定年後に再就職し年収が500万円の父。年金は「全額」受け取れるのでしょうか?
この記事では、日本年金機構の公式資料をもとに「在職老齢年金」のしくみや具体的なケースについて解説していきます。
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定年後働く人の年金はどうなる?
定年後、パートや再就職で厚生年金に加入して働く場合、「在職老齢年金制度」によって年金の一部が支給停止になる可能性があります。
「在職老齢年金」とは?
「在職老齢年金」とは、「老齢厚生年金」の受給権がありながら、厚生年金に加入し働く人に対して、収入の一部または全部を支給停止にする制度です。
「老齢厚生年金」は、厚生年金に加入して働いていた人が、原則65歳から受け取れる年金です。老齢厚生年金を受け取れる年齢になった時に、再就職して厚生年金に加入し働き続け、収入が一定額を超えると「在職老齢年金」が適用されます。
老齢厚生年金の支給停止基準は?
老齢厚生年金の支給停止基準は、給与と賞与按分(ボーナスを1ヶ月ごとの金額に換算した分)と老齢厚生年金の合計が一定額以上になるかどうかで決まります。
2025年度時点では、老齢厚生年金の支給停止基準は月額51万円です。1ヶ月分の給与と賞与按分の合計である総報酬月額と老齢厚生年金が合わせて51万円を超えた場合、超過分に応じて支給額が調整されるのです。51万円未満の場合は、老齢厚生年金が満額で受け取れます。
定年後に年収500万円の年金シミュレーション
定年後に再就職し、年収500万円(賞与按分込み)で働く場合に受け取れる年金をシミュレーションしてみましょう。
年収を月額にすると、500÷12=約41万6000円です。総報酬月額(月収+賞与按分)と老齢厚生年金の合計が、51万円を超えたときは在職老齢年金規定に基づいて、超過分の半額が支給停止されます。
老齢厚生年金の受給額は人により異なるものの、月15万円だと仮定すると、総報酬月額41万6000円+15万円で合計56万6000円となります。
支給停止の基準額は51万円のため。超過分の5万6000円の半額である2万8000円が支給停止となり、老齢厚生年金15万円のうち12万2000円が支払われます。つまり年収500万円程度の場合、老齢厚生年金の額によって支給停止になる可能性が充分あり得るのです。
年金を満額受け取るコツとは?
退職後も厚生年金に加入して働きながら、在職老齢年金の支給停止対象にならずに年金を満額受け取るには、収入を調整するのが有効です。ただし調整を最優先していると、将来的に受け取れる年金額が少なくなる可能性もあるため注意しましょう。
収入を調整して在職老齢年金を回避
在職老齢年金を回避して、働きつつも年金を満額受け取るには、総報酬月額と老齢厚生年金が合わせて51万円をオーバーしないように調整する必要があります。雇用形態がパートなどであれば月収上限を設定して、勤務時間・日数を決めるとよいでしょう。
厚生年金の加入を続けるのはメリット大
退職後も厚生年金に加入し続けて働く場合、収入が多ければ在職老齢年金制度によって年金を満額受け取ることはできません。
ただし、満額での受給を優先しすぎると、将来的に年金受給額が少なくなる可能性もあります。厚生年金は、加入していた期間と報酬額によって給付額が計算されるため、退職後も厚生年金に加入して働き続けることは、将来の年金額アップにつながるのです。
具体的に、退職後に再就職して年収500万円(月収+賞与按分で約41万6000円)で厚生年金に加入するケースをみていきましょう。
将来の老齢厚生年金の受給額は「標準報酬月額×5.481/1000×加入月数」で計算でき、標準報酬月額を約42万円で計算すると、加入1年ごとにおよそ2万7600円(月額2300円程度)が将来の年金に上乗せされる計算です。
定年後も働きながら賢く年金を受け取ろう
在職老齢年金は、厚生年金加入者の収入が月51万円を超えるときに老齢厚生年金の一部または全部が支給停止される制度です。退職後に再就職して年収500万円程度の場合、収入月額と老齢厚生年金の受給額を合計した金額が月51万円を超過すると、老齢厚生年金との差額の半分が支給停止になる可能性があります。
51万円を超えないように勤務時間や月収を調整すれば、収入を得ながらも満額で年金を受け取れます。ただし、厚生年金の加入期間や報酬が多いほど、将来的に受け取れる年金額は増えるため、収入と年金のバランスを意識しつつ働くのがおすすめです。
出典
日本年金機構 在職老齢年金の支給停止の仕組み~働きながら年金を受ける時の注意事項~
日本年金機構 60歳以降も引き続き勤めます。勤めていても年金は受けられますか。
日本年金機構 年金額はどのようなルールで改定されるのですか。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
