自分には親族がいません。もし独身のまま亡くなった場合、もらえるはずだった年金はどこに行くのでしょうか?
この疑問は、特に単身者や子どもを持たない人にとって、決してひとごとではありません。長年にわたって支払ってきた年金が、結局は“誰のものにもならない”のではないかという不安を抱く方も多いでしょう。本記事では、独身者が亡くなった場合の年金の行方について、分かりやすく解説します。
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年金は「保険」の仕組みで成り立っている
まず前提として理解しておきたいのは、年金制度は「積立」ではなく「保険」であるという点です。
年金というと「自分が払った分が戻ってくる」と思われがちですが、実際にはそうではありません。国民年金や厚生年金は「現役世代が高齢者を支える」仕組みで、保険料を支払うことで将来の“生活保障”を得る制度です。
つまり、年金は個人の資産というよりも、「社会全体の助け合い」に近い性質を持っています。そのため、受け取る前に亡くなった場合でも、「払い損」というよりは「他の誰かを支えた」と考える仕組みなのです。
亡くなった後に受け取れる年金はあるのか?
では、独身のまま亡くなった場合、年金の支払いが何らかの形で戻ってくる可能性はあるのでしょうか。
1. 遺族年金
まず思い浮かぶのが「遺族年金」です。しかし、遺族年金を受け取れるのは配偶者や子ども、両親など一定の遺族に限られています。遺族がいない場合、この年金は支給されません。つまり、独身で親族もいない人が亡くなった場合、遺族年金は発生しないのです。
2. 未支給年金
もうひとつ「未支給年金」という制度があります。これは、亡くなった月までの年金がまだ支払われていない場合に、その分を受け取る制度です。ただし、これも請求できるのは同居していた親族などに限られます。
身寄りのない独身者の場合、この請求権者がいないため、結局は支給されず国庫に戻ることになります。
「払い損」ではないという考え方
「自分が支払ってきた年金が結局戻らないのは不公平では?」と感じるかもしれません。
しかし、年金制度は「社会全体で老後の生活を守る」ための共助の仕組みです。自分が受け取れなくても、その保険料は今の高齢者や障害者、遺族を支える資金となっています。
つまり、年金を支払うことは「自分のため」だけでなく、「誰かの生活を支える社会的な役割」を果たしているのです。
将来に備えるためにできること
独身で親族がいない場合、年金が遺族に渡らないことを前提に、自分の老後資金や死後の手続きについて備えておくことが重要です。
1.私的年金や貯蓄の活用
公的年金だけでなく、個人年金保険やiDeCoなどの制度を利用して、自分のための老後資金を確保しましょう。
2.エンディングノートの作成
亡くなった後の手続きや財産の扱いを整理しておくことで、万一の際もスムーズに対応できます。身寄りがない場合、行政や信頼できる団体に死後事務を委託することも可能です。
3.信託や遺言の活用
財産を社会貢献に使いたい場合、「遺贈寄付」や「信託制度」を利用して、自分の意思を反映させることができます。
自分の年金は、誰かの明日を支えている
独身で親族がいない人が亡くなった場合、支払ってきた年金は基本的に遺族には渡らず国庫に戻るという仕組みです。しかし、それは「無駄になった」ということではなく、社会全体を支える大切な一部となっています。
同時に、自分の老後や死後の準備をしっかり行うことで、「誰にも迷惑をかけず、自分らしく生ききる」人生設計を描けます。
出典
日本年金機構 学生のための知っておきたい年金のはなし
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
