65歳で年金受給を開始しましたが、貯金が300万円あります。「年金生活者支援給付金」は対象外になるのでしょうか?
年金生活者支援給付金は、一定の所得水準以下の年金受給者を支えるための制度であり、支給の可否は制度上の要件で判断されます。本記事では、年金生活者支援給付金のうち「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金」の支給要件、給付額の計算方法、申請方法について整理します。
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年金生活者支援給付金とはどのような制度か
年金生活者支援給付金は、消費税率引き上げ分を財源として、年金収入やその他の所得が一定水準以下の人に対し、年金に上乗せして支給される給付金です。公的年金だけでは生活が厳しくなりやすい層を支援する目的で設けられています。
給付金にはいくつかの種類がありますが、65歳以上で老齢基礎年金を受給している人が対象となるのは、「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金」です。
「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金」の支給要件(受給対象)について
厚生労働省によれば、老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金を受け取るためには、次のすべての要件を満たす必要があります。
1つ目は、65歳以上で老齢基礎年金を受給していることです。老齢基礎年金の受給が前提条件となります。
2つ目は、同一世帯の全員が市町村民税非課税であることです。本人だけでなく、同一世帯に属する全員が住民税非課税である必要があります。
3つ目は、前年の公的年金等の収入とその他の所得の合計額が一定基準以下であることです。基準額は生年月日により異なり、昭和31年4月2日以後に生まれた人は90万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた人は90万6700円以下とされています。
ここで重要なのは、貯金額そのものは支給要件に含まれていないという点です。判断基準となるのは、あくまで前年の年金収入やその他の所得、そして世帯における住民税の課税状況です。今回のケースのように貯金が300万円あっても、それだけで自動的に対象外になるわけではありません。
給付額はどのように決まるのか
老齢年金生活者支援給付金の給付額は、一律ではなく、保険料の納付済期間などに応じて計算されます。基本となるのは、月額5450円という基準額です。
この基準額に、保険料を納付した期間の割合が反映されます。日本年金機構によれば、具体的には、基準額に保険料納付済期間を掛け、480ヶ月で割った金額が基本的な給付額となります。40年分すべてを納付している場合は、基準額に近い金額になります。
さらに、保険料の免除期間がある人については、その免除期間に応じた加算が行われます。このため、給付額は個人ごとに異なり、実際の金額は保険料納付済期間などによって決まります。
申請方法と手続きの流れ
年金生活者支援給付金は、自動的に支給される制度ではなく、請求手続きを行う必要があります。対象となる可能性がある人には、日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書」が送付されます。
この請求書に必要事項を記入し、年金事務所へ提出することで申請が完了します。提出方法は、窓口への持参だけでなく、郵送による提出も可能です。申請内容が審査され、支給要件を満たしていると判断されると、「支給決定通知書」が届きます。
給付金は、年金と同じ振込先に、偶数月の15日に振り込まれる仕組みです。原則として、請求した月の翌月分から支給が始まるため、手続きを後回しにすると、その分受け取れる給付金が遅れることになります。
まとめ
年金生活者支援給付金は、年金収入やその他の所得が一定水準以下の年金受給者を支える制度です。老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金において支給の可否は、貯金額ではなく、前年の所得状況や世帯全体の住民税非課税要件などによって判断されます。
今回のケースのように貯金が300万円ある場合でも、支給要件を満たしていれば対象になる可能性はあります。給付額は一律ではなく、保険料の納付状況や免除期間に応じて計算され、申請を行うことで初めて支給が始まります。
制度の対象になるか判断に迷う場合は、日本年金機構や年金事務所で確認することが重要です。制度を正しく理解し、必要な手続きを行うことで、老後の生活を支える一助とすることができるでしょう。
出典
厚生労働省 年金生活者支援給付金制度について
日本年金機構 老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー