職場の事故で家族(夫)が亡くなった場合、労災保険と厚生年金の両方で申請できるのでしょうか? 「遺族(補償)給付」と「遺族厚生年金」について解説!

配信日: 2025.10.28
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職場の事故で家族(夫)が亡くなった場合、労災保険と厚生年金の両方で申請できるのでしょうか? 「遺族(補償)給付」と「遺族厚生年金」について解説!
家族を業務上の事故で失った場合、労災保険から遺族(補償)給付が支給されます。一方、厚生年金からは遺族厚生年金が支給されます。この場合、両方の年金を満額受け取ることができるのか解説します。
新美昌也

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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遺族(補償)給付

社員が仕事中や通勤途中で亡くなった場合、労災保険から遺族に対して遺族(補償)給付が、年金または一時金で支給されます。
 
遺族(補償)給付を受給できるのは、亡くなった社員に生計を維持されていた「配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹」のうち最先順位の方です。なお、妻以外は、生計維持要件のほかに年齢要件や障害要件も設けられています。
 
遺族(補償)年金の場合、図表のように「遺族(補償)年金」「遺族特別支給金」「遺族特別年金」が支給されます。
 


 
支給額は次のとおりです。
 
遺族(補償)年金については、遺族の人数に応じて給付基礎日額の153~245日分、遺族特別支給金については一律300万円、遺族特別年金については遺族の人数に応じて算定基礎日額の153~245日分が支給されます。
 
社員が死亡した際、残された遺族に急な出費が必要になるような場合、1回に限り年金の前払いを受けることもできます。この遺族(補償)年金前払い一時金の額は、給付基礎日額の200日分、400日分、600日分、800日分、1000日分の中から自由に選択できます。55歳~60歳未満の若年支給停止対象者の方も請求可能です。
 
なお、前払一時金が支給された場合、遺族(補償)年金は、各月分の額の合計額が、前払一時金の額に達するまでの間は支給が停止されます。
 
遺族補償一時金は、遺族補償年金を受けることができない場合などに支給されます。遺族補償年金を受けることができない場合の支給額は、給付基礎日額1000日分、遺族特別支給金300万円、算定基礎日額1000日で、遺族のうち最順位者に支給されます。
 

遺族厚生年金

厚生年金保険の加入者が亡くなったときは、遺族に遺族厚生年金が支給されます。遺族基礎年金の受給要件を満たしてれば、遺族厚生年金と遺族基礎年金の両方を受給できます。
 
遺族厚生年金を受給できるのは、亡くなった方に生計を維持(年収850万円未満)されていた「子のある配偶者・子・子のない配偶者・父母・孫・祖父母」のうち最先順位にある遺族です。
 
遺族が夫や父母、祖父母の場合、55歳以上でなければ受給できず、実際に受給できるのは60歳からですので注意しましょう。
 
遺族基礎年金は40年間加入した場合、満額83万1700円で子の加算があります。遺族厚生年金の年金額は、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額となります。年金額の計算においては被保険者期間300月の最低保障があります。
 
夫が亡くなったとき、妻の年齢が40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいないなどの場合には、40歳から65歳になるまでの間、中高齢寡婦加算62万3800円(年額)が上乗せされます。
 

労災保険と厚生年金の両方から遺族年金をもらえる?

遺族厚生年金・遺族基礎年金と遺族(補償)年金の両方の受給資格がある場合、遺族厚生年金・遺族基礎年金は満額受け取れますが、労災保険の遺族補償年金は減額(併給調整)されますので全額受け取ることはできません。
 
減額率は、遺族厚生年金・基礎年金をともに受給できるときは0.80、遺族厚生年金のみのときは0.84です。正しく理解しておきましょう。
 

出典

厚生労働省 労災保険給付の概要
厚生労働省 労災保険に関するQ&A 7-1
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
 
執筆者 : 新美昌也
ファイナンシャル・プランナー

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