更新日: 2019.08.27 厚生年金
年上妻の「振替加算」と「加給年金」の違い、手続きの方法を解説
厚生年金ということばを知っていても、「加給年金」や「振替加算」になると、知っている方は少ないと思います。特に、年上妻は「振替加算」の支給漏れの可能性があります。対応策をお伝えします。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
厚生年金は2種類ある
厚生年金には、「65歳以降終身支給される老齢厚生年金」と「60歳から64歳の間のみ支給される老齢厚生年金」(特別支給の老齢厚生年金)があります。ただし、特別支給の老齢厚生年金は、さらに全部受け取れる人と一部しか受け取られない人がいます。
全部受け取れる人は、昭和16年4月1日以前生まれの男性、昭和21年4月1日以前生まれの女性です。
一部分だけ受け取れる人は、昭和16年4月2日~昭和36年4月1日以前生まれの男性、昭和21年4月2日~昭和41年4月1日以前生まれの女性です。
特別支給の老齢厚生年金は、厚生年金に12ヵ月以上加入している方が対象で、定額部分と報酬比例部分からなります。定額部分、報酬比例部分は順次廃止されていき、昭和24年(女性は昭和29年)4月2日生まれ以降は報酬比例部分だけになり、昭和36年(女性は昭和41年)4月2日生まれ以降は、特別支給の老齢厚生年金はなくなります。
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加給年金と振替加算
<加給年金>
加給年金は、年金の家族手当のようなものです。妻や子がいる場合に、夫の老齢厚生年金に加算されます。加算されるための主な条件は次の通りです。
①妻が65歳未満であること
②生計維持関係があること(妻と生計を同じくし、かつ、妻の前年の年収が850万円未満)
③妻の厚生年金加入期間が20年未満であること
④夫が特別支給の老齢厚生年金の定額部分または老齢基礎年金をもらっていること
加入年金額は、22万4300円です。さらに、夫の生年月日に応じて、3万3100円(昭和9年4月2日~昭和15年4月1日)~16万5500円(昭和18年4月2日以後)が特別加算されます。つまり、最大で年額約39万円の加算がつきます。
<振替加算>
妻が65歳になり自分の老齢基礎年金がスタートすると、夫の老齢厚生年金に加算されている加給年金はなくなり、代わりに、妻の老齢基礎年金に振替加算がつきます。ただし、妻が昭和41年4月2日以降に生まれた方には振替加算はありません。
振替加算額は妻の生年月日に応じて、年額22万4300円(大正15年4月2日~昭和2年4月1日)~1万5028円(昭和40年4月2日~昭和41年4月1日)です。
※年金額は執筆時点のものです。
年上の妻は要注意
妻が年上の場合、加給年金は、妻が65歳になるまでですから、夫に加給年金がつくことはありません。では、加給年金の代りにつく振替加算もつかないのでしょうか。ご安心ください。夫が加給年金をもらえる年齢になったら、妻に振替加算がつきます。ただし、自動的にはつきませんので、手続きが必要です。振替加算を受けるためには、「老齢基礎年金額加算開始事由該当届」に次の書類を添付して届け出します。
・戸籍謄本
・世話全員の住民票
・妻自身の所得証明書
自分が支給漏れになっていないか不安な方のために、現在、日本年金機構では専用ダイヤルを設けています。
<専用ダイヤル 0570-030-261>
ただ、つながりにくいようですので、通常の年金相談で使っている、ねんきんダイヤルや最寄りの年金事務所の相談も活用しましょう。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。