会社員のiDeCoの“掛け金上限”が「2万3000円→6万2000円」に増額決定! 年収600万円の会社員が「満額掛けたとき」の節税額はどれだけ増える?
2025年6月に成立した法改正により、会社員の掛け金の上限はこれまで月2万3000円(企業型年金加入者などは2万円)だったものが、2027年には月6万2000円へと大幅に引き上げられる予定です。
iDeCoの掛け金は全額所得控除の対象となるため、掛け金を増やせばその分だけ節税につながります。とはいえ、「実際どれくらいの節税になるのか」と疑問に思う人も多いでしょう。
本記事では、iDeCoなど私的年金制度の見直し内容と、年収600万円の会社員を例にして、掛け金増額によってどの程度の節税効果があるのかを解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
目次
私的年金制度の見直しスケジュール
今回の法改正では、企業年金やiDeCoといった私的年金制度が段階的に拡充されます。厚生労働省の資料によると、施行スケジュールは次の通りです。
・2026年4月1日から:企業型DC(確定拠出年金)の掛け金額引き上げとマッチング拠出が事業主掛金を超えてはいけないという制限を撤廃、簡易型DC制度の通常の企業型DCへの統合
・2027年分の所得控除から:iDeCoの掛け金上限の引き上げ、加入可能年齢の引き上げ(現行の60歳から70歳へ)
会社員の掛け金上限が月2万3000円(企業年金加入者は2万円)から月6万2000円へと大幅に拡大されます。老後資産形成の選択肢が広がる大きな転換点となるのです。
会社員のiDeCo掛け金が月6万2000円に! 節税効果は?
iDeCoのメリットの1つに掛け金の全額が所得控除になることがあげられます。これにより、毎年支払う所得税と住民税が軽減されるのです。
2027年から掛け金の上限が月に2万3000円から6万2000円に増えます(企業型年金未加入者の会社員の場合)。3万9000円、年間46万8000円増えるわけですが、掛け金を増やすことでどれほど税金が軽減されるのでしょうか?
年収600万円であれば、多くの場合所得税率は10%、住民税率は所得にかかわらず10%です。つまり、46万8000円の所得控除を受けることで所得税と住民税がそれぞれ4万6800円ずつ軽減されます。合わせて9万3600円、20年間続ければ、単純計算で約187万円の税負担を減らせる計算になるのです。
非課税運用で資産形成はさらに有利に
iDeCoの魅力は所得控除による税負担軽減だけではありません。
iDeCoの掛け金は自身で金融商品を選び運用することになりますが、これで得た利益にも税金がかからない点も大きな特徴です。
例えば40歳から20年間、掛け金を3万9000円増額して積み立てた場合を想定します。新たに拠出できる資金の総額は936万円です。
仮に年利3%で運用できれば344万円、5%で運用できれば667万円の運用益が見込めますが、通常資産運用で得た利益には20.315%(復興特別所得税含む)の税金がかかります。3%運用の場合は約70万円、5%運用の場合は約136万円となりますが、iDeCoで運用することでこれが全て免除になるのです。
改正後のiDeCoをどう活用すべきか
ただしiDeCoには注意点があります。iDeCoは原則60歳まで引き出せないため、急な出費には対応できません。また元本割れのリスクを伴います。
節税や運用益非課税のメリットばかりを見て掛け金額を増やしてしまうと生活が立ち行かなくなるかもしれません。生活資金や予備資金と切り分けた上で、長期の余裕資金を拠出することが前提となるのです。
2026年からは企業型DCの改正、2027年からはiDeCoの拡充が順次始まる予定です。法改正のスケジュールを把握しつつ、どのように資産形成に活用するかを今から検討しておきましょう。
iDeCo拡充で老後資金づくりのチャンス広がる
今回の法改正により、iDeCoの拠出限度額は大幅に引き上げられます。年収600万円の会社員であれば、掛け金を増額することで新たに年間9万円以上の節税が可能です。
とはいえ、iDeCoの掛け金は60歳まで引き出せないというデメリットもあり、節税効果や運用益非課税のメリットだけで掛け金を引き上げるのにはリスクがあります。まずは2027年分からの制度拡充を視野に入れ、自分に合った資産形成プランを早めに立てておくと良いでしょう。
出典
厚生年金 年金制度改正法が成立しました
厚生労働省 私的年金制度の主な改正事項の施行スケジュール【予定】(2025 年7月時点)
執筆者 : 浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
