私の母は専業主婦で働いた経験がありません。遺族年金が5年で打ち切られると、5年後は収入がなくなるということでしょうか?
近年「有期給付化」という言葉が報道で取り上げられ、誤解も生まれやすくなっていますが、実際には、遺族年金の支給期間は人によって異なり、必ず5年で打ち切られるとはかぎりません。本記事で、制度の仕組みと今後の生活設計への影響を整理してみましょう。
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遺族年金には2種類ある
日本の遺族年金制度は、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2つに大別されます。
遺族基礎年金は、亡くなった人に18歳未満または20歳未満で障害年金の障害等級1~2級の状態にある子どもがいる場合に、残された配偶者や子どもに支給されます。
一方、遺族厚生年金は、厚生年金に加入していた人が亡くなったとき、その配偶者や子、父母などに支給されるものです。
専業主婦であるお母さまの場合、ご自身が厚生年金に加入していなかったとしても、夫が会社員などで厚生年金に加入していれば、遺族厚生年金の対象になる可能性があります。
ただし、遺族基礎年金は子どものいる配偶者が原則対象であり、子どもがいない場合は支給されません。したがって、子のいない専業主婦の方は遺族厚生年金が主な収入源となるケースが多くなります。
5年で打ち切りは特定条件での話
一部で話題となっている「5年で打ち切り」というのは、遺族厚生年金の見直し制度の一部を指します。
これは、「18歳年度末までの子どもがいない40歳未満の方」などを対象に、遺族厚生年金を原則5年間の有期給付とするもので、2028年4月以降に段階的に適用される見込みです。現行制度では、多くのケースで終身給付が続いています。
厚生労働省は、以下の4つに該当する方は今回の見直しの影響を受けないとしています。
(1)すでに遺族厚生年金を受給している方
(2)60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する方
(3)18歳年度末までの子どもを養育する間にある方の給付内容
(4)2028年度に40歳以上になる女性
つまり、「5年で終わる」というのはあくまで特定の条件下の話であり、すべての人に当てはまるわけではありません。有期給付となる場合でも、5年間の支給額が増額され、一定の条件を満たせば延長される救済措置も設けられる見通しです。
そのため、お母さまのケースが実際に5年で支給が終了するかどうかは、「配偶者が厚生年金に加入していたか」「お母さまの年齢」「子どもの有無」「制度改正の適用時期」など、個別の要素を確認する必要があります。
家計を支えるために見直したいポイント
もし遺族年金が5年で終了する場合、5年後の生活費をどう確保するかが大きな課題になります。厚生労働省の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、遺族厚生年金の平均受給額は月8万573円で、年額にすると96万6876円となります。これが5年で終わるなると、その後の収入がゼロになるリスクもあります。
専業主婦で働いた経験がない場合、ご自身の老齢年金額は基礎年金分にとどまり、月額6万円台程度にとどまるケースが多いです。生活費や医療費、住宅費を含めて月20万円前後を想定すると、収支のギャップは大きく、貯蓄や他の収入で補う必要が生じます。
そのため、家計を守るためには次の3つの備えが欠かせません。
・収入を増やす
パートや在宅業務など、可能な範囲で働く選択肢を検討しておくことが大切です。
・支出を減らす
固定費や生活費を見直し、年金収入が減っても生活を維持できる水準を意識しましょう。
・資産を確保する
遺族年金や老齢年金だけで生活が成り立たない場合に備え、預貯金や投資信託などで長期的な資産形成を行うことが重要です。
制度の見直しを正しく理解し、早めに備えよう
「遺族年金が5年で打ち切られる」というニュースだけを見て不安を抱くのではなく、まずはお母さまがどの制度の対象になるのかを確認することが重要な出発点です。年金事務所での確認や将来の受給見込みの試算することで、支給額や支給期間、改正の影響を具体的に把握しましょう。
そのうえで、5年後に収入が途絶える可能性を想定し、働く・貯める・減らすの3つの視点から生活設計を見直すことが安心につながります。制度の改正は今後も続く可能性があるため、情報を定期的に更新しながら早めの準備を心掛けましょう。
出典
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
厚生労働省 遺族厚生年金の見直しについて
厚生労働省 令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
