夫の扶養(第3号)ですが、パートでも「厚生年金」に加入することになりました。月々の“負担額”はいくら?

配信日: 2025.09.21 更新日: 2025.10.21
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夫の扶養(第3号)ですが、パートでも「厚生年金」に加入することになりました。月々の“負担額”はいくら?
週20時間以上働くパート勤務者は、企業規模に応じて段階的に厚生年金の被保険者となります。厚生年金の被保険者になると、厚生年金保険料と健康保険料を支払うため、手取り額が少なくなります。
 
今回は、パート勤務者の社会保険加入について説明するとともに、報酬に応じた負担額について具体的に解説します。
辻章嗣

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

社会保険の加入拡大とは

令和7年6月13日に、社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化を図るための法改正が成立しました(※1)。
 
今回の改正では、対象となるパート勤務者の要件から賃金の要件が撤廃され、週の所定労働時間が20時間以上であれば原則加入の対象となります(図表1、※1、 2)。
 
図表1

要件 現行 改正
週の所定労働時間 20時間以上 20時間以上
所定内賃金 月額8万8000円以上 (撤廃)
雇用期間 2ヶ月を超える 2ヶ月を超える
対象外 学生 学生

(※1、 2を基に筆者作成)
 
なお、賃金要件撤廃の実施時期は、法律の公布から3年以内と定められていますが、現時点では未定です。今回の改正では、対象となる企業の規模が段階的に緩和され、最終的には全企業が対象となります(図表2、※1)。
 
図表2

適用時期 対象となる企業規模
現行 従業員50人以上
2027年10月 従業員36人以上
2029年10月 従業員21人以上
2032年10月 従業員11人以上
2035年10月 従業員10人以下

(※1を基に筆者作成)
 

具体的な負担額について

それでは、報酬に応じた社会保険料の負担額を具体的に見て行きましょう。社会保険料は、標準報酬月額に保険料率を掛けて保険料を求め、それを労使で折半して支払います。
 
ここでは、令和7年度の厚生年金保険の保険料率と協会けんぽの保険料率(東京都)を使用して試算します(図表3、※3)。
 
図表3

図表3

(※3の保険料率を基に筆者作成)
 
世帯主の扶養の範囲(年収130万円以下)で働いていたパート勤務者の報酬月額は、10万8000円ほどとなりますので、標準報酬月額は11万円となります。その場合、40~64歳で介護保険の第2号被保険者に該当する場合は合計で月額1万6390円、40歳未満と65歳以上であれば合計で1万5516円の社会保険料の負担となります。
 

社会保険加入のメリット

社会保険に加入すると、以下のようなメリットがあります(※1)。
 

1. 厚生年金加入のメリット

基礎年金に加え、厚生年金の給付対象となるため、老齢、障害、遺族の3つの保障が充実します。ここでは、老齢年金を例に充実する保障の内容を具体的に見てみましょう。
 
報酬月額が10万8000円のパート勤務者が支払う厚生年金保険料は、月額1万65円(※3)になります。これを、1年・10年・20年支払ったときに、65歳から受給できる老齢厚生年金の額は図表4のとおりと概算されます。
 
図表4

加入期間 厚生年金保険料 老齢厚生年金(報酬比例部分)の額
1年 月額1万65円 7235円(月額603円)
10年 月額1万65円 7万2349円(月額6029円)
20年 月額1万65円 14万4698円(月額1万2058円)

(※4を基に筆者が算出)
 

2. 健康保険加入のメリット

世帯主が加入する健康保険の被扶養被保険者にはない、病気やけがで会社を休んだときに傷病手当金を受け取れるほか、出産手当金を受けられるようになります(※1)。
 

まとめ

共働きで扶養範囲内の妻の報酬月額が10万8000円ほどであった場合、厚生年金と健康保険に加入すると、月額で約1万6000円の保険料を負担することになります。
 
一方で、厚生年金と健康保険の被保険者となることから、基礎年金に加えて厚生年金が支給されるほか、新たに傷病手当金や出産手当金の支給対象となるメリットがあります。したがって、手取り額を減らさないよう、無理のない範囲で勤務時間を増やすことを検討しましょう。
 

出典

(※1)厚生労働省 社会保険の加入対象の拡大について
(※2)日本年金機構 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内
(※3)全国健康保険協会(協会けんぽ) 令和7年3月分からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表 東京都
(※4)日本年金機構 年金用語集 は行 報酬比例部分
 
執筆者 : 辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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