転職した同期の「厚生年金4万円くらい引かれてる」発言にショック! 自分は「2万5000円」ほどですが、収入はどれだけ差があるのでしょうか?
自分が月に2万5000円しか支払っていないのに対し、元同僚は4万円引かれているとしたらどれだけ年収に差がついているのでしょうか。本記事では、厚生年金保険料の決まり方と年収との関係について解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
月々の厚生年金の決まり方
厚生年金の保険料は、毎月の給料などの報酬の月額をいくつかの幅で区分した「標準報酬月額」に基づいて決まります。例えば、月の報酬が16万5000円以上17万5000円未満の人の標準報酬月額は17万円(11等級)で、保険料は1万5555円といった具合です。
標準報酬月額は、毎年4月から6月の報酬の平均をもとに算出し、9月(10月徴収分)から翌年8月までの保険料に適用します。基本給に加えて残業代や交通費などの各種手当を含むことに注意が必要です。
具体的には、月々の保険料が約4万円となるのは25等級の場合で、4月から6月の平均報酬が42万5000円以上45万5000円未満にあたります。この場合の保険料は4万260円です。
一方、4月から6月の平均報酬が27万円以上29万円未満のときに保険料が2万5620円(18等級)となります。
この2つを比べた場合、月収で13万5000円~18万5000円、年収にすると162万~222万円もの差があるように見えます。そのため、「同期のほうがずっと高収入なのでは」と考えてしまうかもしれません。
月々の厚生年金の差が必ずしも年収の差を示すわけではない
しかし、この差はあくまでも4月~6月の報酬の差に過ぎません。4月~6月の残業の有無、交通費の大小、ボーナスの有無によって実際の年収には差があるのです。
例えば、元同僚の4月~6月の平均報酬の内訳が、基本給40万円、繁忙期で残業代が2万円、交通費が1万円あったとします。これで合計43万円となり月々の保険料が4万260円となるわけです。ここで元同僚に賞与がないとしたら基本給ベースの年収は480万円となります。
一方、自分の4月~6月の平均報酬の内訳が基本給28万円、残業代なし、交通費4800円の28万4800円、これで保険料が2万5620円であるとしましょう。さらに2.5ヶ月分(70万円)の賞与が年に2回出る会社であったならば、基本給と賞与の合計額は476万円となり元同僚と変わりません(賞与に関する厚生年金保険料は別途徴収)。
このように、月々の厚生年金保険料に1万5000円以上の差があっても、実際の年収はほとんど変わらないことがあるのです。
違いが生まれる要因は「交通費が含まれる」「4~6月だけ残業が多いと跳ね上がる」「ボーナスは月々の保険料の計算に反映されない」といった制度上の仕組みにあり、必ずしも厚生年金保険料の差が、年収の差に比例するわけではないことは知っておいて良いでしょう。
まとめ
厚生年金の保険料は収入の目安にはなりますが、年収をそのまま反映するものではありません。交通費や残業代の有無、ボーナスの扱いによって大きく変わるため、保険料の額だけで「収入差がこれだけある」と考えるのは早計です。
「厚生年金が月4万円引かれる」という言葉をそのまま受け取ると、実際以上に収入差があるように誤解してしまうこともあります。厚生年金の仕組みを知っておくことで、数字に惑わされず正しく理解できるようになるでしょう。
出典
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和7年度版)
執筆者 : 浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
