先日夫が亡くなり「遺族年金」の手続きをしていましたが、100万円の借金が発覚。相続放棄したら「遺族年金」はもらえなくなる?
本記事では、遺族年金の仕組みと、相続放棄を選択した場合の影響について、制度上で整理して解説します。
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遺族年金とは
公的年金制度には、被保険者が亡くなった場合に残された遺族の生活を支えるための年金として「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があります。どちらが支給されるかは、亡くなった人の年金加入状況や遺族の年齢・続柄などによって異なります。
遺族基礎年金は、国民年金に一定の期間加入していた人などが亡くなった場合、亡くなった人に生計を維持されていた子のある配偶者または子どもを対象に支給されます。日本年金機構によれば、ここでいう「子ども」とは、18歳になった年度の3月31日までにある人、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある人を指します。
遺族厚生年金は、厚生年金保険に加入していた人などが亡くなった場合に、亡くなった人に生計を維持されていた配偶者や子どもなど一定の遺族に対して優先順位に基づいて支給される年金です。支給額は、亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分を基に算定されます。
これらはいずれも、遺族が経済的に困窮しないよう設計された制度であり、加入実績や遺族の状況によってどちらか、あるいは両方が支給される場合もあります。
遺族年金は、公的年金制度に基づいて支給されるものであり、支給対象や支給額は法律によって定められています。遺族の生活を一定程度保障するという趣旨から、相続財産の有無とは原則として別枠で扱われます。
相続放棄とは
故人の借金や負債が多い場合、「相続放棄」を検討するケースがあります。相続放棄とは、被相続人(亡くなった人)の財産について、一切の権利と義務を放棄する法的手続きです。これは、マイナスの財産(借金など)だけでなく、プラスの財産(預金や不動産など)も一切相続しないことを意味します。
相続放棄は、家庭裁判所に申し立てて認められる必要があります。裁判所に必要な書類を提出し、審査のうえで認められると、その時点で相続関係は初めからなかったものとして扱われます。
裁判所ウェブサイトによれば、相続放棄は、相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります。この期間を過ぎると、法定単純承認(すべての相続を受け入れたものとみなされること)となる可能性があるため注意が必要です。
相続放棄をしても遺族年金はもらえる?
ここからが本題ですが、結論から言うと、相続放棄をしても遺族年金は影響を受けず、受給資格自体は原則として維持されるとされています。これは、遺族年金が「相続財産」ではなく、公的年金制度に基づく給付であるためです。
相続放棄は、被相続人の財産上の権利や義務を放棄する手続きですが、遺族年金はこれに含まれません。遺族年金の支給要件は、あくまで被保険者の年金加入実績や遺族の続柄・年齢などで判断されます。たとえ借金があるために相続放棄を選択しても、相続放棄によって遺族年金の受給資格が消滅することはありません。
遺族年金は、要件を満たす遺族自身が固有に取得する権利とされるため、相続放棄が遺族年金の受給に直接影響することは基本的にありません。
まとめ
遺族年金は、公的年金制度に基づき、亡くなった人の年金加入状況や遺族の続柄・年齢などによって支給される年金制度です。
相続放棄とは、被相続人のプラス・マイナスの財産を一切受け継がないという法的手続きですが、相続財産を放棄したとしても、遺族年金の受給資格が消滅するということはありません。遺族年金は要件を満たす遺族自身が固有に取得する権利とされるためです。
相続放棄と遺族年金は別の制度であることを理解し、確実に手続きを進めることが安心につながります。
出典
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
裁判所ウェブサイト 相続の放棄の申述
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
