50代で夫が死亡…“子どもが2人”いますが、専業主婦の私は「遺族年金」をいくら受け取れますか?「年収600万円」のケースで試算

配信日: 2025.11.15 更新日: 2025.11.18
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50代で夫が死亡…“子どもが2人”いますが、専業主婦の私は「遺族年金」をいくら受け取れますか?「年収600万円」のケースで試算
50代で夫を亡くした専業主婦にとって、今後の生活費の確保は大きな課題です。夫が会社で働いていた場合には、公的年金制度から2種類の支援を受けられる可能性があります。
 
本記事では、年収600万円で働いていた夫を亡くした場合を想定し、妻と未成年の子ども2人という家族構成で受け取れる年金額を具体的に計算してみます。
金子賢司

CFP

遺族が受け取れる年金は2階建て構造

配偶者を亡くした遺族が受け取れる公的年金には、大きく分けて2つの種類が存在します。1つ目は全国民共通の「遺族基礎年金」、2つ目は会社員や公務員が対象となる「遺族厚生年金」です。
 
会社勤めをしていた人が亡くなった場合、残された配偶者は両方の年金を同時に受給できる可能性があります。
 
ただし、遺族基礎年金については、18歳に達する年度の3月31日までの子どもがいることが条件となります。一方、遺族厚生年金は、子どもの年齢に関係なく、亡くなった人に生計を維持されていた配偶者であれば受給対象となります。
 

具体的な受給金額をシミュレーション

国民年金部分の計算

まず、すべての国民に共通する遺族基礎年金から見ていきましょう。2025年度の制度では、基礎となる金額として83万1700円が設定されています。
 
ここに、子どもの人数に応じた加算が行われます。加算額は第1子と第2子がそれぞれ23万9300円、第3子以降は1人につき7万9800円です。
 
今回のケースでは子どもが2人いるため、計算は次のようになります。
 
基礎額83万1700円+第1子加算23万9300円+第2子加算23万9300円=合計131万300円
 

厚生年金部分の計算

次に、会社員特有の上乗せ部分である遺族厚生年金を計算しましょう。この金額は、亡くなった人が本来受け取るはずだった老齢厚生年金の75%に相当します。
 
計算には「平均標準報酬額」という指標を使います。年収600万円の場合、この数値はおおむね50万円程度です。これに一定の係数(5.481/1000)と加入月数、そして75%を掛け合わせて算出します。
 
なお、厚生年金の加入期間が25年(300月)未満であっても、300月加入したものとして計算される特例があります。
 
試算結果:50万円×5.481/1000×300月×0.75=約61万6600円
 

2つの年金を合わせた総額

子どもが両方とも18歳年度末に達するまでの期間は、上記2つの年金を同時に受給できます。
 
年間の総受給額:131万300円+61万6600円=192万6900円
 
これを月額に換算すると、約16万600円です。この金額が、子どもが成長するまでの期間、家計を支える公的支援として毎月振り込まれることになります。
 

子どもの成長に伴う受給額の推移

遺族基礎年金は子どもの年齢に応じて支給されるため、子どもが成長すると受け取れる金額が段階的に変わっていきます。
 
まず、第1子が18歳年度末を迎えると、その子の加算分がなくなります。このタイミングでの受給額を計算してみましょう。
 
国民年金部分:83万1700円+23万9300円=107万1000円
これに厚生年金部分を加えると:107万1000円+61万6600円=168万7600円(月額約14万600円)

 
次に、第2子も18歳年度末を過ぎると、遺族基礎年金の支給自体が終了します。しかし、妻が40歳以上の場合「中高齢寡婦加算」という制度により、2025年度で62万3800円が遺族厚生年金に上乗せされます。
 
この段階での受給額:61万6600円+62万3800円=124万400円(月額約10万3400円)
 

2028年から変わる遺族厚生年金制度

2025年6月、年金制度の大規模な見直しを含む法律が国会で可決されました。このうち遺族厚生年金の見直しは、2028年4月の施行が予定されています。
 
最も大きな変更点は、子どもがいない60歳未満の配偶者に対する遺族厚生年金が、従来の終身給付から5年間限定の給付に変わることです。
 
今回のように子どもがいるケースでは、子どもが全員18歳年度末を過ぎた後、そこから5年間という形になります。
 
もっとも、制度変更に伴う配慮措置も用意されています。5年間の期間中は「有期給付加算」として、従来よりも約3割増しの年金を受け取れます。
 
さらに、5年経過後も所得が低い人には、「継続給付」として年金支給が続く仕組みも設けられる予定です。
 

まとめ

年収600万円で働いていた夫を亡くした専業主婦が、2人の未成年の子どもと暮らしているケースを見てきました。
 
子どもが両方とも18歳年度末に達するまでは、年間約193万円の公的支援を受けられます。ただし、子どもの成長とともに支給額は減少し、両方が18歳年度末を過ぎると約124万円まで下がります。
 
専業主婦の人は、万一の場合には公的年金だけでは不十分な可能性もあるため、民間の生命保険による備えも並行して検討することをおすすめします。
 

出典

日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
厚生労働省 遺族厚生年金の見直しについて
 
執筆者 : 金子賢司
CFP

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