Xで「年金を追納しても元を取るのに20年」の投稿が話題!「年860円」しか増えないらしいけど、頑張って支払っても得しないの? FPが解説
この内容はどういう意味で、実際に60歳になってから任意加入したほうがよいのでしょうか?
本記事では、追納と任意加入により年金がどれくらい上がるのか、任意加入を利用する際の注意点などを解説します。
2級ファイナンシャルプランニング技能士
老齢基礎年金の計算式
まず、国民年金保険料を支払うことで、もらえるようになる老齢基礎年金の計算式を説明します。1年間にもらえる老齢基礎年金の計算式は以下のとおりです。
・83万1700円×保険料納付済月数/480
国民年金保険料は20歳から60歳まで支払う必要があり、40年間(480ヶ月)支払えば満額がもらえる仕組みです。つまり、国民年金保険料を1年間納めなかったとすると、満額の83万1700円(2025年度)から「83万1700円×12/480=約2万800円」が減額されます。
国民年金保険料の免除・納付猶予とは
「免除」とは、前年所得が一定額以下の場合や失業した場合などに、申請によって保険料の支払いが免除される制度です。免除される額は「全額・4分の3・半額・4分の1」の4種類です。また、免除ではなく保険料の支払いが猶予される「納付猶予」もあります。
免除期間でも、国の負担により年金額へある程度反映されています。ただし、納付猶予の場合は受給資格期間への算入はされますが、年金額には反映されません。
具体的には、先ほど説明した「83万1700円×保険料納付済月数/480」の保険料納付済月数に一定分が加算されます。
●全額免除:2分の1月
●4分の3免除:8分の5月
●半額免除:8分の6月
●4分の1免除:8分の7月
●納付猶予:加算なし
つまり、全額免除であれば、保険料を納めていなくても2分の1月分は加算されるということです。
追納により年金はいくらアップする?
国民年金保険料の追納とは、免除や納付猶予などを受けたことがある人が、その期間の保険料を追加で納付することです。ただし、追納できるのは10年以内です。
追納により、将来もらえる老齢基礎年金がアップします。しかし、先ほど説明したように免除の場合は、すでに国の負担により年金額にある程度反映されています。
つまり、全額免除だった場合に追納で1年分の保険料を支払ったとしても、実際に増える金額は先ほど計算した「83万1700円×12/480=約2万800円」ではなく、その2分の1の「約1万400円」です。
Xの投稿では「年1000円未満」となっていますが、「月1000円未満(1万400円/12=約870円)」ではないかと思われます。
任意加入とは
60歳の時点で、国民年金保険料を納付した月が480ヶ月未満の人は、追加で保険料を納められる制度が「任意加入」です。原則65歳未満まで行えます。
この制度で1年間保険料を納めたとすると、年金は「83万1700円×12/480=約2万800円」増えるため、追納よりも得です。
ただし、年金の繰上げ受給を受けていると、任意加入はできません。繰上げ受給とは、本来老齢基礎年金の支給がスタートされる65歳よりも前倒しで年金を受給することです。また、厚生年金保険などに加入している人も任意加入は利用できません。
Xの投稿で「繰下げ受給しないのなら60歳になってから任意加入して支払ったほうが割がよい」とあるのは、繰下げ受給ではなく繰上げ受給のことではないかと思われます。
追納ではなく任意加入を利用する場合の注意点
以上のことから、追納よりも任意加入を利用したほうが良いと思うかもしれませんが、注意しなければならない点もあります。現在の制度では追納よりも任意加入のほうが得ですが、将来はどうなるか分かりません。任意加入の制度が変更される可能性もあるからです。
また、将来年金の繰上げ受給を考えている人であれば、任意加入は使えません。ほかにも、病気やけがなどで障害年金を受け取る事態になった場合を考えると、早めに追納をしていたほうが良いという考え方もあります。
このように、60歳からの任意加入をあてにしていると、あてが外れる可能性もあるため、さまざまなケースを考慮して利用するようにしましょう。
まとめ
国民年金保険料を追納するよりも、任意加入を使ったほうが年金額はアップします。ただし、任意加入を利用するのであれば繰上げ受給はできない点や、将来の制度変更リスクなどのデメリットがあるため注意が必要です。メリットとデメリットをそれぞれ考えた上で判断しましょう。
出典
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
日本年金機構 任意加入制度
執筆者 : 山根厚介
2級ファイナンシャルプランニング技能士
















