地方に住む祖父は月25万円の年金を受給しているそうです。一方母は月6万円の受給額になりそうだと話しています。なぜこんなにも年金額に差があるのでしょうか?
実はこのような年金額の差は珍しくありません。年金額は「厚生年金か国民年金かの違い」「加入期間の長さ」「世代差」「加給年金や振替加算の有無」などによって大きく変わります。
本記事では、「老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給額」や「年収・加入年数別の年金シミュレーション」の具体例をもとに、年金額に差が生じる要因を解説していきます。
ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー
老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給額
まずは、老齢基礎年金についてみてみましょう。老齢基礎年金は、国民年金の加入期間(480ヶ月=40年)に応じて計算されます。計算式は、以下のとおりとなります。
老齢基礎年金額=満額×(保険料納付月数+免除月数の反映分)/480
2025年度の満額は年額83万1700円、月額約6万9000円です(昭和31年4月2日以後の生まれの方)。ちなみに、30年(360ヶ月)納付した場合は、以下のとおりとなります。
83万1700円×360/480=年額62万3775円、月額約5万2000円
また免除期間がある場合の反映率はそれぞれ、全額免除(2分の1)、4分の3免除(8分の5)、半額免除(4分の3)、4分の1免除(8分の7)となります。
次に、老齢厚生年金についてみてみましょう。老齢厚生年金は、報酬(給与・賞与)と加入期間によって決まります。計算式(簡略)は、以下のとおりとなります。
老齢厚生年金(報酬比例部分)=平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数
※平成15年4月以降の場合。平成15年3月以前の計算式は、老齢厚生年金(報酬比例部分)=平均標準報酬月額×7.125/1000×加入月数
ちなみに、平均標準報酬額30万円、40年(480ヶ月)加入の場合の比例報酬分は、以下のとおりとなります。
30万円×5.481/1000×480=78万9264円(月額約6万6000円)
また、老齢厚生年金にはさらに経過的加算・加給年金・振替加算などが加わる場合があります。例えば会社員として厚生年金に40年間加入し平均標準報酬額30万円の人で、老齢基礎年金(国民年金)も満額受け取る権利がある場合は以下のとおりとなります。
老齢基礎年金83万1700円(月額約6万9000円)+老齢厚生年金78万9264円(月額約6万6000円)=162万964円(月額約13万5000円)
年収と加入年数別年金額シミュレーション
本章では、年収と加入年数別年金額をシミュレーションしていきます。まず、会社員・公務員の方について見てみましょう。なお、ここでは老齢基礎年金は満額受け取れるケースで試算します。
(1)年収500万円(平均標準報酬額42万円)の場合、厚生年金加入40年で以下のとおりとなります。
・老齢基礎年金:月額約6万9000円(満額=83万1700円)
・老齢厚生年金:月額約9万2000円(年額42万円×5.481/1000×480=110万4970円)
・合計:月額約16万1000円(年額193万6670円)
(2)年収800万円(平均標準報酬額は上限の65万円)の人だと、厚生年金加入40年で以下のとおりとなります。
・老齢基礎年金:月額約6万9000円(満額=83万1700円)
・老齢厚生年金:月額約14万2506円(年額65万円×5.481/1000×480=171万72円)
・合計:月額約21万1814円(年額254万1772円)
老齢厚生年金の受給者に65歳未満の配偶者がいる場合、条件を満たせば配偶者加給年金が支給されます。金額は、月額約3万5000円(昭和18年4月2日以後生まれは年額41万5900円)です。これを加えると以下のとおりとなります。
(1)の場合、合計月額約16万1000円+配偶者加給年金月額約3万5000円=総合計月額19万6000円
(2)の場合、合計月額約21万6000円+配偶者加給年金月額約3万5000円=総合計月額25万1000円
次に、老齢基礎年金(国民年金)のみの、専業主婦や自営業の方について見てみましょう。
・40年納付:月額約6万9000円(計算式は前述)
・35年納付:月額約6万1000円(=83万1700円×420/480=72万7738円÷12ヶ月)
・30年納付:月額約5万2000円(計算式は前述)
・20年納付:月額約3万5000円(=83万1700円×240・480=41万5850円÷12ヶ月)
となります。以上の試算から、おじいさま(月額25万円)は、年収800万円クラスで40年厚生年金に加入+配偶者加給年金のケースと考えられます。また、お母さま(月額6万円)は、国民年金のみ35年納付のケースと同等の受給額です。
つまり、働き方(厚生年金か国民年金かの違い)と加入期間の長さ、加給年金などの有無の違いが、年金額の差を生んでいるのです。
まとめ
年金額の差が生じる大きな理由は、以下のとおりです。
・厚生年金(報酬比例部分)があるかどうかです。あった場合の上乗せは大きいです。
・加入期間の長さです。40年フル加入と、短期間加入では大差になります。
・世代の働き方の違いです。男性は正社員が多く、女性は専業主婦やパートが多数という時代がありました。
おじいさまの月額25万円は「厚生年金+基礎年金+加給年金あり」の典型例、お母さまの6万円は、「国民年のみ」の典型例、という構造的な差が反映されているといえるでしょう。
出典
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・支給額
日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・支給額
日本年金機構 は行 報酬比例部分
日本年金機構 加給年金額と振替加算
執筆者 : 水上克朗
ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー
