夫は「年収700万円」で妻は専業主婦。万一の場合「遺族年金」で妻と子ども2人は暮らしていける? 受給額を試算

配信日: 2025.09.13 更新日: 2025.10.21
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夫は「年収700万円」で妻は専業主婦。万一の場合「遺族年金」で妻と子ども2人は暮らしていける? 受給額を試算
万一配偶者を失ってしまった場合、大きな悲しみとともに、配偶者の収入が途絶えた後にどうやって生活すればよいのかという現実的な問題が押し寄せます。
 
本記事では、夫が年収700万円の会社員、妻は専業主婦、子ども2人という想定の下、夫に万一のことがあった際に妻が受給できる遺族年金がいくらになるのか、そしてその金額で生活費をまかなえるのかを試算します。
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遺族年金の受給額

配偶者に万一のことがあった際、遺族が受け取れる可能性があるのは遺族基礎年金と遺族厚生年金です。それぞれの受給要件や金額を見ていきましょう。
 

遺族基礎年金

遺族基礎年金の受給要件は、亡くなった人が国民年金の被保険者などで、子どもが18歳になった年度の3月31日までであることです(障害等級1級または2級の子の場合は20歳未満)。
 
今回、子どもがこの条件を満たしているとすると、妻は年額で83万1700円と、子どもの加算額として1人あたり23万9300円を受け取れます。つまり、合計で受け取れる遺族基礎年金の年額は次のとおりです。
 
・83万1700円+23万9300円×2人=131万300円
 

遺族厚生年金

遺族基礎年金は受給要件に所定の子どもがいることが挙げられますが、遺族厚生年金は子どもがいなくても受け取れます。なお、受給期間は現行制度では妻が30歳未満の場合は5年間のみ、30歳以上の場合は生涯受給が可能です。
 
遺族厚生年金の受給額は、夫が受け取る予定だった「報酬比例部分」の4分の3となります。報酬比例部分(年額)の計算式は次のとおりです。
 
・平均標準報酬額×5.481÷1000×加入月数
 
今回は仮に夫の生涯の平均年収が700万円、厚生年金に30年間加入していたとします。その場合、夫がもらえるはずだった報酬比例部分は116万4164円です。
 
そのため、妻がもらえる遺族厚生年金は年間で87万3123円(116万4164円の4分の3)になります。
 

平均的な支出額との比較

ここからは、本記事のケースでもらえる遺族年金で暮らしていけるのかを見ていきます。本記事でもらえる遺族年金(遺族基礎年金+遺族厚生年金)の年額は次のとおりです。
 
・131万300円+87万3123円=218万3423円
 
つまり、月額にすると約18万円です。
 
一方、支出については教育費や住居費などによって異なりますが、2024年度の総務省の家計調査によると、二人以上の世帯の平均的な消費支出は月額約30万円です。
 
この数値を参考にすると、遺族年金だけでは平均的に月12万円ほど不足する計算になります。もちろん、実際に不足するかどうかは家庭によりますので、万一の際に必要な支出は計算しておきましょう。
 

不足分をどう補うか?

遺族年金だけでは生活費をまかなえないとすると、生活を維持するためにいくつかの補完手段を検討する必要があります。まずは、自分が働くという選択肢が有効ですが、ほかにも次のような手段を検討しましょう。
 
例えば、生命保険の見直しです。定期保険や収入保障保険、または死亡給付金が手厚い終身保険を活用することで、もしもの時にまとまった資金を確保できます。
 
また、貯蓄や資産運用も重要です。緊急時に対応できる現金の備えだけでなく、iDeCoやNISAのつみたて投資枠などの税制優遇制度を活かした中長期的な資産形成で、老後や教育資金にも備えておくことが望ましいでしょう。
 
さらに自治体や国の支援制度など、条件を満たすことで受けられる公的制度もあります。
 
これらを組み合わせて活用することで、遺族年金だけではカバーできない生活の穴を埋めていけるでしょう。
 

遺族厚生年金の制度改正について

遺族厚生年金は2028年から段階的に男女差を解消する改正が予定されています。なお、本記事のように子どもを養育している間の支給額は変更がありません。
 
ただし、子どもがいない場合、現状は遺された妻が30歳以上であれば生涯遺族厚生年金を受給できますが、制度変更後は5年間限定の支給になります(60歳未満で死別の場合)。
 

まとめ

夫の年収が700万円あったとしても、万一の際には遺族年金だけでは妻・子2人のその後の生活は難しいかもしれません。その場合、自分が稼ぐ、生命保険による保障を拡充する、貯蓄・資産形成をする、公的支援を活用するといった備えが不可欠です。
 
将来の制度変更をふまえつつ、事前にいざという時の備えを考えておきましょう。
 

出典

日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和7年度版)
総務省統計局 2024年度 家計調査
厚生労働省 年金制度改正法が成立しました
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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