【改正】遺族厚生年金は「子どもが18歳以上」だと受け取れなくなる!?“50歳の専業主婦”が受け取れる総額に「2000万円」以上の差が出る理由とは

配信日: 2025.09.21 更新日: 2025.10.21
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【改正】遺族厚生年金は「子どもが18歳以上」だと受け取れなくなる!?“50歳の専業主婦”が受け取れる総額に「2000万円」以上の差が出る理由とは
現在の遺族厚生年金は、妻が30歳以上で夫と死別すると、生涯にわたって年金が受け取れます。しかし、2025年6月に成立した改正案では、原則5年間の有期給付に変更されました。この改正により、遺族厚生年金はどのように変化するのでしょうか。
 
本記事では、今回の改正による変化や、改正前と改正後でどのくらい受給額が異なるのか、改正に備えておく必要性などを解説します。
山根厚介

2級ファイナンシャルプランニング技能士

遺族厚生年金とは

日本国民は、20歳になると国民年金に加入します。さらに、会社員や公務員などになると、国民年金に加えて加入するのが厚生年金です。
 
一定期間年金保険料を支払った人が病気などで亡くなると、要件を満たせば残された遺族に年金が支給されます。このうち、国民年金から支給されるのが「遺族基礎年金」、厚生年金から支給されるのが「遺族厚生年金」です。
 

遺族厚生年金の改正内容

今回の改正で、図表1のように遺族厚生年金は大きく変わりました。図表1は子どもがいない場合のものです。
 
図表1

図表1

厚生労働省 遺族厚生年金の見直しについて より筆者作成
 
改正前は、男女で支給条件に大きな違いがありましたが、改正によって男女による違いはなくなりました。また、改正前は遺族の収入が「年間850万円未満」の条件がありましたが、これもなくなっています。
 
60歳未満で死別した場合には、無期給付から原則5年間の給付になったため、有期給付加算として支給される金額は改正前の1.3倍に増えています。
 

50歳の専業主婦が受け取れる遺族厚生年金はどのくらい変わる?

改正によって遺族厚生年金の金額は1.3倍になりましたが、改正前よりは支給総額は減っていることが予想されます。具体的にどのくらい減少するのでしょうか。
 
そこで、子どものいない50歳の専業主婦が夫を亡くした場合、改正前と改正後では受け取れる遺族厚生年金にどのくらいの違いがあるのか計算してみました。遺族厚生年金は夫の老齢厚生年金の3分の4が受け取れるため、夫の老齢厚生年金を60万円と仮定し、50歳の女性の平均余命38年で支給額を考えます。
 

改正前の場合

改正前の場合、1年間で受け取れる遺族厚生年金は「60万円×3/4=45万円」です。38年で受け取れる総額は「45万円×38=1710万円」です。
 
さらに、65歳未満までは「中高齢寡婦加算」として年間62万3800円が受け取れます。50歳からなら14年間受け取れますから、総額は「62万3800円×14=873万3200円」です。これらを合計すると「1710万円+873万3200円=2583万3200円」です。
 

改正後の場合

改正後に1年間で受け取れる遺族厚生年金は、従来の1.3倍のため「45万円×1.3=58万5000円」です。5年間の有期給付で受け取れる総額は「58万5000円×5=292万5000円」です。
 
改正後は、中高齢寡婦加算も段階的に廃止されることから、支給されないものとして想定すると、改正前と改正後では実に2000万円以上の差が生まれます。
 

改正後に備えておく必要はある?

今回の改正によって、遺族厚生年金の支給額にかなりの差が生まれることが分かりました。不安に感じる人も多いかもしれません。
 
ただし、改正後の有期給付は「原則」です。収入が月額約10万円以下の場合は、遺族厚生年金は65歳まで継続給付されます。収入が増えると年金額も徐々に減り、月額20~30万円で継続給付が終了する仕組みです。
 
また、夫の報酬のほうが高い場合は、65歳以降も「死亡分割」という制度で遺族の年金が上乗せされます。したがって、先ほど試算したような極端な差は生まれないでしょう。
 

まとめ

遺族厚生年金は、会社員や公務員で一定期間厚生年金に加入していた人が亡くなった場合に、遺族が受け取れる年金です。今回の改正により、今までは遺族が女性の場合は30歳以上で死別したときは無期給付だったものが、改正後は60歳未満で死別すると原則5年の有期給付になります。
 
単純に試算をすると受け取れる額は大きく異なりますが、改正後も収入が少ないと継続給付が行われることなどから、そこまで極端な差は生まれないでしょう。しかし、万一そのような事態になったときのことを想定して、どのくらいの年金が給付されるのかを計算し、足りない部分があれば早めに備えておくことが大切です。
 

出典

厚生労働省 遺族厚生年金の見直しについて
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
 
執筆者 : 山根厚介
2級ファイナンシャルプランニング技能士

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