体調を崩し62歳から「年金」を“繰上げ受給”の予定です。受給額は「年80万円」ほどですが、“年金生活者支援給付金”も62歳から受け取れますか?「受給額・要件」も確認

配信日: 2025.11.21
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体調を崩し62歳から「年金」を“繰上げ受給”の予定です。受給額は「年80万円」ほどですが、“年金生活者支援給付金”も62歳から受け取れますか?「受給額・要件」も確認
体調不良など何らかの事情で働けなくなり、年金を繰上げ受給することにした人は、今後の生活に少なからず不安を持っているかもしれません。そんな中、少しでもプラスの給付金や支援を受けられれば助けになることでしょう。
 
「老齢年金生活者支援給付金」は、年金収入や他の所得が一定以下のときに、老齢基礎年金に加算されるものです。年金を繰上げ受給する場合、「年金生活者支援給付金も繰上げ受給の開始時点から受け取れそうだ」と思うかもしれませんが、実は老齢年金生活者支援給付金は65歳にならないと受給できない制度になっています。
 
本記事では、老齢年金生活者支援給付金の制度と年金の繰上げ受給との関係、受給開始年齢や年金の合計額などについて紹介します。
橋本典子

特定社会保険労務士・FP1級技能士

老齢年金生活者支援給付金とは

「年金生活者支援給付金」は2019年から始まった制度で、一定の要件を満たした人が受給できます。老齢年金・障害年金・遺族年金のそれぞれに給付金制度がありますが、ここでは「老齢年金生活者支援給付金」(以下、年金生活者支援給付金)について説明します。
 

受給要件は?

年金生活者支援給付金を受け取れるのは、次の全てに当てはまる人です(2025年10月時点)。
 

1 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
2 同一世帯の全員が市町村民税非課税
3 前年の「公的年金等の収入金額+その他の所得額」が
 1956年4月2日以降生まれ 90万9000円以下
 1956年4月1日以前生まれ 90万6700円以下

 
また、前述の1と2を満たした人で、3について次に該当する人は「補足的年金生活者支援給付金」の対象です。
 

3 前年の「公的年金等の収入金額+その他の所得額」が
 1956年4月2日以降生まれ 80万9000円を超え、90万9000円以下
 1956年4月1日以前生まれ 80万6700円を超え、90万6700円以下

 

年金生活者支援給付金の受給額は?

年金生活者支援給付金は「月」を単位に計算され、aとbを合算した額です。
 

a 5450円×保険料納付済期間/480月
b 1万1551円×保険料免除期間/480月

※5450円、1万1551円は2025年度の金額です。

 
満額だと年6万5400円(2025年度)になります。年金で暮らす人にとっては頼りになる給付金でしょう。
 

補足的年金生活者支援給付金の受給額は?

補足的年金生活者支援給付金は、次の式で計算します。
 
5450円×保険料納付済期間/480月×調整率
 
調整率は次のように求めます。
 

・1956年4月2日以降生まれ 90万9000円-前年の「公的年金等収入金額+その他の所得」/10万円
・1956年4月1日以前生まれ 90万6700円-前年の「公的年金等収入金額+その他の所得」/10万円

 

年金生活者支援給付金の受給はいつから可能?

年金生活者支援給付金の受給開始年齢について見ていきましょう。
 

老齢年金の繰上げ受給について

老齢年金の支給開始は、特別支給の老齢厚生年金を除けば、通常は65歳からです。ただし本人の選択により、60歳から受け取ることができます。これを繰上げ受給といいます。
 
繰上げ受給をする理由は、本人の体調や仕事の状況、家庭の事情、年金や資産に対する考え方など様々でしょう。
 
ただし繰上げ受給をすると、年金額は月0.4%(1962年4月2日以降生まれの場合)減額されます。例えば、65歳から受給すれば満額で月10万円もらえた人が、62歳から受給開始すると月8万5600円、60歳から受給開始すると月7万6000円に減ります。
 
なお、制度上、老齢基礎年金と老齢厚生年金は、同時に繰り上げなければなりません。
 

年金生活者支援給付金は繰り上げ返済の影響を受ける?

年金を繰上げ受給しても、年金生活者支援給付金の受給開始年齢には影響しません。年金生活者支援給付金の受給が開始できる時期は65歳のままです。62歳から老齢年金を繰上げ受給した場合、65歳になるまでは老齢年金のみを受給することになります。
 
つまり、繰上げ受給をすれば「年金生活者支援給付金も繰上げ受給の開始時点から受け取れる」というのは誤りです。
 

年金生活者支援給付金がプラスされた時の年金はいくらになる?

タイトルのケースで考えてみましょう。なお、厚生年金被保険者期間がないと仮定します。
 
老齢年金が年80万円ほどとのことなので、被保険者期間を462ヶ月(保険料免除期間0月)として計算します。この人が62歳から繰上げ受給をした場合、老齢基礎年金は年68万4000円程度になります。
 
62~64歳の間はこの金額ですが、65歳になるとここに年金生活者支援給付金が加算されます。年金生活者支援給付金は、年額で6万3000円弱です。
 
よって65歳からの受取額は、年金生活者支援給付金がプラスされて約74万7000円となります。
 

まとめ

年金生活者支援給付金は、公的年金やその他所得が一定基準以下の人に加算されるものです。年金を繰上げ受給すると、年金生活者支援給付金も同じく繰り上げて加算されるように思いがちですが、年金生活者支援給付金は65歳まで加算されません。
 
なお、繰上げ受給している人で、年金生活者支援給付金の受給が見込まれる人には、65歳の誕生日月の初め頃に年金生活者支援給付金請求書が郵送されますので、該当する人は忘れずに請求しましょう。
 

出典

e-Gov法令検索 年金生活者支援給付金の支給に関する法律
厚生労働省 年金生活者支援給付金制度について
日本年金機構 65歳の誕生日を迎えた方で、老齢基礎年金を繰上げ受給している方
 
執筆者 : 橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士

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