45歳、扶養から外れて月収18万円の契約社員になろうか検討中です。私のほうが早く亡くなった場合、夫がもらう遺族年金はどのくらい増えますか?

配信日: 2025.09.23 更新日: 2025.10.21
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45歳、扶養から外れて月収18万円の契約社員になろうか検討中です。私のほうが早く亡くなった場合、夫がもらう遺族年金はどのくらい増えますか?
契約社員として厚生年金に加入すれば、妻が先に亡くなった場合、確かに夫が受け取る遺族厚生年金が増えます。
 
今回のケースでは具体的にどのような計算過程を経て増加するのか、どんなところに注意すべきなのかも交えて、自分のケースの場合でも計算できるように「計算式」を交えて確認します。
柴沼直美

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
http://www.caripri.com

遺族年金の仕組み

日本の遺族年金は主に2種類あります。本章で、確認していきましょう。
 
■遺族基礎年金
国民年金に加入している人が亡くなった場合、18歳未満の子どもがいる配偶者に支給されます(子どもがいない場合は支給対象になりません)。
 
■遺族厚生年金
厚生年金に加入している人が亡くなったとき、その配偶者や条件を満たした遺族に支給されます。妻が亡くなったとき、夫が55歳未満であれば給付なし、55歳以上であれば60歳から無期限で支給されます。厚生年金の加入実績がある場合に支給され、報酬(収入)に応じた金額が加算されます。
 
契約社員として働き厚生年金に加入すると、この遺族厚生年金が増える可能性があります。
 

月収18万円の場合の遺族厚生年金(夫の受給額のイメージ)

月収18万円の契約社員になると、厚生年金加入により遺族厚生年金の対象となります。遺族厚生年金の額は、平均標準報酬額に基づき計算されます。
 
目安ですが、月収18万円の場合、遺族厚生年金は月額換算で約1万8000円と試算されます。ただし、加入期間や働き始めの年齢など条件により変動します。
 

夫にとっての遺族厚生年金受給の要件

遺族厚生年金の受給の要件が、2028年4月から変更になります。変更点については後ほど触れますが、ここではまず現状の要件を確認します。
 
現状では、妻が亡くなって夫が残された場合、夫の年齢が55歳未満ならば給付はなく、55歳以上の場合は60歳から無期限給付です。
 
ただし、子ども(18歳になった年度末まで、つまり高校卒業するまでの子どもという意味です。子どもが障害の状態にある場合は20歳未満)がいない場合です。子どもがいない場合、あるいは子どもがいても18歳年度末(障害の状態にある場合は20歳未満)を過ぎていれば、夫が55歳以上の場合は、60歳を過ぎてからの無期給付となります。
 
ご相談のケースで子どもがいないと仮定すると、扶養から外れて契約社員として厚生年金にも加入すると、夫がもらえる遺族厚生年金が加わるため、年間で数万~数十万円、毎月の遺族年金が数千~1万円程度増える可能性があります。
 

具体的な計算のイメージ

では、具体的な計算式を示して確認しましょう。
 
遺族厚生年金(夫が受給する金額)の具体的な計算の手順を、加入期間を45~60歳までの15年間と仮定します。
 

1. 基本的な計算式

遺族厚生年金のおおよその年金額は、以下の式で計算されます。
 
「遺族厚生年金の年額=平均標準報酬月額×5.481/1000×加入月数遺族厚生年金×4分の3 =平均標準報酬月額×5.481/1000×加入月数」
 
「平均標準報酬月額」とは、厚生年金加入期間の平均の報酬月額(ここでは月収18万円とします)
「加入月数」とは厚生年金加入期間の月数(15年×12ヶ月=180ヶ月)
5.481/1000は法定の給付率(厚生年金の給付係数)です
 

2. 数値をあてはめて年額を算出

●平均標準報酬月額:18万円
●加入月数:180ヶ月(15年 × 12ヶ月)
●給付率:5.481/1000 = 0.005481
●遺族が受け取る場合は報酬比例月額の4分の3

計算結果:
18万円×0.005481×180×0.75=18万円×1.2825= 13万3190円(年額)

 

3. 月額に換算

「13万3190円÷12≒1万1100円(月額)」の増額というイメージです。
 

遺族厚生年金の有期給付

本章では、2028年4月から施行予定の遺族厚生年金の有期給付についても確認しておきましょう。今回は、男性が受給者になる場合を中心にしています。
 

1. 原則5年間の有期給付制度が導入される

現状、妻の死亡時に夫が55歳以上であれば、60歳から終身で受給できますが、55歳未満の夫は原則受給不可です。これが、60歳未満で亡くなった人の遺族(男女問わず)は、原則として5年間の有期給付になります。これまで女性のみが対象だった「有期給付」が、男性にも適用されるようになります。
 

2. 有期給付加算

有期給付期間中は、従来の遺族厚生年金に約1.3倍の加算された金額になります。例えば現状の年金額が100万円なら、130万円程度の支給額になるイメージです。
 

3. 継続給付の仕組み

有期給付終了後も、障害状態にある場合や、単身で収入がひと月あたり10万円以下(年額122万円以下)の条件に該当する場合は“継続給付”が可能です。
 
なお、すでに遺族厚生年金を受給している人、60歳以降に受給権が発生する人、2028年度に40歳以上になる女性には影響はありません。
 

まとめ

今回のケースで夫が受け取る遺族厚生年金は、45~60歳までの15年加入で計算すると、月約1万1000円、年間約13 万円の増加が見込まれます。遺族厚生年金は原則、子ども(18歳の年度末まで)がいる場合や30歳以上の妻なら終身で受給可能ですが、子どもがいない30歳未満の妻や60歳未満の夫は5年間の有期給付となる場合もあります。
 
先ほど触れたように、2028年からはこの支給期間が見直され、一定条件で5年の有期給付の適用対象者が拡大されるため最新の改正情報などには注視しておく必要があります。
 

出典

日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 は行 報酬比例部分
厚生労働省 遺族厚生年金の見直しについて
 
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者

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