別居していた夫が死亡。稼ぎはかなりいい人で「年収1000万円」はありました。主婦だった私は「遺族年金」を月20万円はもらえるでしょうか?
ですが、実際には夫の受け取るはずだった年金額=遺族年金額ではありません。加えて「別居中」だった場合、支給の可否にも影響する可能性があります。そこで、この記事では、別居していた妻が受け取れる遺族年金について解説します。
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
別居していても「生計維持関係」があれば受給できる
まず前提として、遺族年金は「亡くなった人によって生計を維持されていた遺族」に支給されます。ここでいう「生計を維持していた」とは、同居を必須とするわけではありません。
別居していたとしても、夫から受け取った生活費で生活していた場合は、生計維持関係が認められ、受給対象となる可能性が高いです。
しかし、離婚同然で音信不通状態であったり、生活費の支援が一切なかったりしたケースでは「生計維持関係なし」とされ、遺族年金を受給できない可能性もあります。
なお、仮に別居期間中、パートなどをして収入があり、それを生活費の一部としていたとしても、夫から生活費を受け取り、それを生活費として使っていれば、基本的には生計を維持されているとして、遺族年金の受給対象となります。
子がいなくても受け取れるのか
遺族年金は、国民年金から支給される遺族基礎年金と、厚生年金から支給される遺族厚生年金があります。
このうち、子(原則18歳に達した最初の3月末日までにある子)がいない配偶者が受け取れないのは遺族基礎年金です。遺族厚生年金は、子の有無に関係なく受け取ることができます。
ただし、子のない30歳未満の配偶者においては、遺族厚生年金を受け取れたとしても、受給期間の制限があり、5年間のみの受給である点にご注意ください。
受給額は少ない可能性が高い
さて、夫と別居中でも遺族である妻が遺族厚生年金を受け取れる可能性は高いことは分かりましたが、問題はその額でしょう。遺族年金でもらえる額は、本人が生きていればもらえるはずであった年金額に比べて小さいものになります。
遺族基礎年金の額(年額)は、昭和31年4月1日以前生まれの方だとすると、82万9300円に子の数に応じた加算額(2人目まで各23万9300円、3人目以降は1人につき7万9800円)を加えた額になります。
また、遺族厚生年金の額は、おおむね本人が受け取る額の4分の3です。そして、遺族厚生年金の支給額は、本人の年金加入期間やそれまで収めてきた厚生年金保険料の額に比例するため、一概にいくらと言い切ることは難しいのが実情です。
特に、子がいない配偶者の場合は、遺族年金で月20万円を受け取るのはまず不可能でしょう。遺族厚生年金だけで月20万円を受け取ろうとしたら、本人が受け取るはずだった厚生年金の月額は30万円ほど必要になります。
現状、年収1000万円で20歳から59歳まで働き続けても、30万円の厚生年金を受け取ることは不可能です。したがって、現実的に月20万円の遺族年金を受け取ることは難しいと考えるべきでしょう。
まとめ
夫と別居中であったとしても、主婦である妻は、基本的に遺族年金を受け取ることができます。
しかし、夫が年収1000万円と高収入だからといって、月20万円の遺族年金を受け取ることは難しいでしょう。遺族年金は、確かに夫の死後における経済的な柱となりうるものではありますが、必ずしも満足できる金額を受け取れるわけではありません。
遺族年金の受給要件や対象者、受給額は、個別の事情によって異なるため、詳細については最寄りの年金事務所に問い合わせたり、相談してみることをおすすめします。
出典
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
執筆者 : 柘植輝
行政書士
