60歳で先立った夫の「遺族厚生年金」だけでは心細く、パートを続けながら「老齢年金の繰下げ受給」を検討中です。これで“将来の年金受給額”は増えますよね?

配信日: 2025.11.30
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60歳で先立った夫の「遺族厚生年金」だけでは心細く、パートを続けながら「老齢年金の繰下げ受給」を検討中です。これで“将来の年金受給額”は増えますよね?
遺族厚生年金とは、亡くなった配偶者が納めていた厚生年金保険料に基づいて支払われる年金です。遺族厚生年金を受け取っているものの、その金額だけでは将来に不安を感じる方もいるでしょう。
 
今回は、遺族厚生年金を受け取りながら「老齢年金を繰り下げることで本当に将来の年金額は増えるのか」を、制度上のルールと注意点を踏まえて解説します。
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老齢年金には「繰下げ受給」「繰上げ受給」制度が存在

老齢基礎年金・老齢厚生年金は原則として65歳が受給開始年齢となっていますが、「繰下げ受給」では本来より受給を遅らせることで増額できます。繰下げによる受給開始年齢は66歳〜75歳までの間で設定でき、増額率は一生涯変わりません。
 
増額率は1ヶ月あたり0.7パーセントずつ加算される仕組みです。例えば66歳ちょうどで受給を始めた場合は8.4パーセントで、最大は75歳時の84パーセントの増額となります。また、老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に繰り下げることも可能です。
 
反対に「繰上げ受給」では本来より早く受給できる代わりに減額となるので注意が必要です。
 

「遺族厚生年金」の受給権者は「繰下げ受給」で年金額を増やせない

日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」によると「遺族厚生年金の受給権がある方の老齢年金の繰下げ受給について」の項目では、「原則として、66歳に到達した日以前に遺族年金等を受け取る権利を有した場合は、老齢年金を繰り下げて受給することができません」としています。
 
また、令和7年の法律改正により、遺族厚生年金と繰下げ受給の取り扱いについて変更が予定されています。
 

・令和10年3月31日時点で遺族厚生年金を受け取る権利を有している
・65歳に到達していない(昭和38年4月2日以降生まれ)

 
以上2つの条件を満たしている方が対象者です。そして繰下げ請求が可能な条件は以下になります。
 

・老齢厚生年金:遺族厚生年金の請求を行っていない場合
・老齢基礎年金:遺族厚生年金の請求の有無にかかわらない

 
いずれにせよ、すでに遺族厚生年金を受給されている方については繰り下げできないようです。
 

「遺族厚生年金」は「在職老齢年金」制度の対象外というメリットも

「老齢厚生年金」の受給者が被保険者である(=働いて保険料を納めている)とき、「在職老齢年金」による調整の対象となるため一部または全部が支給停止となる場合があります。
 
一方「遺族厚生年金」は亡くなった方の年金を基に支払われるものであり、受給者自身の労働による給与で調整される「在職老齢年金」の仕組みの対象にはなりません。繰下げ受給による増額も見込めない分、パートなどを続けるハードルは低いと言えるのではないでしょうか。
 
ただし、共働きの期間があったなど「70歳以後に老齢厚生年金の受給資格を得た」場合は、「老齢厚生年金と遺族厚生年金の併給による調整」の対象となるケースもあるようなので注意しましょう。
 

まとめ

自分の年金「老齢厚生年金」は働きすぎると減額する可能性がありますが、亡くなった配偶者の年金「遺族厚生年金」は、自分が働いたことによる給与で減らされることはないため安心して働けます。
 
さらに「老齢年金の繰下げ受給」を行うことで老齢年金の額は増えますが、遺族年金を受け取っている方には制限がある点を確認しておくことが重要です。年金は選び方で受け取る額やタイミングが変わるからこそ、早めに仕組みを知り、老後の収入設計を賢く整えていきましょう。
 

出典

日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 年金の繰上げ受給
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 老齢厚生年金の繰り下げの申出を行うことができる人は、どのような人ですか。
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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