退職して収入が減り「国民年金の全額免除」を受けました。この場合、将来の年金額は“どのくらい減る”のでしょうか?

配信日: 2025.10.20 更新日: 2025.10.21
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退職して収入が減り「国民年金の全額免除」を受けました。この場合、将来の年金額は“どのくらい減る”のでしょうか?
国民年金の保険料免除を受けた場合、その期間は「加入期間」としてはカウントされますが、将来の年金額に反映される割合が減る仕組みとなっています。ちなみに2025年度の老齢基礎年金の満額は83万1700円(年額)で、これは40年(480ヶ月)すべての保険料を「全額納付」した場合に受け取れる額です。
 
本記事では「全額免除制度と将来の年金額への反映率」や「国民年金保険料が全額免除になる条件」について解説します。
水上克朗

ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー

全額免除制度と年金額への反映率

国民年金は経済的に払えないとき、申請により免除を受けられます。例えば、所得が低い(前年所得が基準以下)、失業した(失業特例)、生活保護や障害年金受給など(法定免除)などです。このような場合に、「全額免除」が受けられます。
 
なお、免除期間は受給資格期間には反映されますが、将来の年金額は「一部だけ反映」されます。ちなみに全額免除の場合、将来の年金額への反映率は2分の1(50%)となっています。
 
具体的には、
2025年度の基礎年金の満額:83万1700円(年額)
 
・1年間(12ヶ月)だけ全額免除の場合
→83万1700円×(1年/40年)×50%=1万396円/年が将来の年金に加算されます。
つまり、通常より年額で約1万円減る計算となります。
 
・10年間すべて全額免除の場合
→83万1700円×(10年/40年)×50%=10万396円/年が将来の年金に加算されます。
つまり、通常より年額で約10万円減る計算となります。
 
・40年間すべて全額免除の場合
→83万1700円×50%=41万5850円/年が将来の年金に加算されます。
つまり、通常より年額で約41万円減る計算となります。
 
なお、全額免除でも免除された保険料を後から納める「追納」を10年以内に行えば、満額としてカウントされます。また、追納すればその期間は100%反映され、当時の保険料に経過期間に応じてつく「加算金」(利息)が少なくてすみます。
 
また、収入が少ない若年者向けに「若年者納付猶予(20~50歳未満)」や学生で収入が少ない場合に「学生納付特例」がありますが、これらは「免除」ではなく「猶予」扱いで将来の年金額に反映されません。
 

国民年金保険料が全額免除になる条件

本章では、国民年金保険料が全額免除になる条件をみていきましょう。
 

1. 所得基準による全額免除

前年の所得が低く、保険料を支払うのが困難な場合に認められます。所得基準は、「(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円」以下であることです。
 
例えば、単身者の場合は「(0+1)×35万円+32万円=67万円」となり、前年所得67万円以下の方が対象となります。
 
夫婦2人世帯で、配偶者1人のみを扶養している場合は、「(1+1)×35万円+32万円=102万円」となり、102万円以下の所得の方なら全額免除の対象となります。
 

2. 失業特例による全額免除

退職や失業で収入がなくなった場合、前年所得に関係なく、ゼロ扱いで全額免除が可能です。
 
勤務先が倒産して退職した、58歳のAさんを例にみていきましょう。
 
Aさんは雇用保険を受給していますが、前年は年収400万円であったため、所得基準では免除対象外でした。ただし、失業特例により前年所得をゼロとみなされ、全額免除が受けられます。
 
なお、雇用保険の離職票や雇用保険受給資格者証の提出が必要です。
 
また、免除される期間は、原則、申請した年度(7月~翌年6月まで)の1年間です。翌年度以降も失業状態が続く場合は、毎年度更新して申請が必要です。
 

3. 法定免除

生活保護を受けている場合や、障害年金を受けている場合に適用されます。
 
対象者は、国民年金第1号被保険者(20~60歳未満)です。任意加入期間(60~65歳)の場合は、原則、免除制度はありません。
 

まとめ

国民年金全額免除の場合、将来の金額が1年間で約1万円減るイメージです。国民年金保険料の免除を受けることによる最大のデメリットは、将来受け取る老齢基礎年金の年金額が満額より少なくなることです。
 
ただし、追納を10年以内に行えば満額に戻せます。追納の手続きは年金事務所で簡単にでき、分割払いも可能です。将来の年金額を増やしたい場合は、計画的に追納を検討するとよいでしょう。
 

出典

日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度
 
執筆者 : 水上克朗
ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー

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