糖尿病で「障害年金」の対象になるという夫。年収600万円ほどですが、「人工透析」が必要だといくら受給できるのでしょうか?

配信日: 2025.10.16 更新日: 2025.10.21
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糖尿病で「障害年金」の対象になるという夫。年収600万円ほどですが、「人工透析」が必要だといくら受給できるのでしょうか?
糖尿病は生活習慣病の1つであり、厚生労働省の調査によると、「糖尿病が強く疑われる者」の割合は男性16.8%、女性8.9%となっています。糖尿病は進行すると眼・腎臓・神経に障害を及ぼす合併症を引き起こすケースもあり、日常生活や仕事に大きな影響が出ることもあります。
 
実はこうした場合、障害年金を受け取れる可能性があるのをご存知でしょうか。本記事では障害年金の制度について、人工透析している場合の等級や受け取れる障害年金の金額などについて解説します。
石井ヒロユキ

FP2級、AFP、社会保険労務士、第1種衛生管理者

糖尿病で障害年金を受給できるケースとは?

障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の人も含めて受け取ることができる年金です。
 
糖尿病と診断されてすぐに障害年金の対象になるわけではありませんが、糖尿病が進行し、下肢切断や腎不全による人工透析など、生活や仕事に大きな支障をきたす合併症の場合は障害年金の認定対象となることがあります。
 
障害年金は障害の重さに応じて1級~3級の障害等級が定められており、人工透析を受けている場合は、腎疾患による障害として原則、障害等級2級に該当します。ただし、ほかの合併症や日常生活の状況に応じて、1級と認定されることもあります。
 
そのほかの合併症として、「糖尿病性網膜症の場合は眼の障害の認定基準」により、「糖尿病性壊疽を合併したもので、運動障害を生じているものは肢体の障害の認定基準」により、「糖尿病性神経障害は、激痛、著明な知覚の障害、重度の自律神経症状等があるものは、神経系統の障害の認定基準」により、それぞれ認定するとされています。
 

人工透析をしている場合、障害年金はどのくらいの金額を受給できる?

障害年金は障害基礎年金と障害厚生年金の2種類あります。初診日(障害の原因となった病気やけがについて、初めて病院で医師等の診察を受けた日)時点で厚生年金保険に加入しており、障害等級2級に該当した場合、障害基礎年金と障害厚生年金はどの程度受給できるのでしょうか?
 
年収600万円(標準報酬月額は50万円)で厚生年金加入期間が25年未満の男性会社員、生計を維持されている65歳未満の配偶者がいるケースで計算してみます。なお、障害厚生年金額は計算の簡略化のため、平均標準報酬額は50万円、計算式は平成15年4月以降の加入期間における計算式を使用します。


障害基礎年金:83万1700円(子どもがいる場合は加算あり)
障害厚生年金:約82万円+配偶者加算(23万9300円)=約106万円

つまり合計で年間約190万円の障害年金が受け取れる計算になります。さらに妻だけでなく、子ども(18歳になった後の最初の3月31日までの子ども、または20歳未満で障害等級1~2級の状態にある子ども)が1人いる場合の受給額は年間約214万円になります。
 
しかし、年収600万円の会社員でも障害年金を全額受給できるのでしょうか?
 
実は所得制限のある障害年金は20歳前に傷病を負った場合の「20歳前の傷病による障害基礎年金」だけです。そのため、年収600万円の会社員でも要件を満たせば、障害年金を全額受給することができます。
 
また業務上の災害により労災保険からも給付がある場合は労災保険が減額されるケースや健康保険から同一事由による傷病手当金を受給している場合などは、傷病手当金が減額または支給停止となりますので、該当する場合は注意が必要です。
 

まとめ

糖尿病による合併症によっては障害年金の対象となり、特に人工透析を受ける場合は原則障害等級2級に認定されます。また障害年金は働きながら受け取ることもでき、扶養家族がいる会社員は年間200万円前後を受給することも可能です。
 
障害年金の請求は専門的で必要な書類なども個人によって異なるので、お近くの年金事務所や障害年金に詳しい社会保険労務士に相談するのが良いでしょう。
 

出典

厚生労働省 令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要
厚生労働省 国民年金・厚生年金保険 障害認定基準
 
執筆者 : 石井ヒロユキ
FP2級、AFP、社会保険労務士、第1種衛生管理者

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