年金を早くもらうと損するの?どうして多くの人が繰上げ受給しないのでしょうか?

配信日: 2025.11.13
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年金を早くもらうと損するの?どうして多くの人が繰上げ受給しないのでしょうか?
「年金を早くもらえるなら、そのほうが得では? 」と考える人は少なくありません。しかし実際には、「繰上げ受給(年金を65歳より前に受け取る)」を選ばない人が多いのが現状です。
 
なぜ多くの人が早めの受給を避けるのでしょうか?本記事では、繰上げ受給の仕組みと“損得の分かれ目”をわかりやすく解説します。
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繰上げ受給とは? 制度の基本をおさらい

老齢基礎年金や老齢厚生年金は、原則として65歳から受け取れます。ただし希望すれば、60歳から最大5年前倒しして受け取ることが可能です。これが「繰上げ受給」です。
 
ただし、前倒しした分だけ年金額は減額されます。減額率は1ヶ月あたり0.4%(令和4年4月以降の新ルールでは0.4%)。たとえば5年間(60ヶ月)繰り上げると、0.4%×60=24%減額になります。
 
つまり、65歳で年間120万円もらえる人が60歳から受給すると、毎年の年金は約91万円に減る計算です。そしてこの減額は一生続きます。
 

「早くもらう=得」とは限らない理由

一見すると、「早くもらえば早く元が取れる」と思うかもしれません。しかし、実際には長生きすればするほど、繰上げ受給は損になる傾向があります。たとえば表1のように考えてみましょう。
 
【表1】

受給開始年齢 年金額(年間) 生涯受給額が逆転する年齢
60歳開始 約91万円 約81歳で逆転
65歳開始 約120万円

※筆者作成
 
つまり、81歳以上生きると繰上げ受給の方が不利になる計算です。厚生労働省の「令和5年簡易生命表」によると、令和5年時点の日本人の平均寿命は男性81.09歳、女性87.14歳。平均的に考えれば、65歳からの受給のほうが有利になる可能性が高いわけです。
 

減額は一生続くという重み

繰上げ受給のもう一つの注意点は、減額が「生涯にわたって」続くことです。途中で「やっぱり繰下げに変えたい」と思っても、原則として変更はできません。
 
また、障害年金や遺族年金との併給にも影響が出る場合があり、単純に「お金を早く受け取れる」だけで決めてしまうと、将来の選択肢を狭めてしまう可能性があります。
 

繰上げを選ばない人が多い理由

実際に、年金受給者の中で繰上げを選ぶ人は年々減少傾向にあります。その背景には以下のような理由があります。
 

1.長寿化による「元が取れない」リスク

→ 平均寿命が延びるほど、繰上げの不利が大きくなります。
 

2.働き続ける人が増えた

→ 定年後も再雇用などで収入があるため、急いで年金を受け取る必要がない。
 

3.医療費や介護費などの将来不安

→ 長期的な生活設計を考え、減額を避ける人が増加。
 

4.繰下げ受給(最大75歳まで)の魅力が注目されている

→ 1ヶ月繰下げるごとに0.7%増額される制度が、「年金を遅らせて増やす」という逆の発想を後押ししています。
 

こんな人は繰上げ受給を検討してもよい

もちろん、すべての人に繰上げ受給が不利とは限りません。以下のようなケースでは、繰上げを選ぶメリットもあります。


・体調が悪く、長く生きられない可能性がある
・60代前半に収入がなく、生活費の確保が必要
・借入金や一時的な支出のため早めの資金が必要

重要なのは、「損得」よりも「自分の生活状況」を軸に判断することです。
 

焦らず、長期的な視点で判断を

「早くもらえるなら得」というのは一見魅力的ですが、年金は“長生きするほど得をする仕組み”でもあります。繰上げ受給は、一時的には安心を得られるものの、減額が一生続くリスクをしっかり理解しておくことが大切です。
 
年金の受給は人生設計の要。健康状態、家計、働き方、家族構成など、さまざまな要素を考慮しながら、「自分にとって最適なタイミング」を見極めていきましょう。
 

出典

日本年金機構 年金の繰上げ受給
厚生労働省 令和5年簡易生命表
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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