年金は「生涯で840万円」払っても、老後の受給額は「月7万円」ほど…これなら“投資のほうが得”ですか?「月1.7万円×年率3%」で運用したケースで試算
本記事では、国民年金の保険料総額と、老後実際にもらえる老齢基礎年金の額を整理しつつ、「もし同じお金を自分で運用していたら?」というシミュレーションをしていきます。
2級ファイナンシャルプランニング技能士/日商簿記3級/第一種衛生管理者/証券外務員/英検2級など
目次
国民年金の保険料はここ20年で大きく上昇
日本年金機構の資料によると、国民年金の保険料は過去20年でじわじわと上がってきました。2003年度には月額1万3300円だったものが、改定を経て、現在(2025年度)は 月額1万7510円 となっています。
小幅な上昇に見えるかもしれませんが、月額4210円の上昇(1万7510円-1万3300円)ということは年間では5万円以上の負担増ですので、決して軽くはないでしょう。
40年間で支払う保険料総額は約840万円
国民年金は、原則20歳から60歳までの40年間、保険料を納め続けなければなりません。仮に現在の保険料である月額1万7510円を40年間払い続けた場合、総額は次の通りです。
1万7510円×12ヶ月×40年=約840万円
40年間で約840万円の年金保険料を支払うということが分かりました。
もらえる年金はいくら?
続いて、現在の制度において、40年間保険料を納めた場合に受け取れる年金額を見ていきます。2025年度の老齢基礎年金(満額)は、年間で83万1700円です。月額にすると約6万9000円で、原則としてこの金額を65歳から生涯受け取ることができます。
保険料を年率3%で運用したらいくらになる?
昨今はNISAのつみたて投資枠など、気軽にこつこつと投資ができる仕組みが整っています。仮に、国民年金保険料の月額1万7510円を年率3%で運用したら、40年間でいくらになるのでしょうか?
なお、念のため確認しておきますが、実際に年金保険料を自身で運用することはできません。シミュレーションしてみると、約1610万円になりました。
つまり、自分で積み立て投資を行えば、支払った総額840万円の約2倍にまで膨らむ計算です。
運用と年金の損益分岐点はいつ?
年金保険料の月額1万7510円を年率3%で運用すると、約1610万円になることが分かりましたが、この1610万円と同じ額を老齢基礎年金(年額83万1700円)で受け取るには、19.36年(19年4ヶ月超)かかります。
厚生労働省の「令和6年簡易生命表の概況」によると、65歳の平均余命は男性が19.47年、女性が24.38年です。
男性の場合、平均余命を生きたくらいの時期が、ちょうど損益分岐点を超えるタイミングです。女性にいたっては男性より平均余命が長いため、平均余命を生きられれば、損益分岐点を確実に超えられます。
運用よりも年金のほうが優位になる可能性が高い
シミュレーションの結果、運用で得られる額(約1610万円)を上回るには、年金を19年4ヶ月超受け取る必要があります。
平均余命から考えると、男性はその期間と同じくらいの期間年金を受け取れる、女性はその期間を大きく超えて受け取れる可能性が高いため、男女間の差はあれども、年金のほうが運用よりも総額で優位になるケースが多いといえるでしょう。
また、国民年金は積立投資ではなく、あくまで社会保険です。年金の本質は保険ですので、長生きや障害、そして亡くなった後の遺族への保障という役割もあります。
さらに、国民年金の保険料納付は義務であり、任意で辞めることはできません。
まとめ
本記事では、国民年金保険料を自分で運用した場合の総額と、実際の年金受給額を比較しましたが、平均余命を考えれば、自分で運用してもあまり得にはならない結果となりました。
とはいえ、運用次第ではより大きな金額になる可能性はありますし、年金は長生きしなければ「損」に見えるかもしれません。
しかし、年金制度は「長生きリスクに備える保険」であり、最低限の生活を支える仕組みです。もし自分で投資をして、65歳時点で約1610万円を用意できたとしても、その後想定より長く、例えば30年以上生きるかもしれないといった不確実性まではカバーできません。年金であれば、約7万円の支給が生涯続きます。
結局のところ、国民年金は「損か得か」というよりも、「最低限の生活を一生涯保証してくれる仕組み」と理解するのが良いでしょう。
出典
日本年金機構 国民年金保険料の変遷
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
執筆者 : 三浦大幸
2級ファイナンシャルプランニング技能士/日商簿記3級/第一種衛生管理者/証券外務員/英検2級など