30歳・年収300万円の会社員です。祖母から「年金は月10万円ない」と聞き不安になりました。将来、月20万円の年金を受け取るにはいくらの年収を目指せば現実的?
では、将来「月20万円の年金」を受け取るには、どれくらいの年収が必要なのでしょうか。本記事では、公的データをもとに現実的な水準を分析していきます。
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公的年金の仕組みを理解しよう
現在の公的年金制度は、「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造です。自営業者などが加入する国民年金の満額は2025年度で月額6万9308円、会社員や公務員はこれに厚生年金が上乗せされます。
厚生年金の受給額は、働いた期間と給与額に応じて決まります。厚生労働省の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金保険(第1号) 受給者の平均受給月額は14万7360円です。つまり、年金だけで月20万円を受け取るには、平均よりもかなり高い収入と長い加入期間が必要です。
月20万円の年金を得るために必要な年収
では、今回のケース(30歳・年収300万円)をもとに、将来、月20万円の年金を受け取るには、どれほどの年収が必要なのかを考えてみましょう。
老齢厚生年金は、主に「報酬比例部分」と呼ばれる仕組みで構成されています。これは、加入期間や標準報酬月額・賞与額に基づいて計算される部分です。計算は「報酬×給付乗率×加入期間(月数)」で行われ、過去の報酬は物価や賃金の変動を考慮して再評価されます。
この報酬比例部分によって算出された月額に老齢基礎年金を加え、生涯の年金給付額を概算します。単純化した試算では、40年間会社員として働いて老齢基礎年金と合わせて月20万円を受け取るには、平均年収715万円程度が必要と推定されます。
一方、年収300万円のケースでは、老齢厚生年金を含めても月13万円程度が目安とされています。したがって、公的年金だけで月20万円を実現するのは現実的に難しい水準です。安定した老後生活を実現させるには、収入を上げる努力をしつつ、老後資金を補う上乗せ準備が不可欠といえます。
年収を上げる以外にもできるお金の判断
年収が不足しているといっても、短期間で収入を引き上げるのは容易ではありません。だからこそ、今からできる以下のような対策を複数組み合わせることが重要です。
まず、厚生年金の加入期間を長く確保することです。転職や退職で加入が途切れると、その分受給額は減少します。長期的に社会保険に加入できる働き方を維持することが、将来の安定した受給につながります。
次に、年金に頼らない備えとして、確定拠出年金(iDeCo)や少額投資非課税制度(NISA)といった積立投資などで自助努力を始めましょう。毎月1万円でも30年間積み立てれば、運用次第で数百万円単位の資産形成が可能です。こうした上乗せ年金は、将来の受取額を底上げする有効な手段です。
さらに、キャリアアップや副業によって収入源を増やすことも重要です。資格取得やスキルアップをして収入を高めれば、年金の掛金が増え、将来の受給額も上昇します。年金を増やすには、働く期間を延ばすことも現実的な手だてのひとつです。
加えて、支出の見直しも欠かせません。年金の多寡だけに目を向けるのではなく、老後に必要な生活費を把握し、必要な水準に合わせて生活設計を調整する視点が大切です。
公的年金+自助努力で月20万円の老後を現実にしよう
月20万円の年金を受け取るには、単に収入を増やすだけでなく、「働き方」「資産形成」「支出管理」をトータルで見直すことが必要です。
現実的には、年収700万円を超える層でなければ公的年金だけで月20万円を得るのは難しいでしょう。
しかし、年収300万円でも厚生年金の加入期間を確保し、早めにiDeCoやNISAなどで積立投資を始めれば、老後の手取りは大きく変わります。
重要なのは、「今の延長線上で老後を迎える」と考えず、30代のうちからお金の流れを設計する意識を持つことです。収入を上げ、資産を積み、支出を整える、この3つを着実に積み重ねれば将来の安心につながるでしょう。
出典
日本年金機構 令和7年4月分からの年金額等について
厚生労働省年金局 令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
日本年金機構 は行 報酬比例部分
厚生労働省 公的年金シミュレーター
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
