独身の姉が59歳で亡くなりました。長年払ってきた年金はどこへいくのでしょうか。遺族年金の受給条件を教えてください。
本記事では59歳の姉が亡くなった場合を例に、遺族年金の仕組みと支給条件を整理し、どのような場合に支給されないのかを解説します。
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目次
遺族年金には2つの制度がある
公的年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があります。
遺族基礎年金は、国民年金に加入していた人が亡くなった場合に支給されるもので、受給できるのは「子のある配偶者」または「子ども」です。
一方、遺族厚生年金は、厚生年金に加入していた人が亡くなったときに、配偶者や子、父母などに支給されます。
ただし、これらの年金には厳格な条件があります。支給対象となるには、故人が一定の年金保険料を納めていたことや、遺族が法律で定められた範囲内であることが必要です。つまり、「誰がどの年金に加入していたか」「どのような家族構成だったか」によって。受給できる遺族の範囲が決まるのです。
独身の姉が亡くなった場合、遺族年金は受け取れるのか
今回のケースでは、姉が独身で配偶者や子どもがいないという点が大きなポイントになります。
まず遺族基礎年金は、配偶者または子どもがいない場合には支給対象外です。兄弟姉妹は、遺族年金の受給対象に含まれません。
一方、遺族厚生年金の場合、配偶者、子ども、父母、孫、祖父母などが対象となりますが、優先順位が定められています。独身で子どもがいない場合は、次に55歳以上の父母が対象になります。父母がすでに亡くなっている、あるいは年齢要件を満たさない場合には、遺族年金は支給されません。
このように遺族年金の受給対象は、原則として配偶者や子どもなど故人と生計を同じくしていた家族に限定されています。そのため、兄弟姉妹には原則として遺族年金は支払われません。
遺族年金を受け取る人がいない場合、年金保険料はどうなる?
長年収めた年金保険料が何も戻ってこないのではないか、という疑問を持つ人も多いでしょう。
日本の公的年金は保険の仕組みを基にしており、掛け捨ての要素が含まれています。制度はあくまでも、老後の生活保障と遺族の生活保障を目的としており、死亡時に積立金が相続される仕組みではありません。
ただし、納付実績は年金記録として残ります。遺族年金の対象にならなくても、一定の条件を満たしていれば「死亡一時金」が支給されることがあります。この制度は、年金保険料を3年以上納めており、遺族基礎年金を受け取れない場合に適用されます。
死亡一時金は、遺族(配偶者、子ども、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順で優先順位の高い者)が受け取るものなので、兄弟姉妹も条件が整っていれば請求できる可能性があります。死亡一時金の支給額は、故人の国民年金の納付期間により12〜30万円程度です。
また、厚生年金加入者の場合は勤務先の退職金制度や死亡退職金など、別の給付金が発生するケースもあります。したがって、これらを含めて確認し、経済的な損失を最小限に抑えることが重要です。
遺族年金の受給要件と金額の基本
遺族基礎年金は、子どもがいる配偶者の場合は2025年度で年額約83万円が基本給付額となり、子どもが複数いる場合には子の加算額が加算されます。
遺族厚生年金は、故人が受け取るはずだった老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3となります。ただし、加入期間や報酬額によって金額は変動します。
さらに、今後は遺族年金制度の見直しも進められており、特に若年遺族に対する給付期間の限定などが議論されています。遺族年金は一度受給資格を失うと再申請が難しいため、早期の確認と手続きが重要です。
遺族年金を受け取れない場合に、どのように備えるか考えよう
今回のように、独身で子どもがいない場合、遺族年金の支給を受けられない可能性が高いことが分かりました。
だからこそ、今後の備えとして次の点が重要になります。まず、自分や家族の年金加入状況を正確に把握することです。次に、遺族年金が受給できないケースに備えて、民間の生命保険や貯蓄などで不足分を補う準備をしておくことです。
遺族年金がもらえるかどうかは、家庭の状況や制度の条件によって大きく変わります。早めに制度内容を理解し、必要に応じて公的機関に相談することで、いざというときの安心につながるでしょう。
出典
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
厚生労働省 [年金制度の仕組みと考え方] 第13 遺族年金
日本年金機構 死亡一時金
厚生労働省 遺族厚生年金の見直しについて
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
