「働くと年金が減るなんて…」定年後「月収45万円+年金12万円」の大誤算…“在職老齢年金改正”でいくら減る? FPが影響を解説
本記事では、具体的な収入例を基に年金減額の仕組みを解説し、2026年度から予定されている制度改正による影響についても説明します。
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目次
在職老齢年金の仕組みと「51万円の壁」
老齢厚生年金を受け取りながら就労し、厚生年金に加入している人に適用されるのが、在職老齢年金制度です。会社員として60歳以降も働く人が対象となり、収入によって年金が一部、または全額停止されることがあります。
判定額は以下の計算で求めます。
判定額=基本月額(年金額)+総報酬月額相当額(給与+賞与1月あたりの額)
この判定額が「支給停止調整額」と呼ばれる基準額を超えると、超えた分の半分が年金から差し引かれます。2025年度の基準額は51万円です。つまり、給与と年金の合計が51万円を超えた部分について、その半分が減額される仕組みです。
給与45万円+年金12万円の場合はどうなる?
実際のケースで考えてみましょう。給与45万円、老齢厚生年金12万円を受け取っていると仮定します。
給与:45万円(総報酬月額相当額)
年金:12万円
合計:57万円
このケースでは、基準額の51万円を6万円超えているため、超過分の半分(3万円)が年金から差し引かれます。
計算式にすると次の通りです。
減額額=(45万円+12万円−51万円)÷2=3万円
したがって、年金12万円から3万円差し引かれ、実際に受け取れるのは9万円となります。最終的な収入イメージは、給与45万円+年金9万円=54万円です。
この例を見ると、「働いた分だけ手取りが減ってしまう」と感じる人もいるかもしれません。しかし、給与そのものが減らされるわけではなく、あくまで年金が一部停止される仕組みです。働くこと自体は収入増加につながり、年金保険料を納め続けることで将来の年金額が増える可能性もあります。
2026年度からの年金制度改正と影響
2026年4月からは、この支給停止基準額が「62万円」に引き上げられる予定です。これは、高齢者の就労環境を整備し、働きやすくするための見直しです。この変更で、新たに約20万人が年金を全額受給できるようになる見通しです。
先ほどと同じ「給与45万円+年金12万円(合計57万円)」のケースでは、62万円の支給停止基準額を下回るため、減額はありません。つまり2026年度以降は、今より多く働いても年金が減らされにくくなるのです。
年金制度改正の背景
背景には、高齢者の就労を後押しする制度改正があります。2021年4月の「高年齢者雇用安定法」の改正により、企業には70歳まで働ける環境を整える努力義務が課されました。
具体的には、「70歳までの定年の引き上げ」「定年制の廃止」「再雇用や勤務延長制度の導入」など、高齢者のニーズに応じて就労を続けられる仕組みが示されています。これにより、働く意欲のある高齢者が働き続けやすくなると同時に、社会保障制度を支える労働力の確保にもつながるでしょう。
年金減額を避けつつ収支バランスを取るには?
在職老齢年金は「働き損」になる制度ではありませんが、手取り額を意識して働き方を調整することは有効です。ボーナスを含めた年収を把握しておけば、基準額を念頭に置いた収入計画を立てやすくなります。
また、年金が減額されたとしても、多く働いた分だけが将来の年金額に反映される可能性があるため、必ずしも損するわけではありません。大切なのは、手取りの収入と家計の支出のバランスをどう保つかです。
将来のために「51万円の壁」を正しく理解しよう
在職老齢年金の「51万円の壁」は、働きながら年金を受け取る高齢者にとって重要な制度です。給与45万円+年金12万円の場合、現行制度では年金が3万円減額されますが、2026年4月からは基準額が62万円に引き上げられることで減額は発生しません。
さらに、働くことは将来の年金額の増加や社会参加につながります。制度を正しく理解して、自分の収入と支出のバランスを把握することが重要です。
出典
厚生労働省 在職老齢年金制度の見直しについて
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況 企業規模別
厚生労働省 年金制度改正法が成立しました
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
