大学生の子の年金、「学生納付特例」の手続きを忘れていました。大学に入り半年ほどたってしまいましたが、まだ間に合いますか?

配信日: 2025.11.06
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大学生の子の年金、「学生納付特例」の手続きを忘れていました。大学に入り半年ほどたってしまいましたが、まだ間に合いますか?
子どもが大学に入ると「学生納付特例」を利用する人は多いでしょう。では、もし手続きを忘れてしまった場合、もう利用できないのでしょうか。また、納付書が届いた場合は支払わないといけないのでしょうか。本記事で、FPである筆者が解説します。
伊藤秀雄

FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員

大手電機メーカーで人事労務の仕事に長く従事。社員のキャリアの節目やライフイベントに数多く立ち会うなかで、お金の問題に向き合わなくては解決につながらないと痛感。FP資格取得後はそれらの経験を仕事に活かすとともに、日本FP協会の無料相談室相談員、セミナー講師、執筆活動等を続けている。

手続きするのは入学時ではなく20歳到達時

大学入学時は、年齢が20歳未満である学生が多くを占めます。学生納付特例制度は、国民年金保険料の納付義務が発生する20歳以降の学生が対象なので、手続きを希望する場合でも入学直後に全員対象となるわけではありません。
 
なお、20歳に到達した学生には、日本年金機構から国民年金の第1号被保険者に加入した旨の通知が届きます。つまり、加入は機構側で手続きされるため、自分で加入手続きする必要はないのです。平成3年4月以降は、それまで任意加入だった20歳以上の学生に対し加入が義務化されています。
 
日本年金機構から届く通知には、「基礎年金番号通知書」「国民年金の加入と保険料のお知らせ」「国民年金保険料納付書」等とともに、「学生納付特例申請書」も含まれています。特例制度の利用を希望する場合は、この時点ですぐ申請しましょう(※1)。
 

一定期間内ならさかのぼって申請できる

20歳到達時に届いた書類ですぐ学生納付特例を申請すれば、同封の納付書で保険料を納める必要はありません。ただし、保険料の納付期日(納付対象月の翌月末日)までに保険料が納付されない場合、通常は滞納とみなされ一定期間経過後に納付勧奨が行われます。
 
そのため、学生納付特例の申請のタイミングによっては、納付勧奨が届いてしまう可能性がありますが、手続きが前後しただけであり、特例が承認されれば納付の必要はありません。
 
もし、学生納付特例の申請を失念してしまった場合、電話や書面などで上記のように納付勧奨が行われることがありますので、その際はすぐ特例の申請手続きを行ってください。
 
手続きをせず、保険料の納付も行われないと、単なる滞納として催告状の通知など、より強い納付勧告が行われます。一定以上の所得や滞納期間に該当する場合は、差し押さえ(強制徴収)にまで至る可能性があります(※2)。
 
特例制度の利用を決めていたのであれば、申請を失念していたとしても初期の納付勧奨時点で速やかに申請しましょう。
 
なお、保険料の納付期限から2年を経過していない期間(申請時点から2年1ヶ月前までの期間)については、仮に卒業後であっても、さかのぼって特例の申請ができます(※3)。
 

未納期間により生じるリスク

学生時代に保険料の未納期間を放置しておくデメリットは、滞納対応や延滞金の発生、将来の年金額の減少だけではありません。
 
例えば、運動系の部活動や旅行などで思わぬ事故に遭う可能性が考えられます。また、不測の病気を患うことも考えられます。
 
そのような事故の発生時や初診日の時点で学生納付特例が適用されていないと、障害を負ったり死亡したりした際に、障害年金や遺族年金を受けられないおそれがあるのです(※3)。
 
学生納付特例の承認を受けた際、老齢基礎年金については保険料を追納しないと将来の年金額に反映しませんが、障害基礎年金と遺族基礎年金は、学生納付特例の承認を受けている期間中の事故等であれば年金を受け取ることができます(※2)。
 
以下の支給額をみると、たとえわずかな期間でも、20歳以降に未納期間を作るべきではないことが分かります。
 

■令和7年度の年金額(年額)(※4)

障害基礎年金1級:103万9625円
障害基礎年金2級および遺族基礎年金:83万1700円

 

追納できるのは10年以内

学生納付特例制度は、あくまで保険料の猶予であり、免除ではありません。特例の期間がある場合、将来受け取る老齢基礎年金額を増やすための保険料の追納は、特例が承認された期間から10年以内であればさかのぼって納めることができます。なお、3年目以降の追納には、加算額が発生します。
 
また、親が代わりに分割あるいは一括して追納することも可能です。その場合、納付者の社会保険料控除として扱われるため、納付者の所得税等の節税効果が期待できます。数年分の保険料を一括して支払った場合も、全額が支払った年の社会保険料控除対象になります(※5)ので、検討してみてもよいでしょう。
 

出典

日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
(※1)日本年金機構 20歳到達時の国民年金の手続き
(※2)日本年金機構 20歳になった皆様と世帯主の方へ 国民年金の加入と保険料のご案内
(※3)日本年金機構 国民年金保険料の免除等の申請が可能な期間
(※4)日本年金機構 障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額
(※5)国税庁 No.1130 社会保険料控除
 
執筆者 : 伊藤秀雄
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員

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