65歳から年金を「月14万円」受け取ります。アルバイトも「週3~4日」する予定ですが、友人に「稼ぎすぎると年金もらえなくなる」と言われ不安です…年金が“支給停止・減額”になる条件とは
これは、一定金額の収入以上を得ると年金が減額される「在職老齢年金」制度を指しています。
本記事では、在職老齢年金制度の仕組みを解説するとともに、タイトルのケースでの収入がいくらになるのかを試算します。あわせて令和8年度からの在職老齢年金制度改正についても説明します。定年後計画の参考になさってください。
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目次
令和7年度での「年金支給停止」の境界線はいくら?
老齢年金を受け取りながら働く際に、一定以上の収入になった時に影響をおよぼすのが「在職老齢年金制度」です。
この制度では、厚生年金に加入しながら働く60歳以上の人が対象で、以下の2つの合計額が一定の基準額を超えた場合に、老齢厚生年金の一部または全額が支給停止されます。自営業など厚生年金に加入せずに働く人は、この制度の対象ではありません。
(1)基本月額:老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額(加給年金額は除く)
(2)総報酬月額相当額:給与(標準報酬月額)と、直近1年間の賞与を12で割った額を合計したもの
令和7年度での支給停止となる目安金額は51万円で「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計が51万円を超えた場合、超過分の半額が老齢厚生年金から減額されます。
支給停止の対象となるのは「老齢厚生年金(報酬比例部分)」のみで、国民年金から支給される「老齢基礎年金」は、収入にかかわらず全額が支給されます。
年金とアルバイト収入で、年金支給額は減らされそう?
それでは、タイトルのケース(年金月14万円+アルバイト月14万円、賞与なし)で試算してみましょう。
基本月額(年金):14万円
総報酬月額相当額(給与):14万円
合計額:年金収入14万円+給与収入14万円=28万円
合計額の28万円は、令和7年度の支給停止調整額51万円を下回っています。したがって、老齢厚生年金を全額受け取りながら、アルバイトの給与も満額得ることができるため、年金が減額される心配は不要です。
もし、収入が多かったら年金がいくら減りそう?
例として、在職老齢年金の基準額を上回る収入を得ている人(年金月24万円+給与収入月30万円、直近1年間の賞与60万円)の場合、どのくらい減額されてしまうのか試算してみましょう。
基本月額(年金):24万円
総報酬月額相当額(給与と賞与):30万円+(直近1年間の賞与60万円÷12)=35万円
収入合計額:年金収入24万円+総報酬月額相当額35万円=59万円
収入合計額が59万円と令和7年度の基準額51万円を上回るため、在職老齢年金制度によって超過分の2分の1にあたる金額が支給停止される試算になります。
年金収入24万円-(年金収入24万円+総報酬月額相当額35万円-基準額51万円)÷2=減額後の年金収入見込み額20万円
このように、収入が月51万円を超えると、受け取れる年金が減ってしまいます。減額後の年金額が年金収入よりも上回る場合には、老齢厚生年金が全額支給停止になります。
令和8年度からの制度改正では、どのように変わる?
令和8年度からの在職老齢年金制度改正では、制度の対象となる金額が62万円に引き上げられる見通しです。
厚生労働省の資料によると、令和4年度末の「65歳以上で年金をもらいながら働いている人」は308万人で、そのうち在職老齢年金制度で支給停止対象者は50万人(全体の約16%)でした。令和8年度からの制度改正で、支給停止にならずに年金を満額受け取れる人が増えるでしょう。
まとめ
老齢厚生年金を受け取りながら働く場合に適用されるのが「在職老齢年金制度」です。この制度のポイントは「老齢厚生年金」と「給与と前年の賞与」の合計額が、一定の基準を超えた場合に年金が減額されるという点です。
令和8年度からの改正では、制度の対象金額が62万円に引き上げられる見通しで、給与が上昇しても、年金が減る心配をする可能性がより少なくなります。自分が得たい給与と年金のバランスを考えながら働くことが望ましいでしょう。
出典
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
厚生労働省 年金制度改正法が成立しました(2)在職老齢年金制度
厚生労働省 在職老齢年金制度について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー