内縁の夫が亡くなりました。籍は入れていませんが、一緒に生活していました。遺族年金はもらえるのでしょうか?

配信日: 2025.11.09
この記事は約 4 分で読めます。
内縁の夫が亡くなりました。籍は入れていませんが、一緒に生活していました。遺族年金はもらえるのでしょうか?
遺族年金は国民年金・厚生年金保険の被保険者であった方が亡くなったとき、その方によって生計を維持されていた遺族が受け取ることができる年金です。ここでいう「遺族」には、“内縁の妻(配偶者)”も含まれることをご存じでしょうか。
 
本記事では「内縁の妻は遺族年金を受け取れるのか?」「内縁の妻が受け取れる遺族年金は何か?」について解説します。なお、本記事では遺族年金の受給要件は満たしているものとして解説しています。ぜひ最後までお読みください。
中村将士

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
 
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。

内縁の妻は遺族年金を受け取れるのか?

遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金があり、それぞれ国民年金法(遺族基礎年金)・厚生年金保険法(遺族厚生年金)により規定されています。
 
国民年金法では、第5条第7項において「配偶者」を以下のように定義しています。
 

この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。

 
また、厚生年金保険法でも、第3条第2項において「配偶者」を以下のように定義しています。
 

この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。

 
このことから、国民年金法・厚生年金保険法に規定されている「配偶者」には内縁の妻も含まれていることが分かります。そして、遺族基礎年金・遺族厚生年金の受給対象者(受け取れる方)に「配偶者」が該当すれば、内縁の妻も該当すると考えることができます。
 
遺族基礎年金の受給権者は、亡くなった方に生計を維持されていた以下の遺族です。
 

(1)子のある配偶者
(2)子

 
一方、遺族厚生年金の受給権者は、亡くなった方に生計を維持されていた遺族のうち、最も優先順位の高い方です。優先順位は、以下のとおりです。
 

(1)子のある配偶者
(2)子
(3)子のない配偶者
(4)父母
(5)孫
(6)祖父母

 
このことから内縁の妻は遺族年金を受け取れるといえます。ただし、「子のある配偶者」と「子のない配偶者」では受け取れる遺族年金の内容が異なりますので注意が必要です。ちなみに、「子」とは「18歳になった年度の3月31日までにある方」または「20歳未満で障害等級1級・2級の障害の状態にある方」をいいます。
 

内縁の妻が受け取れる遺族年金は何か?

内縁の妻に「子」がいる場合、遺族基礎年金と遺族厚生年金を受け取ることができます。一方、内縁の妻に「子」がいない場合、遺族基礎年金を受け取ることはできず、遺族厚生年金のみを受け取ることができます。なお、この場合の「子」とは亡くなった方の実子・養子のことをいい、内縁の妻の実子は「子」に含まれません。
 
遺族基礎年金を受け取れない場合であっても、遺族厚生年金には「中高齢寡婦加算」「経過的寡婦加算」があり、一定の要件に該当する場合、所定の金額が遺族厚生年金に加算されます。
 
中高齢寡婦加算は、以下のときに受け取ることができます。
 

・夫が亡くなったときに40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいないとき
・遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻が、子が18歳になった年度の3月31日(障害の状態にある場合は20歳)に達したため、遺族基礎年金を受け取ることができなくなったとき

 
経過的寡婦加算は、以下のときに受け取ることができます。
 

・昭和31年4月1日以前生まれの妻に65歳以上で遺族厚生年金の受給権が発生したとき
・中高齢寡婦加算を受け取っていた昭和31年4月1日以前生まれの遺族厚生年金の受給権者である妻が65歳に達したとき

(※日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」より)

 
以上をまとめると、内縁の妻が受け取れる遺族年金は、夫が亡くなった当時の状況・年齢に応じて以下のようになります。
 

・「子」がいる:遺族基礎年金と遺族厚生年金
・40歳以上65歳未満で「子」がいない:遺族厚生年金と中高齢寡婦加算
・65歳以上(昭和31年4月1日以前生まれ)で「子」がいない:遺族厚生年金と経過的寡婦加算

 

まとめ

本記事では「内縁の妻は遺族年金を受け取れるのか?」「内縁の妻が受け取れる遺族年金は何か?」について解説しました。結論をまとめると、以下のとおりです。
 

・内縁の妻は遺族年金を受け取れる
・内縁の妻が受け取れる遺族年金は、夫が亡くなった当時の状況・年齢によって異なる

 
内縁の妻が受け取れる遺族年金は、夫が亡くなった当時の状況・年齢に応じて、以下のようになります。
 

・「子」がいる:遺族基礎年金と遺族厚生年金
・40歳以上65歳未満で「子」がいない:遺族厚生年金と中高齢寡婦加算
・65歳以上(昭和31年4月1日以前生まれ)で「子」がいない:遺族厚生年金と経過的寡婦加算

 
遺族年金においては「民法上の婚姻関係にある妻」も「内縁の妻」も「配偶者」となるため、内縁の夫が亡くなった場合、一定の要件を満たしていれば遺族年金を受け取ることができます。ただし、夫が亡くなった当時の状況により受け取れる遺族年金が異なります。本記事を参考に理解を深めていただければ幸いです。
 

出典

デジタル庁 e-Gov 法令検索 国民年金法
デジタル庁 e-Gov 法令検索 厚生年金保険法
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族年金ガイド 令和7年度版
 
執筆者 : 中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

  • line
  • hatebu
【PR】 SP_LAND_02
FF_お金にまつわる悩み・疑問