「年収600万円」だった父が死亡…母は「遺族年金+生命保険1500万円」で生活できますか? 兄妹で援助すべきでしょうか?

配信日: 2025.09.28 更新日: 2025.10.21
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「年収600万円」だった父が死亡…母は「遺族年金+生命保険1500万円」で生活できますか? 兄妹で援助すべきでしょうか?
働いていた父親が亡くなり、母親が一人暮らしになると、子どもとしては母親の生活が心配になるのではないでしょうか。特に遺族年金で生活費が賄えるかなど、経済的な部分は気になるでしょう。
 
本記事では、年収600万円の父親が亡くなった際、持ち家に住んでいる専業主婦の母親が遺族年金と生命保険金1500万円で暮らしていけるのか試算します。さらに子どもの母親への援助についても考えてみますので、参考にしてください。
松尾知真

FP2級

年収600万円の夫が亡くなった場合、遺族年金はどれくらい?

遺族年金を試算する前提として、夫は妻と同い年で22歳から31年間働いた53歳で亡くなり、年収は600万円だったと仮定します。また、母親は持ち家で暮らし、子どもは成人し別世帯とした上で、計算してみましょう。
 
遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2つがあります。ただし、遺族基礎年金は子どもや子どものいる配偶者が受給対象であり、子どもがすでに成人している場合は受給できません。
 
遺族厚生年金に関しては、厚生年金に加入していた人の遺族であれば、子どものいない配偶者でも受給可能です。受給額は亡くなった人の厚生年金報酬比例部分の4分の3になります。
 
そこで、報酬比例部分を、2003年4月以降の計算式「平均標準報酬額×5.481÷1000×加入月数」を用いて計算してみましょう。平均標準報酬額は600万円÷12=50万円、加入月数は31年×12ヶ月=372ヶ月です。
 
そのため、報酬比例部分は50万円×5.481÷1000×372ヶ月=約101万9000円になります。その4分の3である遺族厚生年金は、約76万4000円を受給可能です。
 
さらに、配偶者が40歳から65歳未満で子どもが独立していると「中高齢寡婦加算」として年62万3800円が加算されます。受給額の合計は約76万4000円+62万3800円=約138万8000円となり、月額で約11万5000円です。
 
なお、遺族厚生年金は5年有期給付への見直しが予定されていますが、2028年時点で40歳以上の女性には現行制度が適用され、一生涯受給できます。また、中高齢寡婦加算は65歳に到達するまでですが、それ以降は自身の老齢基礎年金を受給可能です。
 
もし、20歳から60歳まで保険料を納めていれば、老齢基礎年金は満額の83万1696円(令和7年度)になります。65歳以降は遺族厚生年金と併せて約159万5000円、月に直すと約13万3000円がトータルの年金受給額です。
 

単身世帯に必要な生活費は?

次に、母親が必要な生活費を想定します。総務省の「家計調査報告」によれば、単身世帯(平均年齢58.7歳)の月平均消費支出は16万9547円、65歳以上の単身無職世帯に限定すると月14万9286円です。
 
そのため、65歳までは月々約16万9000円-約11万5000円=約5万4000円の生活費が不足します。53歳からの12年間での不足額合計は5万4000円×12ヶ月×12年=777万6000円です。つまり、生命保険金1500万円は、65歳時点では720万円ぐらいに半減するでしょう。
 
年金受給が始まる65歳以降も、月々約14万9000円-約13万3000円=約1万6000円の不足が発生します。女性の平均寿命87歳まで存命すれば、65歳から22年間での不足額累計は1万6000円×12ヶ月×22年=422万4000円です。
 
この計算では、まだ300万円ほど生命保険金が残るため、「生命保険金や年金で暮らせる」と思う人もいるかもしれません。しかし、これは純粋な生活費だけを考えた試算に過ぎません。
 
そもそも何歳まで生きるのかは誰にも分かりませんし、急な出費に加え、老後は介護費用など一定の備えも必要です。このように考えると、この備えだけで一生暮らしていくのは、少し難しいかもしれません。
 

母親に必要な支援は

子どもたちは母親をどのように支えればいいのでしょうか。試算からも、母親が安心して暮らすには、多少の経済的援助は必要でしょう。
 
さらに老後の一人暮らしは、体力的にも精神的にも不安がつきまとうものです。状況によっては、同居・近居などで身の回りを世話したり、日常的な相談相手になったりすれば、母親としても心強いでしょう。
 
遠方に住んでいたとしても、可能な範囲で様子を確認するなど、コミュニケーションを取り続けることも重要です。介護が必要な状況になれば、親族によるケアが欠かせないことは言うまでもありません。
 

まとめ

年収600万円の父親が亡くなり、母親が一人になっても、持ち家で生命保険金が1500万円ぐらいあれば、遺族年金などである程度生活を維持できるかもしれません。しかし、老後の備えとしては少し心もとない印象もあり、子どもによる経済的な支援が必要かもしれません。
 
また、高齢になると肉体的な衰えや認知症などのリスクも大きくなり、子どもの支援は欠かせなくなります。まずは、母親が今後どのように暮らしていきたいのか、話を聞いてみてはいかがでしょうか。
 

出典

厚生労働省 遺族厚生年金の見直しについて
総務省統計局 家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要
 
執筆者 : 松尾知真
FP2級

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