「年金改正で夫の手取りが減る」と話したら、友人は「旦那さん年収高いんだね…」と複雑そうな返事が。お互い「時給1300円」のパート勤務ですが、“夫の年収がバレる話”だったでしょうか?
今回の改正では、人によっては年間でおよそ7万円手取りが増える試算も出ています。では、どのような人が対象になるのでしょうか。本記事では、その仕組みと影響を解説します。
FP2級、日商簿記2級、宅建士、賃貸不動産経営管理士
年金制度改正で見直された「標準報酬月額の上限」とは
「標準報酬月額」は、厚生年金の保険料や年金額を算定する基準です。これまでの上限は65万円でしたが、今回の改正により75万円へと引き上げられることになりました。
標準報酬月額とは、実際の給与を一定の幅ごとに区分し、その区分額をもとに社会保険料や将来の年金額を計算する仕組みです。例えば、月収が70万円の場合、従来は65万円が上限扱いだったため、それ以上の給与は計算に反映されませんでしたが、今後はより実収入に近い額を基準に計算されます。
上限引き上げで変わる保険料負担と将来の年金額
厚生労働省は、標準報酬月額の上限を2027年から3年かけて段階的に引き上げる方針で、現行の65万円から、2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円へと拡大される予定です。
これに伴い、上限付近の収入がある人は、保険料負担と将来の年金額が次のように変わります。
保険料:5万9475円→6万2220円(+約1800円/月→年間+約2万1600円)
年金:+約150円/月(終身)
※10年間該当で+約1500円
保険料:5万9475円→6万4965円(+約3700円/月→年間+約4万4400円)
年金:+約300円/月(終身)
※10年間該当で+約3000円
保険料:5万9475円→6万8625円(+約6100円/月→年間+約7万3200円)
年金:+約510円/月(終身)
※10年間該当で+約5100円
影響を受けるのは全体の6.5%
では、実際にどれくらいの人が影響を受けるのでしょうか。
厚生労働省は「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律(令和7年法律第74号)の概要等」で、男性の標準報酬月額別被保険者数のうち65万円以上に該当するのは9.6%、約243万人としています。
男女全体で見ると、65万円以上に該当するのは全体の6.5%、約278万人です。標準報酬月額65万円超は、年収換算でおおよそ「年収1000万円以上」に相当します。
「全体の6.5%」という数字だけを見るとごく一部に感じられますが、人数に換算すると決して少なくありません。改正による影響を実感する人も少なからずいると考えられます。
まとめ
今回の年金制度改正で「標準報酬月額」の上限が引き上げられるのは、主に年収1000万円以上の高収入層が対象です。
時給1300円で働いているパートの人に影響するかは夫の給料によりますが、「手取りが減る」という話は、聞く人にとっては「自分は高所得者です」と暗に伝えることにもなりかねず、パート先などでは複雑な反応を招くこともあります。
今回の改正内容を理解したうえで、周囲に話す際には配慮することが大切です。
出典
厚生労働省 年金制度改正法が成立しました
厚生労働省 厚生年金等の標準報酬月額の上限の段階的引上げについて
厚生労働省 社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律(令和7年法律第74号)の概要等
厚生労働省 厚生年金保険・国民年金事業統計
執筆者 : 村吉美佳
FP2級、日商簿記2級、宅建士、賃貸不動産経営管理士
