60歳で定年退職、60~65歳まで国民年金に任意加入して付加年金も払うと、年金はいったいいくら増えるの?
本記事で、ファイナンシャル・プランナーである筆者がシミュレーションします。
一級ファイナンシャル・プランニング技能士
CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表
横浜市出身、早稲田大学卒業。大手金融機関に入行後、ルクセンブルグ赴任等を含め10年超勤務。結婚後は夫の転勤に伴い、ロンドン・上海・ニューヨーク・シンガポールに通算15年以上在住。ロンドンでは、現地の小学生に日本文化を伝えるボランティア活動を展開。
CFP®として独立後は、個別相談・セミナー講師・執筆などを行う。
幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプラン、国際結婚のカップルの相談など多数。グローバルな視点からの柔軟な提案を心掛けている。
3キン(金融・年金・税金)の知識の有無が人生の岐路を左右すると考え、学校教育でこれらの知識が身につく社会になることを提唱している。
ホームページ:http://www.iwanaga-mari-fp.jp/
国民年金の任意加入・付加保険料とは?
20歳から60歳までの40年間、国民年金保険料を納めることで、65歳から老齢基礎年金を満額(令和7年度は昭和31年4月2日以後生まれの方の場合、月額6万9308円)を受給できます(※1)。
しかし、保険料の納付期間が40年間に満たない人は、その満たない期間分が満額年金から減額されます。
■任意加入
国民年金保険料を納められない期間があり満額受給できない人は、60歳以降も65歳までに国民年金に任意加入して保険料を納めると年金額を満額に近づけることができます。その条件には、厚生年金保険や共済組合等に加入しておらず、日本国内に在住し繰上げ支給をしていないことです。
■付加保険料
国民年金保険料に上乗せして月額400円の付加保険料を納めると、さらに年金額を増やせる仕組みです。国民年金任意加入者も加入できます。
実際にいくら払うといくら増えるの?
■国民年金任意加入
令和7年度では、毎月の国民年金保険料は1万7510円です(※2)。一方、保険料を40年間納めた時の老齢基礎年金(満額)は83万1700円です。保険料や年金額は変動しますので、今回は令和7年度の数字で概算します(図表1)。
図表1
■付加年金
付加保険料を納めた月数×200円が、付加年金(年額)として受給できます。付加保険料は月額400円なので、2年以上受け取ると納めた保険料を上回る付加年金を受け取れます(※3)。図表2は、付加保険料を5年間支払った場合の支払保険料総額と付加年金額です。
図表2
損益分岐年数は?
では、実際に任意で保険料を払った場合に何年以上年金をもらうと、払った保険料以上の年金を受け取ることができるのでしょうか。図表3で見てみましょう。
図表3
■国民年金任意加入
国民年金は、5年間保険料(約105万円)を納めると、増える年金は約10万4000円なので、105万円÷10万4000円で計算すると約10年で増えた年金額と支払った保険料がほぼ等しくなります。つまり11年以上年金を受け取ると支払った保険料合計額を上回ります。
各支払い年数に応じて計算すると、いずれも10年が損益分岐年数となり、11年以上もらうと支払保険料の合計額を上回ります。
■付加年金
付加年金は、月400円支払うことで年金が一月につき200円増えることから、400÷200で2年が損益分岐年数です。最低2年以上もらえば元が取れることになりますが、国民年金の任意保険料と合算すると図表4のようになります。
図表4
国民年金単独では11年以上もらわないと元が取れませんが、付加年金と合わせると損益分岐年数が9.3年まで下がり、10年以上もらえば元が取れることになります。付加保険料は比較的少額なので、任意加入する余裕があれば、付加年金も合わせて加入するとよいでしょう。
まとめ
国民年金に任意加入できるのは、全加入期間40年に満たない年数に限ります。40年に5年足りない場合は65歳まで最大の5年間支払うことができますが、40年に満たない期間が3年しかなければ、3年間分しか支払うことができません。
いずれのケースも損益分岐年数は付加年金と合わせると10年以上受給すれば、支払保険料合計を上回ります。
一般的に年金を受給し始める65歳時点の平均余命(令和6年)は、男性19.47年、女性24.38年なので75歳まで存命している可能性は高いといえます(※4)。増えた年金額は生涯もらうことができるので、検討してみてはいかがでしょうか。
出典
(※1)日本年金機構 令和7年4月分からの年金額等について
(※2)日本年金機構 国民年金保険料
(※3)日本年金機構 付加保険料の納付
(※4)厚生労働省 令和6年簡易生命表の概況 1 主な年齢の平均余命
執筆者 : 岩永真理
一級ファイナンシャル・プランニング技能士




