母が亡くなったあとに“年金”が振り込まれていました。この分は「返納」しないといけないのでしょうか? それとも娘であれば受け取っていいのでしょうか?

配信日: 2025.09.30 更新日: 2025.10.21
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母が亡くなったあとに“年金”が振り込まれていました。この分は「返納」しないといけないのでしょうか? それとも娘であれば受け取っていいのでしょうか?
家族が亡くなったあと、銀行口座に年金が振り込まれていると驚く方は多いでしょう。「このお金は返さないといけないのか」「遺族として受け取れるのか」と迷ってしまうのも無理はありません。年金は本人の生存を前提とした制度ですが、未払い分を遺族が受け取れる仕組みもあります。
 
本記事では、亡くなったあとに振り込まれた年金の扱いについて、返納が必要な場合と受け取れる場合を整理し、対応の流れを解説します。
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高橋庸夫

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

亡くなったあとに振り込まれた年金は「返納」が必要なことが多い

年金は本人に支給されるもので、受給者が亡くなった時点で受給権は消滅します。したがって、死亡後に振り込まれた分は過払いとなり、原則として返還が必要です。
 
例えば、母が3月15日に亡くなったのに、4月に2ヶ月分の年金が振り込まれていた場合、このうち3月分は本来受け取れるはずのものですが、4月分は過払いになります。この過払い分は、後日日本年金機構や年金事務所から返還の案内が届きます。放置して使ってしまうと、不正受給とみなされる可能性があるため注意が必要です。
 
返納の方法は、案内に従って金融機関の口座から振り込む形が一般的です。返納を求められると驚いてしまいますが、あくまで制度上の整理であり、特別に罰則が科されるわけではありません。誠実に対応すれば、問題はありません。
 

「未支給年金」は遺族が受け取れる

一方で、亡くなった人が本来受け取るはずだったのに、まだ支給されていなかった年金があります。これを、「未支給年金」と呼びます。
 
例えば、母が亡くなったのが3月15日で、3月分の年金がまだ振り込まれていない場合、この分は未支給年金となります。未支給年金は、配偶者や子どもなど死亡時に故人と生計を共にしていた一定の遺族が請求できる仕組みです。
 
娘であっても、母と同居していた、または生計を共にしていた場合には請求の対象者になれます。請求の際には、戸籍謄本や住民票、生計維持関係を証明する書類(公共料金の領収書や通帳の記録など)を提出します。
 
ここで重要なのは、未支給年金は「自動的に振り込まれるものではない」という点です。遺族が所定の手続きをして、はじめて受け取ることができます。未支給年金請求をしないまま5年経過すると時効消滅となり、国庫に帰属することになります。
 
もし、手続きをしていないのに年金が振り込まれていた場合は、それは未支給年金ではなく「過払い分」と扱われ、返納が必要になるケースが多いので注意しましょう。
 

遺族年金は公的年金の別制度

さらに混同しやすいのが、「遺族年金」です。遺族年金は、国民年金や厚生年金に加入していた人が亡くなったとき、その遺族が生活を守るために支給される年金制度です。公的年金の遺族給付には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があります。
 
遺族基礎年金は、子のある配偶者または18歳到達年度の3月31日までの子に支給されます(障害者の場合は20歳未満まで)。
 
一方、遺族厚生年金は配偶者や子、条件を満たせば父母・孫・祖父母まで対象が広がることがあります。受給には、生計維持関係や婚姻状況(再婚の有無)が重要で、再婚した場合は通常受給権を失います。
 
また、制度改革の一環として、2028年4月から 遺族厚生年金の制度が見直され、子のいない配偶者には原則5年の有期給付とする仕組みが導入される見込みです。
 
娘が成人して独立している場合、原則として遺族基礎年金も遺族厚生年金も受給できません。
 
ただし、制度上定められた例外条件(障害がある子で年齢要件内、実質的な生計維持関係が認められるケースなど)を満たす場合は受給できる可能性は残りますが、あくまで例外的扱いであり必ず認められるものではありません。条件に当てはまるかどうか、年金事務所で確認することをおすすめします。
 

手続きの流れと注意点

母が亡くなったあとに年金が振り込まれていたら、まずやるべきことは「年金受給権者死亡届」を日本年金機構の年金事務所や年金相談センターに提出することです。これを出さないと年金の支給が止まらず、過払いが続いてしまいます。死亡届は市区町村役場や年金事務所で手続きしますが、その際に国民年金関連手続きを行う場合があります。
 
次に、振り込まれていた金額を確認しましょう。死亡月分までの未支給年金なのか、それ以降の過払いなのかを区別する必要があります。過払い分は返納、未支給分は請求という正反対の対応になります。
 
未支給年金を請求する場合、請求期限があります。原則として、母が亡くなった翌日から5年以内に請求する必要があり、期限を過ぎると権利が消滅してしまいます。
 
また、返納や請求の手続きを行う際には、多くの書類が必要です。戸籍や住民票、金融機関の書類など、取得に時間がかかるものもあります。早めに準備を始めることが、スムーズな手続きにつながります。
 

親の死後に振り込まれた年金は内容を見極めて正しく手続きしよう

母が亡くなったあとに振り込まれた年金は、死亡後に誤って支給された分であれば返還が必要となり、一方で亡くなった月までの未支給分であれば遺族が請求して受け取れる可能性があります。また、遺族年金という別の制度もあり、条件に該当すれば継続的に支給されるケースもあります。
 
大切なのは、振り込まれたお金が「過払い年金年金」なのか「未支給年金」なのか、それとも「遺族年金」の対象なのかを正しく見極めることです。返納と請求は正反対の対応になるため、迷った場合は早めに年金事務所へ相談し、必要な手続きを確認して進めることが安心につながります。
 

出典

日本年金機構 年金を受けている方が亡くなったとき
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
厚生労働省 遺族厚生年金の見直しについて
日本年金機構 Q 年金受給者が亡くなりました。何か手続きは必要ですか。
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
 
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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