夫が65歳以降も働く予定で「月20万円」ほどの収入を見込んでいます。働くと年金は「支給停止」になる場合があると聞きましたが、どんな条件で止まるのでしょうか?

配信日: 2025.08.30 更新日: 2025.10.21
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夫が65歳以降も働く予定で「月20万円」ほどの収入を見込んでいます。働くと年金は「支給停止」になる場合があると聞きましたが、どんな条件で止まるのでしょうか?
65歳になっても収入を得ながら年金を受けたいと考える方々にとって、「年金が止まるかもしれない」という不安は大きなものです。特に「月20万円くらい稼ぐつもりだけど、年金はどうなるの? 」という具体的な疑問は、知っておきたいポイント。
 
本記事では、働きながら受給する「在職老齢年金」の仕組みと、支給停止の条件を整理します。2025年度の最新の基準額から2026年の改正予定まで、どう働けば年金を減らさずに受け取れるのか、計算例や働き方の工夫も交えてご紹介します。
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「在職老齢年金」とは? 65歳以降も年金が減る仕組み

65歳以降に働きながら「老齢厚生年金」を受け取る場合、「在職老齢年金」という制度によって支給額が調整されることがあります。対象となるのは「老齢厚生年金の報酬比例部分」で、老齢基礎年金(国民年金部分)は収入に関係なく満額支給されます。調整の対象になるのは次の条件すべてに該当する場合です。

●年齢が60歳以上であること(65歳以上も含む)
●働いており、厚生年金保険に加入している状態であること
●「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計が、支給停止の基準額を超えていること

 

「月20万円の収入」で支給停止はある? 具体的な計算例でチェック

まずは必要な金額の意味を整理します。

●基本月額
→加給年金を除いた老齢厚生年金(報酬比例部分)の年額を12で割った額
 
●総報酬月額相当額
→毎月の標準報酬月額+直近1年間の標準賞与額の合計を12で割った額

2025年度(令和7年度)の支給停止調整額(基準額)は51万円です。基本月額と総報酬月額相当額の合計が51万円を超えた場合、その超過分の半額が「支給停止月額」となり、老齢厚生年金(報酬比例部分)から減額(または全額停止)されます。
 
計算式は以下の通りです。
 
支給停止月額 =(基本月額+総報酬月額相当額−51万円)÷2
 
月20万円の収入(月給のみ、ボーナスなし)の場合、総報酬月額相当額は20万円となります。基本月額(老齢厚生年金の報酬比例部分)が10万円の場合、合計30万円となり、2025年度の基準額51万円以下であるため支給停止はありません。
 
もし基本月額が15万円、収入が20万円でも合計35万円であり、やはり支給停止はありません。
 
このように、「月20万円」の収入だけなら、ほとんどの場合で年金の支給停止にはなりません。ただし、賞与(ボーナス)を含めた収入や年金額(基本月額)が多い場合は、合計が51万円を超えることがあるため注意が必要です。
 
基本月額は「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で確認し、給与や賞与の合計とあわせて支給停止の有無を計算することをおすすめします。
 

2025年度以降の基準額は51万円、2026年にはさらに緩和予定

制度は毎年見直されており、名目賃金の変動に応じて基準額も変更されます。直近の改定は以下の通りです。

●2025年度
→基準額が50万円から51万円に引き上げられました。
 
●2026年4月から
→大幅な引き上げが予定されており、「62万円(2024年度価格)」が見込まれています。今後の物価や賃金次第で若干変更される可能性もあります。

この改正の背景には、「高齢者の就労を促すこと」「働く意欲を阻害しない制度にすること」があり、働き損を減らす狙いがあります。

 

支給停止を抑える働き方・工夫と注意点まとめ

支給停止を避けるには、「基本月額 + 総報酬月額相当額」の合計が2025年度は51万円以内に収まるよう、収入(金額・勤務日数・賞与)を調整しましょう。例えば、勤務日数を減らしたり、賞与を抑えたりといった工夫も有効です。
 
また、厚生年金に加入しない働き方(個人事業主、業務委託や要件を満たさない短時間労働など)を選ぶことで、在職老齢年金の支給停止制度の対象外とすることも可能です。
 
ほかにも、副業による所得を厚生年金の被保険者対象外(クラウドワークス等)から得ることで、収入を増やしつつ支給停止を回避する選択肢もあります。
 
さらに、在職定時改定制度(65歳以上で9月1日時点で厚生年金加入中)の場合、翌10月以降前年の納付実績に応じて年金額が増額されるメリットもあります。
 
注意点として、賃金が減少し要件を満たした場合は雇用保険給付も受けられますが、年金と給付金の合算により年金の一部支給停止が加わる可能性もあるため、全体収入のバランスに注意が必要です。なお、2025年度以降は給付率や条件が縮小されています。
 
また、年金受給者であっても、給与やその他収入(パートなど)・雑所得の合計が20万円を超える場合等は確定申告が必要となることがあります。
 

月20万円収入でも年金は安心して受け取れる

「月20万円」の収入を見込んで働く場合、現在の制度(2025年度:基準額51万円)では支給停止になる可能性は低いですが、ご主人の老齢厚生年金の基本月額と賞与等も踏まえて計算されるのが安心です。
 
今後、2026年には基準額が62万円などに引き上げられる予定で、働きやすさはさらに向上すると見られます。働き方や働く時間を調整する工夫をすれば、収入と年金の両方をうまく受け取ることが可能です。
 

出典

日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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