自営業なので年金は「年80万円」の見込み…1口400円の「付加年金」を納めると、何年で元が取れますか?「2口800円・5口2000円」のように増やせないのでしょうか?

配信日: 2025.08.30 更新日: 2025.10.21
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自営業なので年金は「年80万円」の見込み…1口400円の「付加年金」を納めると、何年で元が取れますか?「2口800円・5口2000円」のように増やせないのでしょうか?
会社員や公務員に比べ、自営業者などの老齢年金は低額になりがちです。自営業者等の年金を増額する方策の一つに「付加年金」の制度がありますが、付加保険料は毎月「1口400円」しか納められません。「たったそれだけの負担増で、将来どれほどの増額が見込めるの?」と不安に思う人もいるでしょう。
 
本記事では、付加年金の制度や受給見込み額、付加保険料の推移や納付額などについて解説します。
橋本典子

特定社会保険労務士・FP1級技能士

付加年金とは

付加年金とは、国民年金第1号被保険者等が付加保険料を納付することで、65歳からの老齢基礎年金に年金額が上乗せされる制度です。
 

付加保険料を納付できる人

付加保険料を納付できるのは、次の人に限られます。
 

・国民年金第1号被保険者(自営業者、フリーランスなど)
・65歳未満の任意加入被保険者

 
上記に該当しても、国民年金基金に加入している人は付加保険料を納められません。
 

付加保険料はいくら?

付加保険料は定額で「1ヶ月400円」です。国民年金保険料1万7510円(2025年度)とともに納付するため、合計で月1万7910円納付することになります。
 

付加年金はいくら?

受給できる付加年金の額は「200円×付加年金納付月数」で計算されます。では、付加保険料を10年納めると、どのくらい年金が増額されるのでしょうか?
 

付加保険料を10年納めると

付加保険料を10年納付した場合、老齢基礎年金に上乗せされる額は「年2万4000円」です(200円×120ヶ月)。20年納めると、4万8000円の増額になります。
 
なお、付加年金は老齢基礎年金とセットになっていて、老齢基礎年金の受給を繰り上げ・繰り下げすると、付加年金の受給も繰り上げ・繰り下げされる仕組みです。
 

「2年で元が取れる」付加保険料

「10年納めても、たった年2万4000円しか増えないの?」と思うかもしれません。しかし、付加保険料を10年間納付した場合の納付額は400円×12ヶ月×10年で4万8000円なので、付加年金を2年以上受給すれば(2万4000円×2年=4万8000円)、65歳から老齢基礎年金を受給する場合、納付した付加保険料の「元が取れる」計算になります。
 
そして、付加年金も老齢基礎年金と同じく終身年金ですから、長生きした分、増額の恩恵が続きます。
 

付加保険料は定額

このようなメリットを知ると「付加保険料を400円だけじゃなく、もっと納めてもっと年金を増やしたい!」と思うかもしれません。しかし、付加保険料は、以前からずっと400円の定額なのです。
 

昔から変わらない付加保険料

付加保険料が納付できるようになったのは、1970年10月からです。この当時は、国民年金保険料が450円・付加保険料が350円で、付加保険料は国民年金保険料とほぼ変わらない額でした。
 
1974年1月に、付加保険料は400円に増額、国民年金保険料は900円に増額となりました。その後も国民年金保険料は上がり続け、1980年4月には2200円、1986年4月は7100円、1993年には1万500円と大台を超えました。国民年金保険料は、物価や賃金の変動に合わせて被保険者が負担すべき保険料も調整される仕組みだからです。
 
しかし、付加保険料にはこの仕組みがありません。そのため付加保険料は、1974年からずっと「月400円」のままになっています。
 

さかのぼって納付できない

「月400円であるのは仕方ないことだとは分かった。400円なら少額だし、過去10年分くらいをまとめて納付すればいいよね?」と考えることもあるかもしれません。しかし、付加保険料の納付は「申し出た月以降」に限られ、遡及納付はできないことになっています。申し出前の過去分をまとめて納めたいと思っても、制度上不可能です。
 

定額しか納付できない

ちなみに「1口400円を複数口納付する」こともできません。1口、2口といった制度があるのは、国民年金基金です。国民年金基金も付加年金と同様、自営業者などの老齢年金を補強する制度ですが、国民年金基金は6万8000円の範囲内であれば、口数を増やすことができます。
 
月額400円のみの付加年金と異なり、国民年金基金は個々人に合わせて制度設計ができる一方、一度加入したら任意で脱退できないといった決まりもあります。
 

まとめ

付加年金は、毎月400円の付加保険料を納付するだけで、将来の老齢基礎年金に年金額が上乗せされる制度です。保険料は一律400円と決まっており、大きく年金額を増やすことはできませんが、それでも少額の負担で老齢年金を補強できます。
 
また付加保険料は、納付開始後、好きな時点で納付を止められる自由度もあります。自営業者など第1号被保険者や任意加入被保険者の人は、納付を検討してみてもよいかもしれません。
 

出典

日本年金機構 付加保険料の納付
日本年金機構 国民年金保険料の変遷
 
執筆者 : 橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士

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