65歳まで「月10万円」の“特別支給の老齢厚生年金”を受け取り予定…もし年金を「70歳まで繰り下げる」と“10万以上”受け取れてお得ですか? 繰下げ受給のルールを確認
本記事では、特別支給の老齢厚生年金の仕組みと、年金受給の繰下げ制度がどのように影響するのかを解説します。さらに、60歳以降も働く場合に注意が必要な、在職老齢年金制度についても紹介します。
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目次
特別支給の老齢厚生年金とは
「特別支給の老齢厚生年金」は、公的年金制度における「つなぎの年金」としての役割があります。2000年の法律改正前までは年金受給開始年齢が60歳でしたが、法律改正により段階的に65歳まで引き上げられました。
その移行期間である60歳から65歳までの収入を補うための経過措置として「特別支給の老齢厚生年金」が設けられています。そのため、「特別支給の老齢厚生年金」が受け取れるのは、60歳から65歳になるまでの期間限定です。
「特別支給の老齢厚生年金」の受給要件
「特別支給の老齢厚生年金」を受け取るためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
・男性は昭和36年4月1日以前、女性は昭和41年4月1日以前に生まれていること
・老齢基礎年金の受給資格期間(10年)があること
・厚生年金保険等の加入期間が1年以上あること
・生年月日に応じた受給開始年齢に達していること
「特別支給の老齢厚生年金」は繰下げ制度の対象外
年金の「繰下げ制度」は、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の受給開始年齢を遅らせることで、年金額を増額できる仕組みです。年金受給を70歳まで繰り下げても、「特別支給の老齢厚生年金」は制度が異なるため、通知された通り65歳まで受け取ることが可能です。
「特別支給の老齢厚生年金」と老齢年金の受給開始時期は別々に判断されるため、「特別支給の老齢厚生年金」の受給を開始しても、66歳以降に受け取る老齢年金(繰下げにより増額される年金)の額には影響しません。
「特別支給の老齢厚生年金」は65歳で支給が終了し、その後は繰り下げた年・月から増額後の「老齢年金」を受け取ることになります。
「特別支給の老齢厚生年金」の受給開始年齢と例外的なルール
「特別支給の老齢厚生年金」の受給開始年齢は、生年月日に応じて自動的に決まっており、「繰り下げて増額させる」仕組みはありません。ただし、受給開始年齢に達した後でも、あえて受給を辞退する(受け取らない)選択は可能です。
辞退したことによって受け取らなかった期間の年金が増額されることはありませんが、状況によっては受け取ることで損をする場合もあります。
まず、「特別支給の老齢厚生年金」は、「雑所得」として扱われるため課税対象です。この「特別支給の老齢厚生年金」を受給すると、所得が増えることになり、健康保険料や介護保険料などの負担が増える可能性があります。
また、所得の増加により扶養要件から外れてしまうと、自分で国民健康保険に加入する必要が生じます。雑所得として「特別支給の老齢厚生年金」が月10万円の場合は、年間120万円が増えることになるため、収入に対してどれだけ支出が増えるのか確認しておきましょう。
60歳以降も働く場合の「在職老齢年金」制度の注意点
「特別支給の老齢厚生年金」の受給期間中(60歳から65歳未満)に、会社で厚生年金に加入して働いている場合は注意が必要です。60歳から65歳未満で年金に加入しながら働く場合、受給する年金がカットされる可能性があります。
令和7年度の基準額は月51万円で、基準額を超えた金額の半額が年金からカットされます。
基本月額+総報酬月額相当額>51万円
「基本月額」とは「特別支給の老齢厚生年金」の月額年金額(今回のケースでは10万円)、「総報酬月額相当額」は毎月の給与と直近1年間の賞与を12で割った平均額です。
例えば、「特別支給の老齢厚生年金」が月10万円、給与が50万円で収入が月60万円だった場合、基準額を「60万円−51万円=9万円」超えており、その半額である「4万5000円」が年金から減額されるため、月の収入は「55万5000円」となります。
減額により社会保険料や税金などの自己負担が上回る場合には、「特別支給の老齢厚生年金」を辞退したほうがよいでしょう。
特別支給の老齢厚生年金は65歳まで、本則の年金は70歳へ繰下げ可能
「特別支給の老齢厚生年金」は、老齢年金の繰下げ制度の影響を受けません。70歳への繰下げを予定していても、「特別支給の老齢厚生年金」は通知された受給開始年齢から65歳までの間は受け取れます。
ただし、60歳以降も働く場合には、在職老齢年金制度によって「特別支給の老齢厚生年金」がカットされる可能性があります。収入と受給額を試算し、負担が増えない場合は受給し、負担のほうが大きい場合には辞退するという選択肢も覚えておいてください。
出典
日本年金機構 特別支給の老齢厚生年金
日本年金機構 年金の繰下げ受給
国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
