国民年金保険料の追納を先延ばしにしていたら、父から「保険料が高くなるから早く追納した方がいい」と言われました。どういうことでしょうか?
本記事では、追納を先延ばしにすることで支払う保険料が高くなる理由と追納制度のメリット・注意点、そして判断のための視点を解説します。
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目次
国民年金保険料の追納とは? 制度の仕組みを押さえよう
国民年金には、保険料を支払うのが難しい場合に「免除」や「納付猶予」、「学生納付特例」といった制度を利用できるケースがあります。
これらの制度を利用すると、当時は保険料負担を軽くできますが、その期間中の保険料を支払っていないと、将来の年金受給額には反映されません。そこで、経済的に支払い可能になったときに、過去一定期間分を後から納める制度が「追納制度」です。
追納できる対象期間には制限があり、日本年金機構によれば、追納が承認された月の前10年以内の免除や猶予などの期間が対象となります。
また、免除や猶予の承認を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降に保険料を追納する場合は、「加算額」が上乗せされる仕組みがあります。この「加算額」が、今回のケースで父親が言っている「保険料が高くなる」点の中心的な理由となると考えられます。
なぜ「追納が高くなる」のか? 加算額の仕組みと影響
前述の通り、追納を遅らせると、当時の保険料に追加して加算額が上乗せされるケースがあります。具体的には、免除・猶予の承認を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降の追納時に、その経過期間に応じた加算額が上乗せされる制度です。
例えば、令和7年度中に追納する場合、令和5年度・令和6年度の保険料には加算額はありませんが、令和4年度より前の追納に関しては加算額が上乗せされます。加算額はおおむね月あたり150円~340円程度で、追納が古い期間になるほどその加算率も大きくなる傾向があります。
この加算額が、「追納が高くなる」主因です。つまり、追納を先延ばしにするほど、同じ免除等期間を納め直すのに要する費用が増える可能性がある、という構図です。
追納のメリットと注意点を知って選択しよう
追納には、メリットもあれば注意点もあります。以下、それぞれを整理してみます。
・メリット:年金額の上乗せと節税
追納をすることで、将来受け取る老齢基礎年金額を増やすことができます。日本年金機構によれば、全額免除期間を1年間分追納すれば年金が年間で約1万円、納付猶予や学生納付特例期間を1年間分追納すれば年間で2万円ほど増えるとされています。
また、追納した保険料は「社会保険料控除」の対象となるため、その年の所得税・住民税において控除を受けられ、節税効果が発生します。
・デメリット・注意点:費用負担と追納不可能な期間
追納には一時的にまとまった負担がかかるという問題があります。特に古い年度分を追納する際は加算額が上乗せされるため、支払額が思ったより高くなる可能性があります。
また、追納できるのは免除・猶予された期間のうち10年以内のものに限られ、それを超える期間は追納できません。
さらに、追納を始める際は、原則として古い期間の分から納める必要がある点にも注意が必要です。
まとめ:「早めの追納」が勧められる理由と判断のヒント
今回の事例で父親が言った「保険料が高くなるから早く追納した方がいい」という言葉は、まさに加算額の存在を指していると考えられます。追納を先延ばしにすると当時の保険料に加算額が上乗せされ、結果的に支払額が増える可能性があるためです。
ただし、追納が常に得になるとも限りません。家計の状況や対象期間の長さ、年齢、資金の余裕などを踏まえ、慎重に判断することが大切です。免除・猶予期間のうち10年以内のものであれば追納できますが、早めに行うほど加算額が少なく、負担も軽く済みます。
追納額と将来増える年金額、節税効果のバランスを考え、無理のない範囲で計画的に行うのが理想です。余裕があるときに早めに対応しておくことが、長い目で見て安心につながるでしょう。
出典
日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
