【実録】60歳の誕生日に“企業年金のお知らせ”が届きました。友人に「一時金のほうが得だよ」と言われたけれど…本当はどっち?
今回はこうした相談をもとに、企業年金の受け取り方について事実ベースで解説します。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
目次
60歳の誕生日に届いた「企業年金・iDeCo給付のお知らせ」とは
今回、ご相談者のもとに60歳の誕生日を機に「企業年金」と「iDeCo」の給付に関するお知らせが届いたようです。
このような通知は、勤務していた会社が導入していた企業年金制度からの給付開始の案内や、iDeCo加入者に対して年金資産の受け取り方法や手続きを知らせるものです。企業年金は、会社が従業員の退職後の生活を支えるために設ける私的年金制度で、厚生年金に上乗せして支給されます。
また、iDeCoは「個人型確定拠出年金」と呼ばれ、自身で掛け金を拠出・運用し、その運用成果を将来受け取る制度です。厚生年金と異なり、企業年金やiDeCoは任意の受け取り形式を選べます。
企業年金には代表的なものに「確定給付企業年金(DB)」や「企業型確定拠出年金(DC)」がありますが、いずれの制度も「一時金(まとめて受け取る)」か「年金(分割で受け取る)」、「一時金と年金を組み合わせて受け取る」の選択肢があることが一般的です。
なお、制度内容は企業や加入時期などによって異なる場合があるため、事前の確認が重要です。
企業年金の「一時金」「終身年金」の違いと、厚生年金への影響
まず初めに、企業年金の受取方法にかかわらず、厚生年金の受給額や支給開始年齢に直接的な影響はありません。企業年金は公的年金(厚生年金)の上乗せ部分(3階建ての3階部分)として独立しており、選択肢が厚生年金の計算基礎を変えることはないためです。
前述の通り、企業年金を受け取る際の選択肢として代表的なのが「一時金」と「年金」です。一時金はまとまった資金を一括で受け取る方法で、受け取ったタイミングで全額を受領できます。
一方で年金は毎月または一定期間、分割して受け取る方法です。終身年金は生涯にわたり受け取るタイプの年金です。両者の違いは大きく次のポイントに分かれます。
まず、一時金は退職所得控除が適用されるため税負担が軽くなるケースがあり、勤続年数が長ければ控除額も大きくなる傾向があります。ただし、まとまった資金を受け取ることでその年の所得が増えるため、他の所得との合算によっては所得税に影響が出る場合もあるため注意が必要です。
年金形式は、長生きした場合に受取総額が多くなる可能性がある点がメリットです。特に終身年金の場合、生きている限り受け取りが続くため、将来の生活資金として安定感があります。
iDeCoと退職金を受け取るタイミングに注意! 数百万円の損になることも!?
iDeCoと退職金は、それぞれ独立した制度です。iDeCoは原則として60歳から受け取ることができ、前述したように、一時金・年金・一時金と年金の併用が選べます。
注意したいのが、iDeCoと退職金を同時期に一時金で受け取る場合の税制上の制約です。2026年からは、これらを一定期間内に受け取ると退職所得控除が適用されにくくなる「10年ルール」が導入され、場合によっては税負担が増える可能性があります。
10年以上期間を空けて受け取るか、年金で受け取ることで損を回避できる場合があるため、受け取り時期を調整するようにしましょう。
どう選ぶべきか? 制度の特性を踏まえた判断のヒント
結局のところ、「一時金」と「年金」のどちらを選ぶべきかは、ライフプラン、税負担、現在の収入状況、健康状態などを総合的に考える必要があります。一時金は短期的な資金需要や税制優遇の活用を重視する人に向いています。
一方、年金形式は長期的な生活資金の安定や生涯設計を重視する場合に適しているといえるでしょう。税金や年金制度は個人の状況によって最適解が異なるため、必要に応じて税理士やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することも選択肢のひとつです。
こうした専門的な視点を取り入れることで、より確かな判断につながるでしょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
