厚生年金は支払期間によっては元が取れないことも?何年支払えば損をしない?
実際には厚生年金は単なる積み立てではなく「社会保険制度」としての特徴を持っており、支払期間や受給年数によって損得が変わる側面があります。本記事では、厚生年金の仕組みと「元を取れる年齢の目安」、さらに支払期間が短い場合の取り扱いまで解説します。
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目次
厚生年金は本当に「元が取れない」のか? 仕組みを整理
厚生年金は、会社員や公務員が加入する公的年金制度です。保険料は労使折半で、毎月の給与と賞与に応じて決まります。
よく「払った分が戻らない」といわれますが、そもそも年金は「自分の積立金を将来受け取る仕組み」ではなく、現役世代が高齢者を支える「賦課方式」で運営されています。
つまり、自分が払った保険料はそのまま将来自分に戻ってくるわけではありません。しかし、長生きすればするほど受給額が増える仕組みになっており、結果として「元を取れる」ケースが多いのです。
何年払えば元が取れる? 平均寿命からシミュレーション
厚生年金の受給額は個人の加入期間や現役時代の所得によって変わりますが、どのくらいで元が取れるのかを考えてみましょう。
日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」によると、平均的な収入(平均標準報酬・賞与含む月額換算45万5000円)で40年間就業した夫と、その妻(第3号被保険者)が満額の老齢基礎年金を受け取る世帯の場合、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金受給額は月額23万2784円とされています。
では、これに対応する支払額はどのくらいかというと、厚生年金の保険料率は現在18.3%、労使折半で個人負担は9.15%です。その前提で計算すると、総支払額は以下のとおりです。
平均標準報酬月額45万5000円 × 12ヶ月 × 9.15% × 40年 = 約2000万円
受給額で同額に達するのは65歳から約7年後、つまり72歳です。言い換えれば、72歳より長く生きれば「払い込んだ額以上を受け取れる」という計算です。
厚生労働省「令和6年 簡易生命表」によれば、日本人の平均寿命は男性が81.09歳、女性は87.13歳です。平均的に見て、多くの人が「元を取れる」可能性は高いといえます。
支払期間が短いとどうなる? 中途退職や未納時の扱い
では、転職や退職で支払期間が短い場合はどうでしょうか。老齢基礎年金は、保険料納付済期間と免除期間などを合わせた受給資格期間が10年以上である場合、65歳から支給されます。
老齢厚生年金は、老齢基礎年金を受け取れる方で厚生年金の加入期間がある場合、この老齢基礎年金に上乗せして支給されるもので、加入期間の長さや標準報酬額に応じて金額が決まります。
仮に20年だけ厚生年金を払い、その後は国民年金だけという場合でも、その20年間の保険料分は将来の年金額に加算されます。途中で支払いをやめたからといって「払った分が無駄になる」わけではありません。
また、公的年金には老齢年金だけでなく、障害年金や遺族年金といった保障機能も含まれています。病気や事故に遭った場合、納付期間が短くても給付を受けられる可能性があり、単純な損得勘定だけでは評価できません。
まとめ:損得ではなく「長生きリスク」に備える制度
厚生年金は「払った分が戻らない」と不安視されることもありますが、平均的な収入で40年間働いたケースでは、65歳から受給を始めれば72歳前後で払い込んだ額を上回る計算になります。
日本人の平均寿命を考えれば、多くの人は「元を取れる」どころか、長生きするほど受給額が増えていく仕組みです。また、公的年金には老齢年金だけでなく、障害年金や遺族年金といった保障も含まれており、万が一があったときにも生活を支える役割を果たします。
つまり、厚生年金は「損か得か」を短期的に判断するものではなく、「長生きリスク」に備えるための社会保険制度です。老後の暮らしを安心させる土台として年金を理解し、そのうえでiDeCoやNISAといった自助努力を組み合わせることで、より安定した将来設計につなげられるでしょう。
出典
日本年金機構 令和7年4月分からの年金額等について
厚生労働省 令和6(2024)年簡易生命表の概況
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
監修 : 高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
