますが、その分給与収入があるため、総収入は必ず増えます。
つまり、減額されることが直ちに損につながるわけではありません。重要なのは、自分がどれくらい働きたいか、生活費や老後の資金にどの程度必要かを見据えて働き方を選ぶことです。制度を正しく理解すれば、不安に感じるよりも安心して自分らしい働き方を選べるはずです。
出典
厚生労働省 在職老齢年金制度の見直しについて
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
厚生労働省 年金制度改正法が成立しました
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
