年収1000万円だった夫を亡くした姉に届いた“遺族年金”は月12万円……。どうしてこの金額になるのですか?

配信日: 2025.09.13 更新日: 2025.10.21
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年収1000万円だった夫を亡くした姉に届いた“遺族年金”は月12万円……。どうしてこの金額になるのですか?
遺族年金は、国民年金・厚生年金保険の被保険者が亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が受け取ることができる年金です。国民年金に加入していた場合は遺族基礎年金を、厚生年金保険に加入していた場合は遺族厚生年金を受け取ることができます。
 
本記事では、「年収1000万円だった夫を亡くした姉に届いた“遺族年金”は月12万円……。どうしてこの金額になるのですか?」という事例を基に、令和7年度時点での遺族基礎年金・遺族厚生年金の受給金額について解説します。
 
なお、本記事において夫は就職当初から厚生年金保険に加入しているものとします。また、遺族年金の受給要件は満たしており、配偶者が遺族年金を受け取るものとします。
中村将士

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
 
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。

遺族基礎年金はいくら受け取れるのか?

令和7年4月分からの遺族基礎年金の年金額は、以下のとおりです。

●昭和31年4月2日以後生まれの方:83万1700円+子の加算額
●昭和31年4月1日以前生まれの方:82万9300円+子の加算額

「子の加算額」は、以下のとおりです。

●1人目・2人目の子の加算額:各23万9300円
●3人目以降の子の加算額:各7万9800円

例えば、昭和31年4月2日以後生まれで、子が1人いる配偶者が受け取れる遺族基礎年金の年金額は107万1000円(=83万1700円+23万9300円)、1月当たり8万9250円(=107万1000円÷12ヶ月)となります。
 
なお、この場合の「子」とは(1)18歳になった年度の3月31日までの方、または(2)20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方を指します。これに該当する「子」がいない場合、遺族基礎年金は受給できません。
 

遺族厚生年金はいくら受け取れるのか?

遺族厚生年金の年金額は、「死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」です。報酬比例部分の計算方法は、図表1のとおりです。
 
図表1

図表1

出典:日本年金機構 「は行 報酬比例部分」
 
「平均標準報酬月額」とは、平成15年3月以前の加入期間について、各月の標準報酬月額の総額を加入期間で除して算出した金額です。
 
一方、「平均標準報酬額」とは、平成15年4月以降の加入期間について、各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を加入期間で除して算出した金額です。平均標準報酬月額には賞与が含まれず、平均標準報酬額には賞与が含まれるという点に大きな違いがあります。
 
報酬比例部分の計算は、標準報酬月額や加入期間などの具体的な数字が分からないと算出できませんが、本記事では試算のため、以下のように仮定します。

●平均標準報酬月額:59万円
●平成15年3月までの加入期間の月数:36月(平成12年4月から平成15年3月までの3年間)
●平均標準報酬額:83万円
●平成15年4月以降の加入期間の月数:264月(平成15年4月から令和7年3月までの22年間)

ここから報酬比例部分、遺族厚生年金額を計算すると、以下のようになります。

(1)報酬比例部分
(平成15年3月までの加入期間)59万円×7.125/1000×36月≒15万1000円
(平成15年4月以降の加入期間)83万円×5.481/1000×264月≒120万1000円
15万1000円+120万1000円=135万2000円
 
(2)遺族厚生年金額
135万2000円×3/4=101万4000円

このように計算をすると、遺族厚生年金額は101万4000円、1月当たり8万4500円となります。
 
また、以下のいずれかに該当する妻が遺族厚生年金を受け取る場合、妻が40歳から65歳になるまでの間、中高齢寡婦加算として年額62万3800円を受け取ることができます。

●夫が亡くなったとき、40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない
●遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていたが、子が18歳到達年度の末日に達した(障害の状態にある場合は20歳に達した)ため、遺族基礎年金を受給できなくなった

 

まとめ

本記事では、「年収1000万円だった夫を亡くした姉に届いた“遺族年金”は月12万円……。どうしてこの金額になるのですか?」という事例を基に、遺族基礎年金・遺族厚生年金の受給金額について解説し、それぞれの年金額を試算しました。
 
試算結果から、以下のことがいえます。

●子が1人いる場合、遺族基礎年金として年107万1000円を受け取ることができる(令和7年4月分以降)
●厚生年金保険に加入していた年収1000万円の夫が亡くなった場合、遺族厚生年金として年101万4000円を受け取ることができる(報酬額や加入期間により年金額は増減する)
●遺族厚生年金を受け取るのが「子がいない妻」の場合、一定の要件を満たすことで中高齢寡婦加算として62万3800円を受け取ることができる

以上のことから、年収1000万円だった夫を亡くした姉が受け取る遺族年金額が「月12万円(年144万円)」である理由として、以下のように考えられます。

●遺族基礎年金がない(子がいないために受け取ることができない)
●遺族厚生年金額が80万円前後である(年収は“次第に増えていく”のが一般的であり、亡くなったときの年収が1000万円であったとしても段階的に昇給したものだと考えらえることから、実際の遺族厚生年金額は本記事の試算よりも少ないと考えるのが妥当である)
●中高齢寡婦加算62万3800円が加算されている

このように考えると遺族年金額は142万3800円前後となり、本事例の「月12万円」に近い金額となります。ただし、本記事の解説は、遺族年金額が月12万円になることの一例であり、他の可能性を排除するものではありません。とはいえ、一例を挙げることで、本記事が遺族年金を理解する一助になったのではないでしょうか。
 

出典

日本年金機構 遺族年金
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 は行 報酬比例部分
日本年金機構 厚生年金保険 標準報酬月額等級の変遷
 
執筆者 : 中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

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