“奨学金+アルバイト”で「月収14万円」の大学生。年金保険料「約2万円」がきついけど、本当に納める必要はありますか?
そんななか、20歳を迎えると届くのが「国民年金保険料の納付案内」です。1ヶ月あたり2万円近い金額は、学生にとっては負担だと感じることもあるでしょう。「まだ若いし、払わなくてもいいのではないか」と思う人もいるかもしれませんが、実は放置してしまうと将来の受け取り年金額に影響する可能性があります。
本記事では、国民年金保険料の基礎知識と、払わなかった場合のデメリット、そして学生向けの負担軽減制度について解説します。
ファイナンシャルプランナー2級
目次
国民年金保険料とは?
日本の年金制度は、20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金(基礎年金)」が土台になっています。会社員や公務員の場合は、この国民年金に加えて厚生年金に加入し、ほとんどの場合、給与天引きという形で納付しています。
一方、学生や自営業者など厚生年金に加入していない人は、自分で国民年金保険料を納める必要があるのです。2025年度の国民年金保険料は月額1万7510円で、年間では20万円を超える支出となり、収入の少ない学生にとってはかなりの負担といえるでしょう。
月収14万円の大学生にとっての負担感
今回のように奨学金とアルバイト代を合わせて月収14万円の大学生の場合、ここから1万7510円の保険料を支払うと、手元に残るのは約12万2500円です。
総務省の家計調査によると、単身世帯(平均年齢58.7歳)の平均生活費は月16万9547円となっています。仕送りなど親の援助の有無や、生活スタイルによっても異なりますが、学生が家賃、食費、水道光熱費、通信費、教材費、交際費といった生活費のすべてを12万円でやりくりするのはかなり切り詰めた生活になるでしょう。
「払わない」選択は可能? 納めないデメリットとは
生活が苦しいからといって、安易に保険料を放置してしまうのはリスクが伴います。国民年金には10年の「受給資格期間」があり、この条件を満たさないと将来老齢基礎年金を受給できない可能性があるからです。
さらに、年金は老後の生活資金だけでなく、病気や事故で障害を負った場合の「障害基礎年金」や、家族が亡くなったときの「遺族基礎年金」といった保障も含まれています。学生時代からずるずると未納状態が続くと、これらの保障を受けられなくなることがあるのです。
また、長期間の未納は、財産の差押えや延滞金の発生など、経済的なリスクにもつながります。
学生向けの負担軽減制度「学生納付特例」
学生で保険料を納めることが難しい場合は、「学生納付特例制度」を利用しましょう。この制度は、在学中の保険料の納付が猶予され、後から追納することが可能というものです。対象は大学(大学院)、短大、高専、専修学校などに在学中の20歳以上の学生で、本人の所得が一定額以下であることが条件です。
2025年度の場合、基準所得は「128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除額等」となっており、奨学金やアルバイト収入があっても、この基準以下であれば制度の利用が可能です。申請は年金事務所や市区町村役場で行うことができ、承認されればその年度の4月から翌年3月までの保険料が猶予されます。
「猶予」と「免除」の違い
学生納付特例はあくまで「猶予」であり、納付が「免除」されたわけではありません。このため、10年以内であれば本来学生時代に納めるべきだった保険料を「追納」することができます。
追納することで、学生納付特例の承認を受けた支払い期間がさかのぼって年金額に反映されます。しかし、追納しないまま10年を超えると、その期間は未納扱いとなり年金額が減ってしまいます。
一方、経済的に厳しい場合には保険料の「免除制度」があります。これは、保険料を全額または一部免除するものです。ただし、免除期間の年金額は保険料を全額納付した場合と比べて低額になります。「猶予」と同じく、10年以内であれば追納して、年金受給額を満額に近づけることができます
まとめ
国民年金保険料は、20歳からすべての人に納付義務があります。月額1万7000円を超える保険料は、奨学金とアルバイトで生活する大学生にとって負担が大きく、生活費を圧迫してしまうこともあるでしょう。
しかし、納めないまま放置すると、老後だけでなく病気や事故時の保障も受けられなくなるリスクがあります。学生で経済的に厳しい場合は、「学生納付特例制度」を活用し、在学中の負担を軽くすることができます。将来の自分の生活を守るためにも、まずは年金事務所や市区町村の窓口で相談し、適切な方法を選びましょう。
出典
日本年金機構 国民年金保険料
総務省統計局 家計調査報告[家計収支編] 2024年(令和6年)平均結果の概要
日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
執筆者 : 渡辺あい
ファイナンシャルプランナー2級
