67歳の父の死後、母が「年金ほとんど受け取れなかった」とポツリ…結局父は「払い損」だったのでしょうか?“受給額と支払額”を比較
本記事では、生涯の平均年収が500万円で60歳から年金を受給開始したものの、67歳で亡くなってしまった場合の損得について解説します。
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平均年収500万円で60歳から繰上げ受給した場合の年金額
まずは厚生労働省の「公的年金シミュレーター」を使い、以下の条件で年金受給額を試算してみます。
・生年月日:1958年1月1日
・平均年収:500万円
・働き方:会社員
・勤務期間:22歳~60歳
この条件でシミュレーションすると、65歳以降に受け取れる年金額は年間181万円です。
年金は、65歳よりも早く受け取る「繰上げ受給」を選ぶと、原則として1ヶ月につき0.4%減額されます。ただし、1958年1月1日生まれの人は旧ルール(1ヶ月0.5%減額)が適用されます。
つまり、今回の場合は65歳からの年金受給額である年間181万円に30%(0.5%×12ヶ月×5年)の減額率を考慮し、約127万円が年金受給額となります。
60歳から年金受給をはじめ、67歳で亡くなったとすると、年金受給額は60~67歳の8年間です。そのため、生涯で受け取った年金総額は次の通りです。
127万円×8年=1016万円
支払った保険料はどれくらいか?
会社員が負担する厚生年金保険料率は変更を繰り返していますが、今回は分かりやすく最新の保険料率(18.3%、本人負担9.15%)で計算します。
平均年収が500万円の場合、月額の年金保険料は3万7515円です。今回の前提では勤務期間が38年ですので、支払った年金保険料の総額は次の通りです。
3万7515円×12ヶ月×38年=約1711万円
単純比較すると「払い損」
数字だけ比べれば、約1700万円の年金保険料を支払い、約1000万円の年金しか受け取れていないため「払い損」と感じるのは自然な反応です。しかし、年金は単なる貯金ではなく、社会全体で「長生きリスク」を分担する保険的制度である点を忘れてはいけません。
もし同じ人が90歳まで生きた場合を、同じ年額(繰上げ後の127万円)で計算すると、127万円×30年=約3810万円を受け取ることになります。短命だと損になることもありますが、長生きだと大きく得をすることもあるでしょう。
そのほかに考慮すべき点
今回は条件をかなり簡略化しましたが、年金制度全体で見ると考慮すべき次のような点もあります。
・遺族年金や障害年金など、万一の保障も制度に含まれる。
・保険料率は年ごとに変動しており、ここでは単純化のため最新率で計算している。実際の「払い込んだ額」は世代や加入期間で上下する。
・繰上げ受給は受け取り開始を早める代わりに終身で減額されるため、働き方や健康状態、家計の余裕によって判断が変わる。
まとめ
今回の前提(1958年生まれ、平均年収500万円、60歳繰上げ受給で30%減)では、67歳で亡くなったケースは数字だけ見ると「払い損」に見えます。
しかし、年金は長生きを保障する制度であり、損得は寿命次第で大きく変わります。短期間の受給で損をしたように感じるのは当然かもしれませんが、年金制度そのものが「生涯のリスクを社会で分かち合う仕組み」という点は認識しておきましょう。
出典
厚生労働省 公的年金シミュレーター
日本年金機構 年金の繰上げ受給
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和7年度版)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
